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先生のための金融教育セミナー

2013年度 教員のための金融教育セミナー

2.分科会(金融教育の事例紹介とワークショップ)

中学校分科会

進行およびコメント:
横浜国立大学 教育人間科学部 西村 隆男 教授

実践発表およびワークショップ(1)

「地理的・歴史的分野に取り入れた経済・金融教育の実践について」
京都府京都市立伏見中学校 奥村 光太郎 教諭

実践発表

中学校社会科における「経済教育」や「金融教育」は、一般に3年生の公民的分野で行われます。しかし、3年生になっていきなり経済・金融教育を行っても、すぐに身につけさせることは難しい。地理的分野や歴史的分野の教科書を見ると、経済・金融教育に適した題材がたくさんあります。それらを活用し、経済・金融教育を授業に溶け込ませることで、地理的・歴史的分野の授業の中で経済や金融に関する学習の素地を育てることができ、3年生での経済・金融に関わる授業を円滑に進めることができると考えます。

地理的分野で経済や金融に関連する内容を探してみると、たとえば「資源・エネルギー」、「物流」、「生活や産業」といったキーワードが出てきます。また、歴史的分野では、「日明貿易」、「産業の発達」、「オランダ、中国との交易」、「殖産興業」等、経済的な視点を含めて指導することが望ましいキーワードを多く見出すことができます。つまり、地理的分野でも歴史的分野でも、経済的な視点をもって学習を展開することは十分可能なのです。私は、これまで地理的・歴史的分野の学習の中に、経済単元を意識した内容を積極的に導入してきました。それが効果的だったことを、公民的分野の指導に進んだ際に実感することができました。

私自身は、経済・金融教育の要点は「分業と交換」の指導にあると考えています。人類が誕生し、自給自足の経済だったところから、自分にとって不要なものを提供し、その代わりに必要なものを手に入れようとする「分業と交換」という考え方が生まれ、分業が本格化すると、物々交換が活発化し、等価交換のために価値尺度となる「貨幣」が求められるようになってきます。その「分業と交換」を、地理的・歴史的分野の授業でどのように説明してきたかは、金融広報中央委員会ホームページに掲載されている「第9回 金融教育に関する小論文・実践報告コンクール」の私の入賞作品で詳しく紹介しています。

「分業と交換」の観点から悪質商法を考察すれば、悪質商法が大変不合理な仕組みであることが理解できます。お金に関する知識は、生徒の人生を左右します。お金に関することで人生がひっくり返ってしまうこともあります。確かに、需要供給曲線も金利計算も教えないといけません。しかしそれだけでなく、私は、実際に見聞きしたお金にまつわる悲劇を生徒に伝えるようにしています。自分たちの生活を守るためにどうしたらいいのかを考えさせ、お金のセンスを身につけさせることが大事だと思っています。うまい話に飛びつかない、おかしいと思ったら詳しく調べてみよう、という気持ちを生徒に持たせることができれば大成功だと思います。

ワークショップ

ワークショップでは、地理、歴史、公民の教科書を参照しながら、「私ならこんな指導がしたい」という意見を出し合い、各グループで一つの指導案を作り上げました。ある班では「戦争の収支決算を考える」というテーマで、戦争を経済的な面から考えさせる指導案を作成しました。また、別の班では「500円のチョコレートから見る世界経済」というテーマで、世界とのつながりやフェアトレードについて学び、グローバルな視点を持つことを目指す指導案を作成しました。

コメント

西村先生より、参加者の皆さんがワークショップで指導案について積極的に意見を出し合ってまとめ、他のグループの発表もメモされていたのが印象的で、2学期、3学期の授業のヒントになることがたくさんあったのではないかとのコメントを頂きました。また、金融には、家庭科の生活設計のような側面や、金利計算など数学的な側面もあることから、本セミナーのような機会や学校内での意見交換を通じて、他の教科ではどのように金融教育に取り組んでいるのかを知り、生徒が関心を持ちやすい、より豊かな授業の展開を目指して頂きたいと述べられました。

本実践事例は、第9回 金融教育に関する小論文・実践報告コンクール(2012年)優秀賞作品として当ホームページに掲載されています。
第9回 金融教育に関する小論文・実践報告コンクール(2012年)

中学校分科会の模様(1)

実践発表およびワークショップ(2)

「悪質商法からお年寄りを守ろう!」
福岡県大牟田市教育委員会 学校教育課 杉野 浩二 指導主事

実践発表

前任校(大牟田市立白光中学校)では、総合的な学習の時間におけるESD(持続発展教育)の取り組みとして、「持続可能な将来と社会の変革のために求められる価値観、行動、およびライフスタイルを学び、各主体が持続可能な社会づくりに参加できる生徒を育成する」ことを目標に掲げ、金融教育、福祉教育を中心に取り組んでいます。

一つ目の「修学旅行で大牟田の特産品を販売しよう」という実践では、大牟田市の産業振興課、農林水産課、商業観光課の方に学校にお越し頂き、大牟田市が抱える課題や市の特産品についてお話を伺った後、修学旅行先の大阪で大牟田市の特産品を販売するために、商品知識を高め、市場調査を実施しました。調査の結果、大牟田らしさが出ているものが、大阪の人たちにとって貴重なのだということを、子どもたちは認識しました。ポスターの作成や仕入れの交渉等も自分たちで行いました。実際に大阪市内で販売をする場面では、値段交渉で大阪のパワーを感じながら、子どもたちはコミュニケーション能力も磨きました。

この実践の後、子どもたちから大牟田の観光活性化のための提言として、地元のオリジナル商品をつくろうという意見が出て、次の「大牟田の新しい特産品をつくろう」という実践につながりました。商工会議所や菓子職人の方のサポートも受けながら、かつて炭鉱で栄えた大牟田の新しい特産品として子どもたちが当初提案したのは石炭ケーキでしたが、ケーキは日持ちしないので夏場の販売に適さないことに気づき、石炭クッキーに切り替えました。ポスターや包装紙を自分たちで制作し、商店街でクッキーを販売しました。東日本大震災の発生と時期が重なったこともあり、販売で得た収益金は、宮城県気仙沼市に寄付しました。

最後にご紹介するのは「悪質商法からお年寄りを守ろう!」という実践です。悪質商法の被害を受けやすいお年寄りを守るための活動を通して、地域の共同体の構成員としての自覚を持たせることを目指し、自分たちでロールプレイのシナリオを考えさせ、高齢者の方々に観て頂く実践を行いました。大牟田市の市民生活課の方から悪質商法の手口や対処法についてお話を伺い、自分たちでも情報収集や分析を行いました。ロールプレイは、民生委員の方にも観て頂き、高齢者の皆さんに伝わりやすい劇にするためのアドバイスを頂いたことで、子どもたちは、自分たちでは気づかなかった悪質商法の盲点にも気づいたようです。また、民生委員の方の助言をもとに、高齢者の方にも分かりやすい、悪質商法に遭わないための標語づくりも行いました。

地域社会が抱える問題を解決することを通して社会に参画するという明確なゴールを設定したことから、子どもたちは学習の成就感や有用感を得たようです。また、地域の課題を教材化したため、地域との関わりが深まり、開かれた学校づくりがさらに進んだと思っています。

ワークショップ

「ワークショップでは、悪質商法の分析と被害に遭わないための標語づくりを体験しました。悪質商法の分析は、ブレインライティングの手法を用い、ブレインライティングシートを使いながら進めました。グループごとに「ソーシャルネットワークでのショッピングトラブル」や「送りつけ商法」などのテーマを決め、何が原因でそうしたトラブルが起きてしまうのか、どのように避けたらよいのかといった点について出された意見に対し、別の人がその分析を発展させたり独自の考えを加えたりする作業を、短時間で集中しながら進めていきました。
悪質商法の被害に遭わないための標語づくりでは、すぐにでも役立ちそうな標語が多く完成しました。

コメント

西村先生は、今、考える力、問題解決力や読解力、表現力などが非常に重視されてきており、金融の問題では杉野先生の発表にもあった批判的思考を持って生徒自身が考え、選択していくことが大切であると述べられました。

また、今後、電子マネー化がさらに進んで、お金の感覚が失われてしまう可能性もある中で、例えば最低賃金がいくらで、それを得るためにはどのくらいの労働が必要なのか、そのお金でどれだけのものが買えるのかといったことを生徒たちに考えさせることが重要であり、これからの世代が金融に関するしっかりした感覚を持つことができるようご参加の先生方にご尽力頂きたいと述べられました。

中学校分科会の模様(2)

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