金融教育公開授業
平成21年度金融教育公開授業(全国リレー講座)
山口県金融広報委員会
山口県立光丘高等学校
金融広報中央委員会
山口の実施報告
「金融教育公開授業 in 光(光丘高校)」(2月5日開催)
山口県立光丘高等学校は、昭和58年に普通科高校として開校し、平成13年4月から総合学科に改編されました。「自主、誠実、活力」を校訓に平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者として、誠実にして豊かな人間性を身につけ、未来の社会に力強く対応できる人間の形成をめざして、1)自主的な学習態度、2)誠実な生活態度、3)活力に満ちた心身の育成に努め、知・徳・体の調和のとれた全人教育に最善を期することを教育基本方針としてします。
2月5日(金)に開催した公開授業では、午前中、高校3年生120名対象に「自立した生活者・社会人になるための金融入門」と題する授業を行い、午後には弁護士の岩重佳治氏による講演があり、全校生徒が参加しました。
▼ 参加者内訳:
1.公開授業
「自立した生活者・社会人になるための金融入門」と題して、高校生として知っておきたい「金融に関する知識」を幅広く取り扱い、社会人としての経済の基礎教養を身につけ、さらに、政治に興味を持ち正しい政策判断が出来るような「市民性教育」にも考慮した授業が行われました。
基本的な内容は、1)会計学的な見地から「簿記の考え方」、「貸借対照表」と「損益計算書」の関連、2)乗数効果を中心としたマクロ経済学の基本、3)金利の仕組み・ポイント制度、4)グローバル経済への対応、の4項目で、知識基盤経済社会に対応できる「発想」のヒントになり、経済的に豊かな生活が送れるような「文化」を学べる授業構成となりました。生徒に対しては、以下の10のテーマ項目が揚げられ、授業が進められました。
1:お金の魔力
2:予算計画は、「量出制入」か「量入制出」のどちらか?
3:簿記の考え方
4:給与所得VS資産所得
5:クルマケーススタディ
6:お金は循環する
7:お金を増やそう 利子とは
8:損益分岐点法による分析
9:ショッピング
10:知識基盤経済社会
授業の冒頭、ほしいものは何か?お金で買えるもの、買えないものは何か?と質問が投げかけられたところ、欲しいものとして「家」という声もあがりました。社会人となって直面すると思われる大きな経済的環境変化を具体的にみてみると、「車」のローン(おそらく社会に出てすぐに一番大きな借金となるであろうローン)、一人暮らしを始めた場合の生活費(就職しても最初の1か月間は給料が出ない)や、結婚費用が想定され、これらについては、生徒も身近に感じられるだけに真剣に受け止めていたようでした。
簿記の考え方については、ワークシートで、ベーカリーショップの経営を例に挙げて計算し、貸借対照表・損益計算書を使って進められました。
授業全体を通して、お金は自己の「教育投資」に向けたいこと、収入にしたがった消費生活を送ること、減価償却の考え方、負債を背負うことの怖さ、資産形成を考えることが重要であることを学びました。
2.講演会
午後からは、「誰もが暮らしやすい世の中に~多重債務問題を題材に~」と題して岩重佳治氏の講演が行われました。
まず、多重債務となる人は、すべてお金にだらしないわけではないこと、借金の原因としては、生活苦や病気・失業などが主な理由になっており、現在の日本のようにセーフティネットが不十分な社会では、借金に頼ろうとする人が後を断たず、消費者金融などの違法な高金利、借り手の返済能力を無視した過剰融資、法を無視した厳しい取り立てのために、返済のために借入れをするようになり、あっという間に借金が雪だるま式にふくらむと解説され、その上で、多重債務者は構造的に生み出された被害者であると指摘しました。岩重氏は、ヤミ金融の脅迫的な取り立てに触れ、実際に子どもの借金について家族(高齢の親)が受けた、金融業者からの取り立て電話をテープで紹介されました。その内容はドラマなどでしか聞いたことがないようなやりとりで、数多くの生徒が聞き入っていました。
岩重氏は、自己責任といわれるが、借金問題など困ったときには、まず、助けてもらうことが必要であり、それは何ら恥ずかしいことではないと指摘し、もし多重債務などの事態に陥った場合にはどこに相談に行ったらよいのかを示されました。
「多重債務」は、生徒たちがあまり普段耳にすることのないような言葉ですが、誰でも起こりうるかもしれないという言葉に、身近で深刻な問題と感じるとともに、陥らないための知識、万が一陥った場合の対処法、そして、自己責任論だけに振り回されずに、お互いに助け合う世の中を作ることが大切だということも知ることのできた講演となりました。
3.プログラム
- 11:00~12:00
- 公開授業「自立した生活者・社会人になるための金融入門」
講師:光丘高校教諭 山口博 - 13:00~13:05
- 開会挨拶 光丘高等学校校長 田中博文
主催者挨拶 山口県金融広報委員会事務局長 田中俊彦 - 13:05~14:30
- 講演「誰もが暮らしやすい世の中に~多重債務問題を題材に~」
講師:岩重佳治氏