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講演・対談 2004年(平成16年)

対談 目前に迫った本格的な少子・高齢化社会

世代間の比較はあらゆる角度から

増永 今の高齢者は年金をたくさんもらえていいけど、若い人は損だ、という世代間の損得を議論する向きもあります。

矢野 確かにあまりにも大きい世代間の格差は、若い世代の不信感を招きますので問題です。

でも見方を変えれば、今の70歳以上の方たちは、保険料負担は若い人たちに比べれば少ないですが、自分の親は十分な年金をもらっていませんでしたから、個人で親の面倒をみたのです。また今の高齢者は子どもの数は多かったですし、マイホームの取得にも多大の出費をしました。

今の若い人は年金の保険料は多くともそのマイホームを遺産といった形で受け取れるわけですね。大学の進学率や生活基盤にしても、今の若い人たちは先人の努力で格段にアップしています。

ですから世代間の比較をするには、年金だけをつまみ出すのではなく、トータルでみないと公平な比較にならないと思いますね。広い視野で年金問題を考えていただきたいと思っています。

国民皆年金の旗を降ろす一元化案には疑問

増永 公的年金制度については、今後もいろいろな改革案が出されるようですが、例えば制度の一元化案についてはどう考えたらよいのですか。

矢野 一元化は、実は昔からやってきているのです。日本の年金は明治初期、軍人や官吏対象の恩給制度として始まり、明治末期に現業公務員に対する共済制度、昭和17年に民間の労働者を対象とする厚生年金、そして昭和34年に農業、自営業者対象の国民年金制度の創設によって国民皆年金が実現しました。

しかし、長い間には産業構造などの変化で若い人が入ってこなくなり、成り立たなくなる制度がでてきます。そこで吸収合併しながら、今日の形に集約してきたのです。

今、一番課題となっているのは、公務員の共済年金と民間サラリーマンの厚生年金の統合です。

民主党の提案は公務員ばかりでなく、自営業や学生なども全部厚生年金に入れようという案で、自営業の方の所得を正確に把握するため、納税者番号制度を導入して保険料は税務署が税金と一緒に徴収する、年金額の低い人や無年金者には消費税財源で最低保障年金を支給するというものです。

この案に対しては、納税者番号の導入ができるのか、導入したとしても正確な所得把握が本当にできるのか、サラリーマンと自営業の不公平が生まれないか、最低保障年金の対象者や年金額をいくらにするのか、それによって消費税がどれくらい必要になるのか等々、不明なことが多々あります。

一つの考え方とは思いますが、実質的には国民皆年金の旗を降ろすことにつながる問題ですから、慎重に検討する必要がありますね。

増永 民主党案ですと、中小の自営業者で国民年金に入っていた人たちは、今度は厚生年金になるわけですから、経営者として従業員の厚生年金の半額と自分の分と両方払わなければならないことになりますね。

矢野 そうです。自営業者などは保険料が何倍にも増えることになります。

増永 本年10月から実施される今回の制度改正の下で、私たち消費者が今後の生活設計に当たって考えるべきこと、注意すべきことは何でしょうか。

矢野 公的年金は今回の改正で安定性は強化されましたが、公的年金の給付水準は将来へ向けてスリム化されます。

より豊かな老後のニーズに応えるためには、企業年金や個人年金、そして個人貯蓄の重要性が従来にも増して高まると思います。自助努力がますます必要となってくると思うのです。

増永 今日は複雑ですが、大事なお話を大変明快に教えていただき、ありがとうございました。