金融教育フェスタ
金融教育フェスティバル2009
教員向けセミナー 実践報告<1>
矢野 克人氏 (広島県立福山商業高等学校 教諭)
「金融教育を通してのキャリア教育の取り組み~社会とつながる学習~」
保護者への感謝と生涯設計について考える姿勢などで大きな成果
本校は昭和39年に創立され、情報ビジネス科と流通経済科の2学科の編成で、1学年6クラス、計約650名の生徒が学んでおります。商業高校の特色である簿記、情報処理、ワープロといった社会で必要な資格取得を目指しており、全国商業高等学校協会主催の検定試験でも1級合格者が増えています。金融教育に関しては、昨年度応募して研究校の委嘱を受け、2年間教育研究活動に取り組んできました。
まず2年間の成果を申し上げますと、通常の講義形式のほか、クラスを6、7人の小グループに分けて行う授業形式を取り入れて取り組みました。これにより、生徒が積極的に発言するようになり、また、他人の意見を聞き、理解する姿勢についても大きな成長が見られました。さらに、保護者への感謝や人生の責任を感じさせることもできたと思います。
具体的には、小グループ形式の授業では「人の意見を批判・批評しない」、「自由奔放な意見を出す」、「質より量を重視する」、「アイデアを結合、もしくは一部を変化させることで、新しいアイデアを生み出す」というブレイン・ストーミングの4原則を重視して展開しました。
そして、外部講師として広島県金融広報アドバイザーの杉本栄三先生をお招きし、第1回目は金融に関わる視聴覚教材を用いつつ、金融教育の概要と今後の展開についてお話いただきました。
第2回目は購買活動などにおける意思決定をテーマとして、「おじいちゃんを元気づけよう大作戦」というオリジナル教材を使った授業を行っていただきました。ここでは、風邪で寝込んでいるおじいちゃんのために4,000円で買い物をするという想定で、何を買うのかを考え、グループ内で発表しました。3回目は、生徒が自己分析により自分の適性を知り、将来、安定した所得を得るために的確な職業選択ができるようにとの観点から指導を受けました。
4回目と5回目は「賢い消費者になるには」をテーマに、悪質商法の実態と対策、食品の安全と安心、金銭管理と多重債務などについてインターネットや文献を活用して調査研究し、その成果をまずはクラス内で各グループが発表しました。その際、生徒の相互審査によって1クラス約3グループの代表を選出し、6回目の授業で、学年全員の前で発表会を行いました。
7回目は自分のライフサイクル表を作成し、生まれてから今日までにかかった費用と将来必要とされる費用を計算し、生涯設計について考えました。生徒からは「親に感謝する」、「大学に進学するので、まだまだ費用がかかる。本当に真剣に勉強しなければ申し訳ない」といった意見が聞かれるなど、金銭に対する考え方を新たにする生徒が多く見られました。
今後の課題としては、生きる力をつけさせるために、社会科、家庭科、商業科で扱う内容をさらに検討する必要があると思います。また、今回は自己の将来を考え始めた3年生を対象にしましたが、自分の進路を決定した上で、目標を立てて学習を積み重ねるなど、生徒に充実した高校生活を送らせるには、1、2年生の段階から金融教育を展開することが効果的であると考えています。
教員向けセミナー 実践報告<2>
横尾 秀成氏 (広島県福山市立蔵王小学校 教務主任)
「生きる力と金融教育」
全校で公開授業、家庭と連携し主体的に行動できる態度を養う
本年度、金銭教育研究校の委嘱を受け、取り組んできましたので、その一端をお話しさせていただきます。本校の教育目標は「豊かな心を持ち、たくましく伸びる子」ですが、金融教育を始めるにあたり、児童の実態を調べたところ、文房具などの落とし物の持ち主がわからない、モノを大切にしようという意識が低い、また、家庭ではお小遣いで買い物をする経験が少なく、欲しいものはいつでも買ってもらえる児童が多いことが明らかになりました。
そこで、金融教育の狙いを「お金や金融の様々な働きを理解し、それを通じて自分の暮らしや社会について深く考え、自分の生き方や価値観を磨きながら、より豊かな生活や、よりよい社会づくりに向けて主体的に行動できる態度を養う」*としました。 4月28日に、広島銀行の方に来ていただき5、6年生を対象とした、正しいお金の使い方についての金融教育の授業を行っていただきました。5月14日には、先ほどの福山商業高校と同様に金融広報アドバイザーの杉本先生をお招きし、6年生に「おじいちゃんを元気づけよう大作戦」というテーマで授業を行っていただきました。8月7日には金融教育参観日に向けての指導案検討と、4年生対象の授業を想定して「家族のためにカレーづくりに挑戦しよう」という模擬授業を行いました。教師が生徒役になりきって行われた模擬授業では、限られた予算の中でもいろいろなカレーができることを確認しました。さらに、夏休みの工作で、お金を大切に貯めていくために、世界に1つしかないアイデア貯金箱づくりに生徒は挑戦しました。
9月8日には福山東税務署の方をお招きし、6年生を対象に租税教室を行っていただきました。
9月17日の金融教育参観日には、1年生は「お金にへんしん!」、2年生は「お金にかえると・・・」、3年生は「友だちのしょうこ」、4年生は「家族のためにカレー作りに挑戦しよう」、5年生は「鞆の浦ガイドツアー」、6年生は「修学旅行でのお小遣いの使い方を考えよう」という題材で、全学級で公開授業を行いました。1・2年生は落とし物をお金に換えるといくらになるかを考える、3年生は道徳の教材を使って、お金やものを大切にする生活を学ぶ、5年生は友だちを限られたお金で鞆の浦に案内し、喜んでもらえる案を考える、6年生は修学旅行の本番に備えてお小遣いの使い方をシミュレーションするという内容です。
こうした授業を通して、子どもたちから、「古くなったものや買ってもらったものを大事に使って長持ちさせる」、「お小遣いはありがたく使わないといけない」、「ジュースを買うより、家からお茶を持ってくれば良いと気づいた」などの感想が聞かれました。
また公開授業の後、保護者を対象に杉本先生に「生きる力と金融教育」と題して、家庭で実践できる具体的な事例を挙げながらご講演いただきました。参加した保護者からは、「今日の授業は自分でお金を管理する第一歩」、「何か欲しいものがあれば、何かを我慢するという気持ちを覚えることは、わが家でも話し合っていきたい」などの声が多数寄せられ、金融教育の重要性を改めて感じました。
今後も学校と家庭が連携して金融教育の実践に取り組んでいきたいと思っています。
*金融広報中央委員会『金融教育プログラム-社会の中で生きる力を育む授業とは-』(平成19年2月)P.10参照。
金融教育プログラム-社会の中で生きる力を育む授業とは-