金融教育フェスタ
金融教育フェスティバル2010
教員向けセミナー ワークショップ
講師 : あんびる えつこ 氏
(生活経済ジャーナリスト/「子供のお金教育を考える会」代表)
「お金のことを楽しく正しく伝える体験型授業」
──「カレー作りゲーム」でお金は有限であることを体得
私がいま中学1年になる長男を産んだころ、「子どもは6個のポケットを持つ」と言われていました。両親と双方の祖父母、合わせて6つの財布から物を買ってもらっている、ということです。今は独身貴族のおじ、おばを加えて、8個になっています。子どもたちは、定期的にもらうおこづかい以外にも、お金をたくさんもらっているのです。
そんな子どもたちの懐を、消費社会が狙っています。巧妙化した広告宣伝で子どもたちの消費欲を刺激しているのです。郊外に続々とできている大型ショッピングセンターは、ゲームなどで子どもにお金を使わせる有料の遊び場になっています。幼稚園児が付き合いでお茶を飲む、といったことも現実に起きていて、幼いころから友情関係の維持にお金を掛けるようになっています。ここで困ったことは、そうしたサービスへの消費は大人に見えにくいことです。
我慢を一番身につけなければならない時期の子どもが、いつでも、どこでも物を買える環境に置かれていることは、大きな問題です。ジャン=ジャック・ルソーは書いています。「子どもを不幸にする一番確かな方法は、いつでも何でも手に入れられるようにしてやることだ」と。こうした中で、子どもたちは自分の欲望を制御する能力を育てなくてはならないのです。実は、今の小学生の親の世代も同じような状況の中で育ってきました。だから、自分の子どもに教えるすべを持たないのです。このようなことから、学校での金融教育が必要になっているわけです。
金融教育では、私的な意思決定をどう習得するかということと、もう一つ、公的資質の育成という大きな目標があります。自分だけ美味しいものをお腹いっぱい食べていて隣人が食べ物に困っている社会でいいのか、あるいは将来、子孫が食べるものがなくなるような社会になっていいのか、ということを考える機会を、家庭との連携の中で設けることが必要です。
子どもたちにいま一番やってほしいゲームは、「カレー作りゲーム」です。ビーフカレーが好きだけど、予算が足りない時どうするか。野菜の種類を減らしたり、豚肉のカレーにしたり、いろいろな選択肢があります。カレー作りゲームで子どもたちに分かってほしいことは、「欲望は無限だが、お金は有限だ」ということです。そしてさらには、自分だけじゃなくて他人や地球のことも考えて意思決定していくことを学ぶ、それがこれからの時代を生きていく子どもたちの「生きる力」になると思います。
プロフィール
1967年、神奈川県横須賀市生まれ。新聞社で生活経済記事を担当しながら、ファイナンシャル・プランナーの資格を取得。出産を機に退社後は、家庭経済の記事を新聞や雑誌に執筆。講演活動も精力的に行う。東京都文京区在住。一男一女の母。近著に「『お金』のしつけ~子どもの『困った行動』に親はどう対処すべきか?」、「買って!買って!病24の処方箋~子どものお金にまつわる困った症状の対処法」、「9歳からのマネープラン おこづかいを始めよう」、その他、新聞、雑誌、テレビ、ラジオ等で活躍。神奈川県消費生活審議会委員、総務省ユビキタス特区事業 ASP SaaS 環境家計簿 普及推進会議委員、経済教育学会幹事、日本FP協会正会員、生活経済学会会員、米国経済教育協議会(NCEE)・GATE(Global Association of Teachers of Economics)会員、金融広報中央委員会カリキュラム策定委員(2004年度)、心の東京革命推進協議会(東京都青少年育成協会)正会員。「子供のお金教育を考える会」代表。