ディスクロージャー誌の見方・銀行編
ディスクロージャーとは
1.ディスクロージャー誌とは何か
(1)ディスクロージャーとは
ディスクロージャー(Disclosure)という言葉の意味は、物事を明らかにして示すということで、ディスクロージャー誌とは、「経営内容等を開示した冊子」のことです。そして、ディスクロージャー誌に掲載されている内容は、財産や収支の状況といった財務内容にとどまらず、経営方針や組織、商品・サービスの内容など、企業活動全般を判断するために必要なあらゆる情報におよんでいます。
(2)銀行にディスクロージャーが求められるわけ
銀行は皆さんのお金を預金としてお預かりしていますが、預金は預金者に返さなければならないお金であり、いわば預金者から借りているお金です。預金者はお金を貸す相手である銀行の経営状態について知ることができなければ、安心してお金を預けることができなくなります。特に、定期預金などのペイオフが解禁された現在では、どの銀行であれば安心してお金を預けることができるかということは、預金者にとっては非常に大きな関心事です。
また、銀行からお金を借りている企業なども、その銀行に万一のことがあれば、今まで受けていた融資が受けられなくなる惧れがあるなど、事業に大きな影響を受けることになります。すなわち、利用者からすれば、安心して取引ができる銀行かどうかを判断するためには、銀行の実態を知ることが必要になります。
このため、銀行は、株主などの投資家に対してだけでなく、広く一般の利用者に対しても経営内容等を開示して、銀行の経営の実態を知ってもらう必要があるのです。
2.銀行のディスクロージャー制度の経緯
銀行によるディスクロージャー誌の作成が制度として導入されたのは、昭和56年に施行された新しい銀行法によってです。昭和2年に制定された銀行法が54年ぶりに全面改正されたのですが、そのときに銀行の社会的責任や公共性を踏まえ、ディスクロージャー誌の作成について規定されたのです。
しかし、具体的な開示項目などが規定されなかったため、開示内容が銀行によって異なり、相互に比較しにくい状況でした。このため、昭和62年に全銀協で統一開示基準を制定し、その後、平成10年12月の銀行法改正によって開示項目が法定化されるまで、銀行のディスクロージャー誌は、全銀協が定める統一開示基準を最低限の開示項目として、制作されていました。
銀行のディスクロージャー制度は、日本版金融ビッグバンを実現するための金融システム改革法が平成10年12月から施行されたことなどにより、平成10年度決算分(平成11年作成分)から法定化されることになりました。まず、銀行法第21条でディスクロージャーが義務づけられるとともに、罰則規定も設けられました。また、銀行法施行規則で具体的な開示項目が規定されたほか、開示時期は原則として事業年度(3月末)経過後4ヵ月以内(7月末までに開示)とされました。
なお、平成18年度からは中間期(9月末)にもディスクロージャー誌による開示が義務づけられています。この他、法律に基づく開示ではありませんが四半期毎に財務情報の開示を行っています。