金融教育公開授業
平成18年度金融教育公開授業(全国リレー講座)
金融広報中央委員会
福島県金融広報委員会
福島の実施報告
「金融教育公開授業 in 郡山(郡山商業高等学校)」(12月20日開催)
12月20日(水)、福島県立郡山商業高等学校において公開授業が行われました。当校は大正9年に郡山実業補習学校として創立され、80年を超える歴史を有する商業高校です。現在、会計科・情報処理科・流通経済科・国際経済科の4科合わせて943名の生徒が学んでいます。当日は、午前中に3年生が実践した商業研究発表が行われた後、午後に生活経済ジャーナリストのいちのせかつみ先生による公開授業がありました。
▼ 参加者内訳:
公開授業 1,030名(うち生徒943名、教職員70名、保護者等17名)
開会に当たり、星校長から「18年度から金融教育研究校の指定を受け、全校を挙げて、金融教育に取り組んでいる」との紹介があったほか、福島県金融広報委員会の鉢村会長(日本銀行福島支店長)から、「お金は生活していく上で不可欠なものであること、また、お金を大事に使って欲しいとの思いから、使えなくなったお札の裁断片で作った植木鉢を贈らせて頂く」との挨拶がありました。
生徒商業研究発表
3年生が「課題研究」で実践した6例が発表されました。いずれも、熱心に取り組んだ力作揃いでしたが、このうち「生み出す信用、トラスト&クレジット~今、消費者が求めるもの~」は、同校として初めて全国商業研究発表大会で発表されたものでした。その内容は、食品の安全という観点から、地元スーパーや野菜の直売所などを調査したうえで、生徒の一人がトマト農家であることに着目して、ネット通販を利用して安全で美味しいトマトの販売を立ち上げようとの取組みでした。安全な食品を売る販売者側の信用(トラスト)と購入代金を確実に支払う消費者側の信用(クレジット)が、市場経済を成り立たせることを実感できる素晴らしい発表でした。
公開授業「知らんとアカン! 本当はおっかねぇ~、お金のはなし」
冒頭、いちのせ先生は「血液型によってお金持ちになれるかどうか違いがあるのか」と生徒達に問い掛けました。高校生が好きな占いでは、血液型により性格が異なり、運勢も違うように言われているが、お金持ちになれるかどうかは血液型とは関係ないこと、また、お金をたくさん持っていれば幸せという訳でもないことを説きました。そして、生活者・消費者としては、持っているお金の多寡自体ではなく、どううまくお金と付き合えるか、お金をどううまく使えるかで幸せになれるかどうかが決まると話しました。
一方、商品を売る側は、人間の行動習性に基いて、少しでも多く買わせるように様々な工夫をしています。例えば、コンビニの商品配列は、人間が右回り(時計回り)に動く習性をベースに組み立てられているほか、チラシ広告も真っ先に目が行く左上に目玉商品を載せています。買う側は、こうした売る側の工夫をよく知った上で、衝動買いに走らず賢い買い方を考えていく必要があります。
また、クーリングオフについても、正しい理解が必要です。例えば、訪問販売やキャッチセールスによって、自分の意思が固まっていない状況で強引に契約させられた場合にはクーリングオフの対象となりますが、自分からセールスマンを自宅に呼んだ場合や雑誌広告を見て買いに行った場合には対象となりません。また、通信販売も対象ではないので、通販会社毎の独自の返品規約をその都度確認しておく必要があります。
携帯電話についても、使い方に注意が必要です。昔の公衆電話では、10円玉を投入することにより、その場で電話料金を払っていたが、今の携帯電話は、料金をツケで払っているので、実質的には電話会社からお金を借りていることになります。このため、使い過ぎに陥りやすく気を付けなくてはなりません。また、最近では、無料サイトやメールを通じて個人情報を聞き出そうとする手口や、携帯を盗んでそれを取りに来させて恐喝するケースも出て来ています。後者のケースでは、自分が落とした携帯を拾ってくれた善意の人と思いがちですが、悪意の人かも知れないと用心して、自分一人や高校生同士だけで取りに行かず、大人に同行してもらう等の対応が必要です。さらに携帯による勧誘に対して注意すべきこととして、(1)悪い奴ほどよくしゃべる(こちらの言うことを聞かない)、(2)「要らない」とはっきり断る、(3)(怪しげなものは)見ざる、聞かざる、(自分や家族の個人情報は)言わざる、(4)クーリングオフをよく理解して活用する、(5)おかしいと思ったら、すぐ相談する(大人、警察、消費者センターなど)があります。
最後にヤミ金融に対しても用心が必要です。不当なヤミ金融は、正当な借入が難しい、学生やお年寄りを狙っています。特に学生は、卒業が決まり就職が内定した時点で取り立てに来ます。通常、親は内定取り消しを恐れて、子どもの借金を肩代わりして返済するので、回収率が高いと言われています。090金融、チケット金融、リース金融、パチンコ金融など様々な手口がありますが、新たに「押し貸し金融」が出てきています。これは、ATM利用時に出てくる利用明細書を入手して、その口座に当人が気付かないような少額を継続的に振り込んでいきます(押し貸し)。そして、ある日突然、暴利を付けて返済を迫る手口です。こうした手口に引っ掛からないようにするには、ATM利用時に不用意に利用明細書を放置しないほか、家庭に持ち帰った場合でも、そのまま捨てずに、細かく千切る、シュレッダーに掛けるといった配慮が必要です。
公開授業を終えて、生徒会長から「高校生に身近な携帯電話を取り上げて、賢い消費者になるために気を付けなくてはならない点を、分かりやすく教えて頂き、ありがとうございました」との謝辞がありました。
また、保護者からも「これから進学、社会人になる子ども達にとても有意義な講演会でした。大学生の娘にも聞かせたい内容でした」との声が聞かれました。