ナビゲーションをスキップして本文へ

これより本文です

「おかねの作文コンクール」

第36回「おかねの作文」コンクール(中学生)(平成15年)

ものやおかねについて考えてみよう!!

「大切に使いたい ―お金―」

特選・金融担当大臣賞

山梨県 駿台甲府中学校 2年 嶋田 修一郎

「お礼」と書かれた茶封筒を開けた。

中には千円札が2枚。ぼくは何回も何回も数えた。これは、親からもらったおこづかいじゃない。ぼくが自分の力で獲得した、初めてのお金だ。とってもうれしかった。

7月、友人達との夏休み松本城見学旅行計画が進んでいた。青春18切符は一人当たり2300円。お城の見学料とバス代、お昼、おみやげ代を含めると、どうしても約9000円の予算が必要だった。「お金が必要」しかし、新聞折り込みのバイトはどれも高校生から。

でも、ぼくには一つの思案がある。それは、宅配を経営しているおじさんが、以前から、「お中元やお歳暮の季節は猫の手も借りたいぐらいだ。できたら今度、手伝ってくれないか。おこづかいあげるから」と言ってくれていたからだ。

しかし、実際にアルバイトをたのむと、おじさんはなかなかオーケーしてくれなかった。何度も何度もたのんだ。ついに、「中学生はバイトは無理だけど、個人的にお礼という形なら」と、一日、朝8時から夕方6時まで、おじさんと一緒に荷物を運ぶ。昼食は一緒に。そして、一日で2000円という契約。予定通りがんばれば、7日間働くと14000円。旅行には、十分な予算だ。ぼくは喜んで返事をした。

しかし、初日から、ぼくには驚きの連続だった。まず、山積みになった荷物の区分け作業。おじさんは、実に整然と、計画的に、トラックの荷台に積み込む。 200個以上の荷物の数とそれぞれの重さ。中には、ぼくが力いっぱい引っ張ってもピクリとも動かない段ボール箱。しかし、おじさんはひょいと荷台に積んでしまう。

さらに、「われもの」「転倒禁止」「もともと破れかけていた袋」「生きているお花」などなど。おじさんの荷積み作業はまさに芸術だった。ぼくはおじさんの足元にも及ばなかった。当初の「手伝うぞ!」という意気込みは、仕事初日の最初の一時間で、とうに消えていた。ぼくは、本当は「足手まとい」、「邪魔もの」であることを強く自覚した。

しかし、おじさんはにこにこして、ぼくに声をかける。「さあ、一緒に出かけるぞ!」ぼくは、トラックの助手席に座り、ベルトを締めた。今日も雨。ぼく達は、カサをさすこともできない状況の中、荷物を運ぶ。

特に一番辛かったことは、半数近い家が不在であったことだ。5階まで運んだ重たい荷物。インターホンを押す。不在。不在票に記入後、また、荷物を持ちながら階段を降り、トラックの荷台に戻す。「希望お届け時間」に運んだのに、誰も居ない。しかし、おじさんは嫌な顔一つ見せずに、またハンドルを握る。この繰り返し。昼休み前には両方の足が、しびれて痛くなった。クラブ活動なんかより、だんぜんに大変な労働の連続だった。

しかし、こんな労働の中にもうれしいことがある。それは、荷物を受け取ったお客さんが、「ありがとう」と言ってくれたり、荷物を受け取るときに笑顔をしてくれた時だ。きっと、この荷物が届くのをとても楽しみにしてくれていたのだろう。「心のこもった荷物だね」「お客さんの笑顔が見られることが、この仕事の醍醐味なんだ」と、おじさんが言う。心の配達──ぼくもとってもうれしくなった。

夕方6時。おじさんと会社に戻った。荷台には、まだ約3分の2の荷物が残されている。「ぼくの仕事は、お客様が自宅に戻られるこれからが勝負なんだ」仕事、それは、ぼくが予想していたような簡単なものではなかった。

別れ際、おじさんはダッシュボードの中から、「お礼」の茶封筒を取り出した。そして、「今日はとても助かったよ。手伝ってくれて、ありがとう」と言ってくれた。うれしかった。

こうして、ぼくは最初の「お給料」を手にした。台風の日やとても暑い日もあったけど、ぼくはトータルで7日間、おじさんと一緒に働くことができた。「お客様の大切な荷物を預かっているという自負と責任感」おじさんの仕事に向かう心が、次第にわかってきた。

お給料が可能にした友人達との旅行は、特別の意味を持った。初めてきちんとつけた、おこづかい帳。おみやげを買い、友達に渡すことができた喜び。使う一円単位のお金も、ぼくには特別に重要なものになっていた。ぼくは、本当に喜んでもらえるものを、本当に必要なものを、一つ一つ吟味して購入した。さらに深められた友情とともに、旅行で残ったお金は4352円。ぼくは、大切に貯金した。

今回、ぼくは、働くことでお金を得た。仕事は辛いことが連続したけど、その中でたくさん、みんなの素敵な笑顔に出会えることができた。こころがいっぱいにつまったお金。

ぼくは学んだ。一つ一つのものには、すべて大きな価値がある。そして、それらを購入することのできるお金の背後には、労働という、一人一人の大きな意味がある。

「ものを大切に使いたい」「お金をきちんと使いたい」

今年は、今までで最高の夏休みとなった。

著名人・有識者が語る

  • 脳科学者 中野信子さん
  • 作家 上橋菜穂子
  • 落語家 林家たい平さん
  • 劇作家・演出家・女優 渡辺 えりさん
  • 青山学院大学陸上競技部監督 原 晋さん
  • 東京女子医科大学・先端生命医科学研究所教授 清水 達也さん
  • 元スピードスケート選手/長野五輪銅メダリスト 岡崎 朋美さん
  • 工学博士 石黒 浩さん
  • 日本体育大学教授 山本 博さん
  • 編集者・評論家 山田 五郎さん
  • 作家 荒俣宏さん
  • 医学博士 日野原重明さん
  • 山形弁研究家、タレント ダニエル・カールさん
  • 公認会計士 山田真哉さん
  • タレント パトリック・ハーランさん
  • 精神科医、立教大学教授 香山 リカさん
  • 野球解説者 中畑 清さん
  • 順天堂大学准教授 鈴木大地さん
  • 昭和女子大学理事長・学長 坂東眞理子さん
  • プロスキーヤー、クラーク記念国際高等学校校長 三浦雄一郎さん
  • 明治大学文学部教授 齋藤孝さん
  • マラソンランナー 谷川真理さん
  • 数学者 秋山仁さん
  • TVキャスター 草野仁さん
  • サッカー選手 澤穂希さん
  • ピアニスト 梯剛之さん
  • 女優 竹下景子さん
  • 食育研究家 服部幸應さん
  • おもちゃコレクター 北原照久さん
  • 宇宙飛行士 山崎直子さん
  • 早稲田大学名誉教授(工学博士) 東日本国際大学副学長 エジプト考古学者 吉村作治さん
  • 工学博士 淑徳大学教授 北野大さん
  • 登山家 田部井淳子さん
  • 音楽家 タケカワユキヒデさん

おすすめコンテンツ

  • くらし塾 きんゆう塾
  • 刊行物のご案内
  • 金融経済教育推進会議
  • ナビゲーター
  • YouTube
  • メディア情報