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金融教育フェスタ

金融教育フェスティバル2011

教員向けセミナー 実践報告<1>

講師 : 藤本 勇二 氏
(武庫川女子大学 講師<前 徳島県阿波市立市場小学校 教諭>)

「自己資金で科学の祭典を開催しよう!」

藤本 勇二 氏の写真

本日ご紹介するのは、徳島県の小学校で実践した6年生の総合的な学習の時間の事例です。6年生2クラス60人の小さな学校で、児童自らが調達した資金で、「科学の祭典」を実施するというものです。「科学の祭典」とは、例えば大きなシャボン玉を作る、空気砲で煙の輪や紙コップを飛ばす、といった科学実験や科学遊びを下級生に紹介する校内イベントです。児童の活動は発展し、地元の子ども科学館でも実演することになりました。その実験材料費などを自分たちで調達するのです。金融教育をキャリア教育や環境教育と結びつけながら展開した事例です。

実践を進めるにあたって、「自分の力で」、「夢はでっかく」、「使えるものはなんでも使う」という3つの方針を立てました。「自分の力で」は、問題解決の力を育てるということ。「夢はでっかく」は、働くことやお金の価値にきちんと向きあってもらうということ。「使えるものはなんでも使う」は、教科内容とつなげる、地域の人材や施設とつながる、専門家にも援助していただくなど、“協同的に”という意味です。

セミナー風景の写真

「科学の祭典」に必要な資金を自分たちでどうやって集めるかを問いかけると、アルミ缶を集めてリサイクルしようと言い出した子がいて、「アルミ缶リサイクル省(しよう)」ができました。同じように、「古紙回収省」や「バザー省」もできました。稼いだお金の管理・運用は6年生全体の「国会」で決め、「財務省」が地元の金融機関で口座を作って通帳で管理しました。このように社会科の政治の内容にも結びつけながら取り組みました。

学校で実験イベントを行ったところ、好評のため、地元の科学館等でも開催することになりました。学校外で説明するということで、「世界一受けたい授業」の実験名人の湯本博文氏(学研「科学」編集長)に来ていただき、正しくわかりやすい説明のしかたを学びました。子どもたちは昼休みにリハーサルを繰り返し、シナリオも見直すなど、責任ある発表のために努力しました。科学館に18のブースを出展しましたが、子どもたちが一番達成感を覚えたのは、講師として科学館に自由に出入りできる「名札」を貰い、大人と同じような扱いをしてもらえたことでした。

子どもの中で実現するものは、教師の当初のねらいを超えます。授業中に実験に参加できなかった下級生のために昼休みに教室で実験をしたり、科学実験の内容を踏まえて3、4年生では子どもたちが授業の手伝いもしたりしました。国語、家庭科、理科とも連携してポスターを使った発表の練習をし、相手を見てにこやかに説明できるようになるなど、表現力も磨かれました。余ったお金2万円については、実験解説書を100部印刷して配ったり、お世話になった方を謝恩会でもてなしたり、パソコン室に時計を寄付したりしました。

低学年の児童が6年生にあこがれるようになり、保護者も協力してくれ、プルタブや牛乳パックの回収など、活動が全校的に広がりました。徳島県から学校版環境ISOの認定も受けました。活動は毎年続き、3年目には老人ホームに車いすを寄付しました。この活動は市場小学校で今も続いています。

教員向けセミナー 実践報告<2>

講師 : 新井 明 氏
(東京都立小石川中等教育学校・上智大学 非常勤講師<前 東京都立西高等学校 教諭>)

「ロールプレイとシミュレーションを通して金融政策を学ぼう
―自由化と国際化、情報化の中の金融―」

新井 明 氏の写真

多様な高校生がいますが、大半は依存型です。自立できる生徒を育てることが課題だと思います。高等学校の「政治経済」はマクロ重視ですが、これを生活や「生きる力」にどうやって結び付けるかを考えながら授業を進めてきました。

「その先生がいるからこういう授業を行っている」という属人性をぜひ大事にしていただきたいと思います。先生方がもし今の生徒や金融教育に課題を感じているのでしたら、まず自分の授業から始めていただければと思います。自分が核となって家庭科、情報科、数学科まで連携したり、総合学習でコーディネーターとなって学校全体の取り組みにまで広げられれば素晴らしいと思います。

私は、高等学校公民科の経済分野で、生徒に「これだけは伝えたい」というものを、4つに絞りました。1番目は希少性です。希少な資源をいかに活用するのか。これは経済の出発点です。お金や、時間も、希少な資源の1つです。

2番目は機会費用です。何かを選択した場合、別の可能性をその時、捨てたわけです。このセミナーを例にとれば、セミナー自体は無料でも、セミナーを受けていることによってこの時間を別のことに使えなくなっています。コストはかかっているのです。このコストをきちんと見ないと物事は検討できません。そのコスト以上の価値を得ない限り、見合わないわけです。また、例えば1冊の本を読むことに決めたら、その時間で、他の何万冊もの本の中から別の本を読む可能性を捨てたわけです。このような考え方を生徒が身につけることは、起業教育でも経済教育でも決定的に重要です。

3番目は需要と供給です。非常に応用範囲が広く、需要と供給がわかれば世の中の動きを読むことができます。例えば高校生が進路を考える際にも、供給(希望者)が多すぎてあぶれる分野ではないか、考える必要があります。金融政策でも、コール市場での資金の需要と供給をみながらオペレーション(公開市場操作)を行っています。

最後は比較優位です。貿易論の比較生産費説で使われる概念で、A国とB国を比べると、A国が毛織物、ワインともにB国より生産性が高くても、A国はより得意な毛織物の生産に特化し、ワインはB国から輸入した方が、A国、B国ともに利益になる、というものです。この「国」を「人間」に置き換えると、強い人間と弱い人間が協力することで互いにメリットがあるということになり、どんな人間でも必ず価値があるという考え方につながります。

セミナー風景の写真

授業での工夫として、ゲームやシミュレーション、ロールプレイなどの活用が効果的です。例えば、ストラップなどの「もの」を売買するロールプレイでは、買い手が売り手に渡す「お金」(模擬券)の額を増やしていくと、売り手は最初は金持ちになったと思って喜びますが、結局は「もの」の値段が上がっただけであることが分かります。こうして、貨幣数量説を実感することができます。

また、自分に1,000円を貸してくれる人がクラスにどの位いるかを生徒に考えさせます。これは「信用」の問題です。道で知らない人に1,000円貸してくれと言われても誰も貸さないはずです。私たちは、銀行にお金を預けますが、銀行からどこにお金が行くのか分からないのに預金するのは、銀行を信用しているわけです。その信用がなくなったらどうするか、貸すか、利子はどうなるのか、といった議論をすることも考えられます。

日銀の政策委員会委員になったつもりで、金融政策のロールプレイをしたこともあります。生徒はデータを読んだうえで、しっかりした答えを出していました。

これからも、生徒が楽しく授業に参加しながら、お金に関する知識と金融の本質を理解できるような授業を工夫してゆきたいと考えています。

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