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高校生小論文コンクール

「金融と経済の明日」第1回高校生小論文コンクール(平成15年)

この夏、金融と経済の明日について考えてみませんか?

「私たちの介護保険」

特選

福井県 仁愛女子高等学校 2年 高間 史絵

平成5年12月、私の祖母は倒れました。そのまま集中治療室で3ヶ月過し、その後1年もたたないうちに、透析、壊疽(えそ)、失明、と病状は進み、あっという間に自分では寝返りすらできなくなってしまいました。

いろいろな問題はありましたが、私たち家族は祖母の失明をきっかけに、在宅看護に踏み切りました。祖母は現在の介護保険制度の中で、特定疾病のひとつに認定されている糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症及び糖尿病性網膜症でした。

病人を抱える、在宅看護をするということが、精神的に、金銭的に、どんなに大変であるか、それは言葉で説明しようにも言い難い様々なことがあります。

今回、私は介護保険を考えるにあたり、両親の話や記憶を基に、祖母を今、私が住む自治体における介護保険制度の中で介護できていたならどうなっていたかを、家計を中心に具体的に考えることにしました。

まず、倒れた時から考えてみましょう。

祖母が倒れた当時は、まだ、病院では付き添いが必要でした。付き添いが専門の仕事として成り立つほど、病人に付き添いをつけることは大変です。我が家の場合、倒れた祖母も、その子供である父も、共にひとりっ子だったこともあって、必然的に嫁である母が付き添うことになりました。

当時、集中治療室に入ると治療費とは別に1日15000円の部屋代が請求されました。祖母はまだ若かったために、医療費も3割負担でした。一定額以上の医療費は、高額医療費として戻ってはきますが、それが戻ってくるまで数ヶ月かかるために、ある程度まとまったお金が必要でした。

自己負担金に加えて、高額医療費請求の中に認めてもらえない消耗品代などを含めると、家計にかなりの負担がかかったのは事実です。その上母の手が、付き添いとしてとられてしまうのです。それこそ、当時、祖父と父、2人の経済的な支えがあったからこそやっていけたのでしょう。

一方、現在の病院の原則は、完全看護です。特別のことがない限り、家族は皆、勤めを続けることができるので、生活スタイルをあまり変えずにいられるために、家計への影響は最小限に抑えることができるのです。

それでは次に、在宅看護になってからはどうでしょう。

我が家では、先ず、住宅改修から始めました。当時、我が家の1階は6部屋全てが畳でした。そこで、祖母を迎えるために、トイレ、風呂などの水回りに近い3部屋の壁や、押入れを取り外し、車椅子で生活できるように、段差のないフローリングに改修しました。

母が家事をしながら、祖母を看ることができるように、祖母の生活空間をオープンにして、家族が集まる居間の横にならべました。改修費は180万円ほどかかりました。

この住宅改修費も、現在の介護保険制度では上限額が20万と決まってはいるものの、要介護状態の区分にかかわらず支給されます。その上、当時は自己負担で購入するしかなかった、車椅子や電動ベッド、手すりなどの日常生活の自立を助ける用具や、機能訓練の用具を、わずかレンタル料の1割を負担するだけで借りることができます。

勿論、貸与になじまない入浴や、排泄のための用具の購入費も、これもまた上限が1年間に10万円と決まってはいるものの、支給されます。

それでは次に、在宅看護をするにあたって、もっとも大事な病院による看護のサポート体制について考えてみましょう。

在宅看護に踏み切った時には、祖母はもう週3回の透析をしていました。その上、他の病気も徐々に進んできていて、内科だけでなく眼科、皮膚科と、行かなくてはならない病院は増えていきました。特に、両足の壊疽は、毎日の処置をどうしても必要としていました。そのため、透析以外の日は訪問看護をお願いすることにしました。

体温や脈、血圧など基本的な観察を含め、栄養、排泄、運動指導やカテーテルの管理や創の処置などをしていただくと、大体1時間はかかっていたようです。その訪問看護の基本料金は、午前9時から午後4時までは30分450円、時間外は1000円でした。

膀胱洗浄やカニューレ交換などをして、時間が長くなることも多く、なかなか基本料金というわけにはいきませんでした。また、その時の車代も実費でした。そのうえ、お金を払っても、内科以外の往診をしてもらうことはできませんでした。歯科においては、祖母の体調の都合もあって、結局、一度も診察すらしてもらうことはありませんでした。

現在の介護保険制度における訪問看護の利用者負担は、30分未満で425円です。それが、今、充実されつつある病院からの訪問看護になると、30分未満でわずか343円です。そして、医師、歯科医師による指導は1ヶ月2回まで500円。薬局の薬剤師による指導は月の1回目500円、2回目から4回目まで300円。管理栄養士や歯科衛生士による指導も、同じように受けることができるのです。

次に地域のサポート体制はどうでしょう。

病気が進み、自分で座位を保つことができなくなってきた祖母は、入浴にも困るようになってきました。それで、入浴介助を、町の施設に週に1回の割合で頼むことにしました。祖母の体調と施設の空きとを合わせることが難しく、毎週というわけにはいかなかったのですが、その施設には、月にして8000円ほどの支払いをしていました。

この訪問入浴介護の利用者負担は、現在の介護保険制度の元では、1回1250円です。又、その他、ホームヘルパーが家を訪問して食事、入浴、排泄などを介助してくれる身体介護が402円。掃除、炊事などを介助してくれる生活援助が208円。訪問リハビリテーションが1日550円で利用できます。

その他、今は、当時では想像もできないような料金で、様々な施設を利用できます。たとえば、通所介護(デイサービス)は482円から903円。介護入所福祉施設などで生活上の介護を受ける生活介護は1日797円から1123円。介護老人保健施設や療養型医療施設などで医学的管理のもとに介護を受ける療養介護は1日949円から1192円です。

正直、調べれば調べていくほど、利用者のニーズに沿ったサービスの厚さだけでなく、利用料金に関しても、現在の介護保険制度は比べものにならないほど安く充実しているというのが感想です。

そうなると、介護保険の問題は、支払う保険料のことでしょうか。

介護サービス利用限度額はひと月61500円から358600円です。その保険料は月にして1800円から5400円です。また、その財源は、国の負担25パーセント、福井県と構成町の負担25パーセントそして残り50パーセントが保険料という割合で運営されています。つまり必要な財源の総額は、被保険者が支払った保険料の6倍になります。

又、保険料が同じであれば高齢者人口が多いほど、高齢者人口が同じであれば保険料が高いほど、中央基金から下りてくる第二号保険料と租税負担分が、比例して増えることになります。その上、高齢化率の高い所ほど補助金がつき、自治体の政策によって補助金も増減したりするのです。

一方、その財源の中で、自治体によって自ら推計した金額に基づいて保険料がはじき出されているだけに、高齢者が増えても財源の心配はありません。安定した財源の後盾の元での少ない利用負担金というのは、我が家のように多額の医療費を長年払ってきたものにとってはとても魅力的です。

介護制度を考えるに於いて、介護保険料を払うこと、小さな負担を負うことで、いかに大きな保証を得ることになるのか、ということを理解することが、先ず大切なのかもしれません。

勿論、誰もが介護を受ける生活が待っているというわけではありません。しかし、厚生省の資料によると、各個人の一生で見た場合何らかの介護が必要となる可能性は約5割だそうです。家族も考慮すれば、さらに高い確率で給付を受けることになるのです。

そのうえ、毎年、平均寿命が延び、介護の重度化や長期化が進んでいることに反して、子供の数は確実に減ってきています。当然、わたしたちは、お世話をするという介護から、自立支援の介護に変えていく必要がでてくるのです。

そのためのシステム作りを考えると、保険料を支払うことで、気兼ねなく自分の必要な介護を選び、自立した生活を助けてもらう体制を作り上げることは、今、必要なのです。これから迎える少子高齢化社会の中で、個人を尊重した集合体として地域を考え、その地域の中で外部サービスを共同で利用することで家族介護を支えるのです。

さらに、保険料の決定から要介護認定まで全てが地方自治体に決定権が委ねられているために、体制作りそのものが、自治を求めていくことにもなるのです。

高齢化福祉を軸に、ネットワーク作りと、人材の育成をすることで、経済的にも地方分権を支え、自分たちの地域ケア体制を整えていく。住み慣れた家庭や、地域の中でその人らしく自立した日常生活を営むことができ、共に支えあう地方自治を作っていく。

そのための安心を得るための介護保険であれば、保険料の支払いに問題はなく、まして単に金額だけを話題にするのはどうかとも思われます。

今、私は亡き祖母を、介護保険制度の元で看ることができたなら、もっと家族に笑顔が増えていたに違いない、そう思います。それだけに、地方自治体や地域に、必要な財源が保障される介護保険制度が、今後さらに充実されることを私は心から願います。

これから私たちは、自治体に
「お金がないから高齢者福祉の整備充実ができない」
なんて、もう言わせません。

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