金融教育フェスタ
金融教育フェスティバル2010
教員向けセミナー 講話
講師 : 北 俊夫 氏
(国士舘大学教授)
「学校における金融教育の進め方」
学校ぐるみ、地域ぐるみで「生きる力」を育てる
金融教育とは、お金につながるさまざまな教育課題との関連を図りつつ、子ども一人ひとりに現在及び将来の生き方や社会の在り方を考えさせ、「生きる力」をはぐくむ教育です。そこには、物やお金を大切にする金銭教育や、消費者教育、働く意味などを考えさせる進路指導・キャリア教育・起業家教育、お金の役割等を系統的に指導する経済教育、社会的ルールを教える法教育、省エネルギー教育・環境教育など、さまざまな課題が位置づけられています。このように、金融教育はさまざまな視点から取り組めますが、それぞれの学校の実態や先生の関心に応じてどこからでも最初の一歩を踏み出すことができると考えれば実践しやすいでしょう。
金融教育の目指す基本的な要素は、(1)金融や経済に関する基礎的な知識の習得、(2)お金や物を大切にする態度形成、(3)計画性や自己管理、判断や論理的思考、コミュニケーション能力の育成の三つです。物事を考えるにも行動するにも、最低限の知識を身につけることは大事なことです。そして、その知識をもとにお金や物を有効に活用したり社会の形成に参画したりするなど、学んだことを実行できるようにすることも目標に位置づけたいと考えています。知識を身につけ、態度を形成する過程において、企画力や実践力、自己管理能力、判断力、思考力などが養われていくのだと思っています。
お金に対する健全な金銭感覚を養うという点では、道徳の時間を中心に子どもの心情に訴えることと、社会科や総合的な学習の時間などで物の生産やそれに関わっている人たちの苦労や工夫に触れさせることの両面が非常に大切になります。
金融教育を進めるに当たっては、クレジットカードなど日常生活における見えないお金に気づかせ、その意味や配慮すべきことなどをきちんと教えることが必要です。また働く意味という点では、夢や目標をしっかり持って努力するよう指導するだけでなく、目標実現のそれぞれの段階でお金がかかることや、人生設計を通して働くことの意義を考えさせることが大切です。自分の預貯金が預け先等でどう使われているかなど、お金と国家・社会の発展との関連を教えることも求められています。
金融教育は、全教育活動を通して行う課題です。つまり様々な教科等で実践が可能です。幼稚園から生涯にわたって行う課題でもあります。学校の一部の先生だけでなく、全教職員、保護者や地域の専門家も含めた学校ぐるみ、地域ぐるみで推進していくことが大切です。そのためには、例えば学校内に金融教育推進委員会を立ち上げ、地域の支援を受けるための調整窓口役を設けるなどすると、その体制が確立されるでしょう。
プロフィール
東京都公立小学校教員、東京都教育委員会指導主事、文部省(現文部科学省)初等中等教育局教科調査官、岐阜大学教授を経て、現在に至る。金融広報中央委員会発行の「金融教育プログラム」検討委員会委員および同小学校分科会責任者および同委員会発行の「はじめての金融教育」の編集委員を務める。著書に「新教育課程と社会科の授業構想」、「あなたの社会科授業は基礎・基本を育てているか」、「『義務教育の構造改革』と学校の課題」、「新しい学校課題と授業の創造」、「学校新時代の学力と評価」、「若い先生に伝えたい!授業のヒント60」他。