金融教育フェスタ
金融教育フェスティバル2010
暮らしに役立つ講演会
講師 : 村 千鶴子 氏 (弁護士、東京経済大学 教授)
「消費者トラブルの被害に遭わないために」
いまや、「被害に遭わなければいい」ではもう足りない。「積極的に賢く選ぶ」ということに努めないと、被害は防げません。自衛のために、法律のしくみも含めてお話しします。
今、非常に金利が低く、「蓄えは自分で守らなくちゃ」という気持ちが国民にはすごく強くなっています。1990年代以降、金融の規制緩和が非常に進んだことで、銀行と証券会社と保険会社のすみ分けが無くなり、金融商品の種類が多様化しています。
最近の消費者被害で目につくのは、利殖関係、資産形成関係、自己実現型、という3典型です。
資産形成型取引の中で一番被害が多いのは、未公開株詐欺です。非常にたちが悪くなり、複数の人物が出てくる劇場型の手口が増えています。被害者がカモにされる二次被害も目立ちます。
銀行の勧める商品も、変額個人年金保険など高リスクのものが多く、従来の銀行イメージに基づいて判断すると痛い目に遭います。来年1月からは商品先物取引も銀行でできるようになります。それらを銀行が勧める訳は、手数料が入るからです。
自己実現型とは、例えば「褒め褒め商法」です。川柳が趣味の人から、「素晴らしい作品を埋もれさせておくのはもったいない。ぜひ雑誌に掲載を」と、掲載料名目でお金を詐取するなどの手口です。
消費者を守るための法律は、業者の消費者に対する説明義務が一番の柱。だから、契約する者は自分で選ぶ姿勢を持たないと、法律は守ってはくれません。誰でも被害に遭う危険があると思い、自分も気をつけるけれど、周囲の人にも気を配ることが重要です。
被害に遭わないためのポイントを10点挙げます。1.必要性の熟考、2.事前の情報収集と比較検討、3.信頼できる業者の選定、4.不要物は毅然として即、拒絶、5.あいまいな態度は駄目、6.契約は自ら選ぶ、7.契約書等は熟読し、納得後に署名捺印、8.契約後に関係書類を再読して確認、9.不明、不安な事は即、消費生活センターに相談、10.絶対泣き寝入りしないことで、多重被害を防止する、です。
プロフィール
愛知県名古屋市生まれ。名古屋大学法学部法律学科卒業。
1978年に弁護士登録。東京経済大学現代法学部教授、経済産業省消費経済審議会委員、東京都消費生活対策審議会委員、日本弁護士連合会消費者問題対策委員会委員。
著書
中央経済社「改正商取引法のすべて 第3版」(2009年)、 ぎょうせい「これからこうなる消費者行政」(2009年)、 中央経済社「Q&A ケースでわかる市民のための消費者契約法 第3版」、 法学書院「ガイドブック特定商取引法」(2009年)、 あさ出版「消費者トラブル手口と対応策」(2008年)、 新日本出版社「なぜだまされるのか?」(2007年)ほか