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高校生小論文コンクール

「金融と経済の明日」第3回高校生小論文コンクール(平成17年)

考えようよ、日本の経済。

「働くことの意味」

秀作

福島県 福島県立安積高等学校 1年 石井薫

私は今年の春、高校生になった。高校生である私が最近よく考えることは、「何のために勉強しているのか」ということである。中学校3年間はあっという間に過ぎてしまった。あっという間すぎて、なぜ勉強しているのかなんて考えたことがなかった。今考えてみると中学校時代の私は、「目標の高校に行くため」、そのために勉強していたのだと思う。

そしてその目標が達成された今、高校生である私が最近よく考えることは、「何のために勉強しているのか」ということである。

「何のために勉強しているのか」──この質問を友人にしてみたところ、「目標の大学に行くため」という答えが返ってきた。何もせずに放っておけば、食べ物は腐っていくし、植物は枯れていく。これらと同じように私たちも、目標を達成したからといってその後何もしなければ、どんどん駄目になってしまうだろう。だから私の友人のように「志望大学合格」という新しい目標を持つことは良いことだと思う。

だがしかし、私は目標の大学に行くことが人生での最大の目標だとは思わない。仮に目標の大学に合格したとして、その後大学では何のために勉強するのだろうか。

高校を卒業し、大学に入学して卒業する。この流れから考えると、大学卒業後に就職すること、つまり働くことが人生の最大の目標なのかと思う。大学では「就職する」ということを目標に勉強するのだろうか。

でも私には、「何のために勉強しているのか」と同様に、「何のために働くのか」が分からなかった。授業中やテスト中も、「なぜ私は今、授業を受けているのだろう」とか「このテストを受けることにどんな意義があるのだろう」とかそんなことばかり考えていて、勉強に身が入らなかった。

そんなとき、私はある新聞記事を読んだ。2004年、フリーターは213万人、仕事も通学もせず職業訓練も受けていない「ニート」と呼ばれる若年無業者は64万人に及ぶという記事である。このような若者が定職に就かない主な理由は、仕事をやっていく自信がなかったり、本当に自分のやりたい仕事がまだ見つからないからだとされる。

世間はこのような若者を良く言わないが、彼らの考え方は私の心境に似ていたので、私はフリーターやニートと呼ばれる若者の考えを異質だとは思わなかった。

私は何かこれといって他人より秀でた才能を持っているわけではない。だから、少し興味を持った職業に対しても、私よりこの職業に就くための才能を持ち合わせている人はたくさんいるだろうから、私には無理だと消極的になってしまう。

しかし心の中にはやりたいことはきっと見つかる、私にも輝く才能がきっとあって努力すれば夢は叶うだろうと期待している自分もいる。でも実際に私は自分の才能を見つけ出そうと努力しているのかと言ったら、とてもしているとは言えない。それはまた心のどこかに、努力はどうせ無駄になると思っている自分、挫折を恐れる自分がいるからなのだと思う。

この新聞記事を読んで、「勉強すること」そして「働くこと」の意味について自分なりによく考えてみた。私の家は、私が幼い頃から今までずっと、両親共に働いている。私が幼稚園に通っていた頃も、家に帰ってくると祖父母がいて、夕方になると母が帰ってきてそしてその後に父が帰ってきた。私はそれが普通のことだと思っていた。

しかし小学生の頃、放課後に友達の家に遊びに行くと、ほとんどの家にはその友達の母親がいた。小学生の私はそのことにとても驚き、またとてもうらやましく思った。どうして私の母だけが家にいないのだろうと思うと悲しく、本気で母に働かないでと頼んだことがあった。しかし今でも母は働いている。

先日母にいつまで働くつもりなのかと聞いてみたところ、いつまでも働き続けられるまで働いていたいと言っていた。母の仕事は小さな会社の事務である。小さな会社だとは言っても、やはり今はパソコンが使えなければ仕事にならない。機械全般が決して得意とは言えない母にとって、その仕事は楽しい仕事ではないと思う。しかし母は毎日、嫌な顔一つせず楽しそうに通勤している。

また、私の家には父がいる。父が仕事を休むということは滅多にない。私の父の収入が他の家族より取り分け少ないということはないはずだ。だからこそ、母がそんなにがんばって働かなくても私の家は十分暮らしていけるはずである。小学生の頃からこのように考えていたので、なぜ母が一生懸命働くのか分からなかった。

母に「どうして働くの」と聞いてみた。母の答えはこうだった。「薫とお兄ちゃんが将来好きなことをできるようにだよ」―この言葉を聞いて私は、「何のために勉強するのか」「何のために働くのか」という疑問の答えを自分なりに導き出すことができた。

人はひとりでは生きていくことはできない。私が今、何の不自由もなく生活しているのは、周りでたくさんの人々が支えてくれているからである。そして今の私の生活を金銭的な面で支えてくれているのはやはり親である。

しかし支えてくれている親が仕事をしてお金を稼ぐことができる時間はもうあまり残っていない。これからは自分自身でお金を稼ぎ、逆に親や家庭を支えていかなければならない。そのとき、私たちにはゆっくりと自分の才能を活かせる職業を選んでいる時間はないかもしれない。現実は甘くないのだ。

確かに自分が長い間追い続けてきた夢を叶え、自分の才能を存分に発揮しながら働く人の姿は生き生きとして輝いて見えると思う。しかし、ただ大切な人のために働くことは、それがどんな職業であっても貴いことだ。私は大切な人のためならば、どんなに辛くともがんばることができると思う。

私には、母の労働の成果のおかげで、自分の夢を追求することができる時間がある。私にこのような時間を与えてくれた母にとても感謝している。それと同時に、今まで働き続けてきた母、そしてこれからもしばらくは働き続けるであろう母をとても誇りに思う。

私は今まで、男が外で働き、女は家で家事をするという日本の昔からの考え方に似た考え方をしていた。このような考え方が悪いということは決してない。だがしかし、私は働く母の姿を改めて見て、働くことに男も女も関係ないのだと感じた。大切な人のためにがんばりたいと思う気持ち──それは人間であれば誰もが持っているものだと思う。

「何のために勉強するのか」「何のために働くのか」──その答えはとても簡単なことだった。

私はこれから、将来働く力を蓄えるために、挫折を恐れずに勉強していきたい。母が私に与えてくれた時間を決して無駄にすることのないように、少しでも自分の可能性というものを見つけていきたい。そして働かせていただける職に就いたら、自分の大切な人を支えていくため、どんな仕事もがんばりたい。

仕事をがんばることが、今まで自分を支えてくれた人に対する恩返しでもあると思う。今この瞬間の気持ちを忘れず、これからも日々学び、生きていきたい。

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