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2016年度 先生のための金融教育セミナー

【高等学校・大学向け】

3.分科会(金融教育の事例紹介とワークショップ)/高等学校分科会2

進行・コメント:
前実践女子大学 高橋 ヨシ子 教授

実践発表およびワークショップ(1)

「ライフプランを立ててみよう~自立した社会人になるために~」
東京都立忍岡高等学校 高橋 靖子 主幹教諭

実践発表

本校は普通科と、生活科学科という家庭科の2つの専門学科を有する学校で、4単位で家庭総合を行っています。本日は、その中での金融教育の実践事例として、ライフコースの設計について報告します。

『金融教育プログラム』に記載されている指導計画例は本校で実施している実践内容です。この中の生活設計の学習内容についてお話します。本校では、実際に教室で行うときは、電卓を使って生徒にじっくりと考えさせて進めるときもあれば、時間がないときはパソコンを使ってエクセルで作った計算式を使った授業をやっています。今日はパソコンに実際に授業で使うソフトを入れてありますので、グループ毎に後で試してみてください。

自分の夢や目標を実現するためには必ずお金が関わってきます。このライフコース設計の狙いは、一生涯の家計の収支を把握することによって長期的な資金管理能力を養うとともに、将来の生活設計、経済設計を通して自分の生き方を考えさせることにあり、この演習を通して、将来の夢を実現するためには早くから生活設計、経済設計を立てることが大切であるということを生徒に気づかせることにあります。こうした設計をする前に、まず自分のライフプランを考えさせます。それに従って、統計資料を基に経済設計を立てさせます。また、実収入から税金、社会保険料として18%を差し引いたものを可処分所得として計算しています。

誰もが人生において支出する項目が消費支出、住宅関係費用、老後資金です。結婚費用、子どもの養育費、その他ライフイベントにかかる支出については、統計資料等を参考に計算させています。生涯支出の合計を計算して、生涯収入の合計から生涯支出を引いて幾ら財産が残るか、もし赤字になった場合にはどのように収入を増やせば良いか、どこで支出を減らしていけるか、何を優先して考えたらいいのか、また万が一の支出にも備えるということの必要性にも気づかせるような授業をしています。演習の注意点としては、切りのいい単位で金額を書くように、桁数をしっかり確認するように指導しています。

最後にワークシートを完成させて、生徒に感想をまとめさせました。生徒の感想を読むと、人生の厳しさや親の苦労を感じることができ、自分自身がきちんと経済的にお金をやりくりしながら生きていかなければいけないということを実感したとの声が多く、狙い通りの授業になったと思っています。

ワークショップ

「ライフプランを立てて見よう」のテーマのもとに、参加した先生方にライフコースの設計をしていただきました。各班に、どういうライフスタイルでこれからの人生を生きていくかということを皆で相談して、それに沿って収入・支出計画を立てました。その後、計算した結果、残る財産があるかないか、どういった課題、改善点があるのか、といったことを発表していただきました。全員にとって身近な問題でもあるため、活発な意見交換・質疑応答が展開されました。中には、世帯主一人の収入だけで、専業主婦として生活していくのは厳しい現実を実感されたとの発表もありました。自分にとって一番良い人生設計はどういうものか、家族皆が幸せになる生活設計はどのようなものかということを考えさせられるワークショップとなりました。

コメント

高橋ヨシ子先生より、次のようなコメントがありました。

家庭科で実践するライフプランに関する授業には、経済、住居、高齢者や保育といった領域があり、こうした学習を通じて、生徒一人一人が生き方について考えることにもつながる重要な内容といえます。高橋先生からご報告いただいたこの授業は、経済計画、ライフプランを考えることを通して、2単位なり4単位の家庭科の学習の総合的なまとめとして位置づけることができ、さらには家庭と社会のつながりを考えさせることのできるダイナミックな授業だと思います。ダイナミックな授業であるがゆえ、まとめるのが大変なところを、高橋先生は丁寧なワークシートを作成し、比較的短時間で展開できるように工夫されていました。本日出された資料は、どれをとってもすばらしく、教材として価値あるものと考えます。

高等学校分科会2の模様(1)

実践発表およびワークショップ(2)

「社会保障制度を踏まえて生涯にわたる生活資源マネジメントについて考えてみよう~『人生すごろく』から始まる生活設計の授業~」
千葉県立流山おおたかの森高等学校 仲田 郁子 教諭

実践発表

私はここ数年、家庭科教育における生活設計をテーマに研究しております。私が執筆したのは、『金融教育プログラム』の221頁から228頁です。ここに書ききれなかった部分や私のこだわっている思いについて、話をします。私は、大学は家政学部被服学科出身で、日常生活を科学的に見つめるということを自分のテーマとしてこの世界に飛び込みました。自分の高校時代には生活設計について習った記憶はなく、教員になって初めて生活設計を家庭科で勉強するようになりました。試行錯誤を繰り返しながら実践を積み重ねてきているのが現状です。

生活設計の構成には、大きく分けて将来どういう生活を送りたいかを考えるライフデザインの領域、金銭やネットワークなどの生活資源を確認して必要な行動を考える生活資源とその管理の領域、リスクを確認し対策をとる生活リスクとその管理の領域の3つがあり、それぞれの領域は、密接に関係していると考えて研究を進めてきました。

今日は主に前任校での実践を中心に報告します。前任校は、流山市にある全日制普通科の高校で、家庭科では積極的に体験的な学習を取り入れながら授業を進めてきました。この間、「人生すごろく」を生徒に作らせました。「人生すごろく」の条件として、将来発生する可能性のあるリスクをすごろくのストーリーの中に3つ以上入れ、そのリスクに対する解決策、準備、対策を入れる、という2点が今回の作業の特徴でした。すごろくが完成したら、ワークシートに従い、まとめの作業に入ります。まず、生徒の作品を皆で時間を決めて眺め、コメントをしていきます。そこで、人生にはいろいろなリスクがあることを気づかせ、その対策について考えさせました。その際、私の方から、お金に関することだけでなく、社会保障制度の視点も示しました。社会保障制度にはどのようなものがあるのか、国の制度としてどのような準備がされているのかという確認がポイントでした。

生徒がすごろくの中でどのような生き方を描いたかを考えさせることにより、将来の人生のイメージが確認できたと思います。この後、家計シミュレーションを行い、指定された収入や条件の中でやりくりをするという課題に基づき議論を進めました。

今後の課題は、保険についての指導法の検討とローンの取り上げ方についての工夫です。ローンのメリット、デメリットを考えて、ライフデザインとあわせて考えさせることが大切です。例えば教育ローンなどは1つの教材にできると思います。現在の欲求を実現するのか、諦めるのか、安全をとるのか、リスクを回避するのか、リスクを背負っても希望を優先したいのかなど、様々なことを考えた上で本人が意思決定していくことが大切です。

ワークショップ

人生にはどんなリスクがあるのか、そしてどのような対策を立てればよいかと考えさせる授業の一つとして、「教育ローン」をテーマに選定しました。各グループに、金融教育の観点から、教育ローンを題材にするとしたら、どのような授業をしてみたいかというテーマで、皆でブレーンストーミングしながら、付箋紙を使って意見を集約し、その結果を発表していただきました。中には、「今、社会問題になっている奨学金について授業で取り上げる際には、事前に先生が相当勉強しておかなければいけない」とか、「ローンを授業で教えるときには、家庭環境が複雑な生徒もいるので人権問題にも配慮する必要がある」といった意見も出されました。

コメント

高橋ヨシ子先生から、次のようなコメントがありました。

私も今日は良い勉強をさせていただきました。仲田先生からは、「人生すごろく」を通して、人生にはどんなリスクがあるのか、リスクに対してどのような対策を立てればよいかを生徒に考えさせる授業の実践報告をいただきました。このリスク管理を考えさせるということは、自分の将来の生活とともに、今の親の生活と親の抱えているリスクの管理について考えさせることにもつながり、生活の多面的な要素について生徒に気づかせながら授業を進めることができるすばらしい授業だと思いました。

また、家計管理の授業では、自分はどんなライフコースを選ぶのか、そこにはどんな特徴やリスクがあるのかを考えさせることができ、作業を通しながら楽しく考えさせるところに大きな特色があります。こうした生き方を考える授業では、生徒の考え方を生かしながら、生活経験の豊かな先生も自ら自己開示し、人にはいろいろな生き方や考え方があることを紹介しつつ、それを認めあうことが大切なように思います。こうした土台があって初めてアクティブ・ラーニングが成立するのではないでしょうか。これからの先生方の取り組みに期待します。

高等学校分科会2の模様(2)

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