ホーム  知るぽるとについて  著名人・有識者が語る  試練を乗り越え生きる力をつくる 明治大学文学部教授 齋藤 孝  身体のエネルギーの不思議さに気づいた少年時代

著名人・有識者が語る 〜インタビュー、講演、寄稿〜

試練を乗り越え生きる力をつくる

明治大学文学部教授 齋藤 孝

身体のエネルギーの不思議さに気づいた少年時代

取材先に登場した齋藤孝さん。テレビで見かける穏やかな笑顔と口調は変わらない。その上で実際に会うと教育学者として若い世代を育てる思いの深さがやさしい眼差しから伝わってきた。そんな齋藤さんがまず話してくれたのは、少年時代に楽しんだ子ども相撲だった。

「商店街が主催していた子どもの相撲大会が好きで、よく出場しました。結構強かったですよ。土俵も大人たちの手作りで本格的だった記憶があります。もちろん、出場する少年たちも一生懸命でしたが、それを支える大人たちもエネルギッシュでした。地域ぐるみで大会を盛り上げ、子どもたちを元気に育てようというパワーがみなぎっていたように思います」

相撲と一緒に今も齋藤さんの脳裏に鮮明に焼き付いているのは、そのころの人々から発せられていた活力だ。先生をはじめ、接する大人たちの多くがエネルギーにあふれ、その活気を肌で感じながら齋藤さんは育った。その中で元気いっぱいに体を動かすことが自然と好きになっていった。


時代はテレビのアニメでもスポーツものが人気を博し、根性で厳しい試練を越えていくいわゆる“スポ根”に当時の子どもたちは魅せられていた。

齋藤さんもその一人だった。そういったアニメのヒーローたちの影響を受けた当時の子どもたちの間で流行していたのは“特訓”。それは友だちに知られず、練習を積み重ねることで遊びの技を磨くことだった。その中で子どもたちは厳しいと感じる練習量を自分に課し、根性で挑む自分をヒーローたちと重ねていたに違いない。同時にそんな特訓をやり遂げる充実感を、子どもながらに齋藤さんは心身全体で感じていった。学校のクラブ活動も運動部に所属し、日が暮れるまで汗を流し続けた齋藤さん。しかし、受験の学年を迎えて、クラブを引退してから空虚感が少しずつ広がっていった。もうクラブ活動に時間を割かれることのない生活。本来なら今まで以上に受験勉強に集中できるはずだ。けれど齋藤さんは違っていた。

ただ机に向かって勉強するだけの毎日。その繰り返しの中で日に日に気が滅入っていく……。やがて齋藤さんは原因に気づいた。それは今までのように思う存分身体を動かせないからだった。そのストレスに苦しみながら齋藤さんは身体を動かすことが心や思考と深い関係があることを痛感していく。この経験が後に身体を基盤にした教育法である「齋藤メソッド」の構築のひとつのきっかけとなっていく。