金融教育公開授業
平成17年度金融教育公開授業(全国リレー講座)
金融広報中央委員会
茨城県金融広報委員会
茨城の実施報告
「金融教育公開授業 in 茨城(水戸商業高等学校)」
(12月20日開催)
茨城県立水戸商業高等学校は高校として県内初、全国でも甲府商業高等学校に次いで2校目となる金融教育研究校として、平成16年度より金融教育活動に取り組んでいます。校長・教頭・各教科教諭等で構成する金融教育委員会が中心となって研究を続けており、公開授業に先立って、金澤正巳校長は「各教科の授業やホームルーム、学年集会などの時間をフルに使い、全教科・全校を挙げて金融教育に取り組んでいます」と挨拶しました。
当日は各学年・各クラスによる公開授業の後、宇都宮健児弁護士による金融トラブルをテーマにした講演が体育館で行われ、全校生徒約830名のほか、県内の学校関係者、教育庁関係者や保護者等、約30名が参加しました。また報道各社が取材に訪れ、生徒たちの様子がテレビや新聞、ラジオで紹介されました。
公開授業の模様について
第1学年では各教室において、「ビジネス基礎商品売買に伴う手形の交換」「現代社会お金の歴史について」など、教科ごとに授業や講義などが行われました。第2学年では総合的な学習の時間を使った学年集会で、元銀行員の茨城県立緑岡高等学校・秦雅博校長により「お金にまつわる話あれこれ・・・生きる力を身につけよう・・・」と題してのご講話を頂きました。第3学年では「これであなたもひとり立ちー自立のためのWORKBOOK―」(金融広報中央委員会、2003年)を用い、LHRの時間として身近な経済学を勉強しました。これらの授業の幾つかをご紹介します。
まず1年生の数学Ⅰ「金利計算」の授業です。
奨学金と消費者金融のキャッシングの金利を比較し、1年後の利息がそれぞれいくらになるかを計算して、消費者金融の金利の高さを実感しました。生徒たちは、金利「トサン(10日で3割)」は年利何%になるかを先生の指導を受けながら計算してみると、1,095%となりました。「1万円借りたらいくら返さなくちゃいけない?」と先生が問いかけると、聞かれた生徒からとまどいながら10万9,500円の答えが返ってきました。生徒たちはその返済金額の大きさに驚いていました。
3年生ではクラス毎にテーマを選び、「これであなたもひとり立ち」から抜粋したワークや、それを応用したオリジナル教材を用いるなどして学習を行いました。ディベートによりカード社会について討論したり、「ひとり暮らしの自立度チェック」を各生徒が行ったり、先生がオリジナルの給与明細を用いて基本給の意味を解説したりするなど、多彩な内容で「社会人になるための経済学」を学んでいました。
生活と密接に関係するこれら授業は生徒にとって身近なものに感じられたようで、「卒業後はひとり暮らしをするので、自分の問題として積極的に学べました」との感想が聞かれました。
そのほか、1年生の情報処理「インターネットで学ぼう」では、証券会社のホームページ内コンテンツを利用して、グループごとに株式購入を疑似体験しました。各グループでは、結果画面を見ながら、売買についての反省会などを行っていました。
(パソコンを用いた公開授業の模様)
宇都宮健児弁護士講演
「他人事ではない!金融トラブル~深刻化する多重債務問題について~」
宇都宮健児弁護士は、ヤミ金融や消費者金融による多重債務問題の現状と課題についてお話をされました。電話による取り立ての様子を録音したテープが流されると、生徒たちは聞くに耐えない悪口雑言を浴びせ続ける激しい口調に強いショックを受けた様子でどよめきが起き、友達同士、顔を見合わせていました。
宇都宮弁護士は、多重債務者を救済する機関として、各地の司法書士会や弁護士会などがあることを紹介し、「借金の連帯保証人になったことをきっかけに多重債務に陥る人もたくさんいます。もし身近な友達が消費者金融問題を抱えていたら、決して連帯保証人になったりはせず、今日の講演を思い出して速やかに相談窓口を訪ねるように伝えてほしい」と訴えました。
最後に、これから社会に出る高校生へ望むこととして、宇都宮弁護士は3点を挙げました。1)何にでも疑問を持つこと。広告などに惑わされず、何にでも疑問を持って、自分で考える習慣を身に着けて欲しい。2)不正を許してはいけない。ヤミ金による不当な利息や取り立てなどを許さず、それらと戦う勇気を持ち、犯罪を取り締まる社会をつくることが必要。3)弱者に対するいたわりを持って欲しい。弱者をいたぶる卑怯なことはしてはいけない。
以上のメッセージを伝えて講演を終えました。
(宇都宮健児弁護士の講演)
講演終了後、宇都宮弁護士に対して生徒会長より「世の中には自分たちの知らない怖い落とし穴があることを教えていただきました。近い将来社会人となる自分たちにとって、世の中の現実を知る貴重な機会となりました。これからは、自分の生きる道をしっかり見極めていきたいと思います」と謝辞が述べられました。
また講演の後に、参加した県内の教育関係者や、生徒代表などが出席する感想報告会が開かれました。これまでの金融教育への取組みについての評価や、生徒代表から公開授業・講演会について「今後の自分の人生の中でプラスになること、マイナスになることを見極めて生きていきたい」といった感想が述べられ、当日のプログラムは終了しました。