金融教育フェスタ
金融教育フェスティバル2011
教員向けセミナー 講話
講師 : 北 俊夫 氏(国士舘大学 教授)
「学校における金融教育の進め方」
金融教育の基本は、お金に繋がる様々な教育課題との関連を図りながら、子ども一人一人に現在と将来における生き方を考えさせ、「生きる力」をはぐくむことです。お金・金融の意味や社会・経済のしくみに関する理解、お金や物を有効に活用しつつ社会に参画する態度、そしてその過程で必要となる計画的な実践力や自己管理力などの能力を統一的に育成することが目標の主な内容になります。
学校における金融教育は、他の教育課題と同様に全教育活動を通して展開されます。そのためには、金融教育の視点を持って、様々な教科や領域を通して実践することが重要です。社会科、家庭科、道徳といった、学習内容において金融教育との関連が深い教科等では、単元の選び出しと重点化を行った上で実践します。また、国語等の教科では、題材レベルで金融を関連させることによって、金融に関する知識等を身につけることが可能です。さらに、生活科の買い物体験や総合的な学習の時間の販売体験といった学習活動のレベルで、金融教育と結びつけることも考えられます。そして、どの教科等のどの単元が金融教育と結びつけられるかという年間の計画表を学年ごとに作ると、より意図的な実践が可能になります。
物やお金を大切にする金銭教育では、物やお金に関する題材を活用した道徳教育を通して子どもの心情に訴えることや、物の生産に携わる人々の苦労や工夫に触れさせることによって物の生産や労働に対する理解を深めること、さらに習得した知識・技能などの日常生活での活用を促すことがポイントになります。
金融広報中央委員会の『金融教育プログラム』には、生活設計・家計管理、経済や金融のしくみ、消費生活・金融トラブル防止、キャリア教育の分野ごとに、金融教育の目標と内容が示されています。学習指導要領を超える内容は、各教科の発展的な学習として位置づけることや、総合的な学習の時間で取り扱うことができます。
お金や金融に関する教育で重視したい指導事項としては、クレジットカードなどの見えないお金や電気などの見えない消費に気付かせること、働くことの意味を理解させて将来の人生設計を考えさせること、お金と国家・社会の発展との関連を考えさせることなどが挙げられます。
最後に、学校全体で金融教育や金銭教育に取り組むためには、金融(金銭)教育推進委員会などの設置や外部との折衝役(コーディネーター)の配置など、学校ぐるみ、地域ぐるみで進める体制づくりが重要です。
プロフィール
東京都公立小学校教員、東京都教育委員会指導主事、文部省(現文部科学省)初等中等教育局教科調査官、岐阜大学教授を経て、現在に至る。金融広報中央委員会発行の「金融教育プログラム」検討委員会委員および同小学校分科会責任者、および同委員会発行の「はじめての金融教育」の編集委員を務める。
著書に、「社会科学力をつくる“知識の構造図”」、「言語活動は授業をどう変えるか」、「子どもの学力をつける学習評価」、「新教育課程と社会科の授業構想」、「あなたの社会科授業は基礎・基本を育てているか」、「若い先生に伝えたい!授業のヒント60」他。