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金融に関する消費者教育の推進に当たっての指針(2002)

3.金融に関する消費者教育の現状

(1)わが国における金融に関する消費者教育の現状

イ.消費者の知識・理解度

わが国の消費者は、金融・経済・社会をめぐる環境が急速に変化している中で、金融に関して合理的な判断を下すための知識や理解度は決して十分とはいえない。多くの人々は、預貯金についてある程度の知識を有しているが、金融・経済のしくみについてはよく理解していない。また、預金保険制度やペイオフなどの金融に関する重要な制度についても正確に理解しているとはいえない。また、年金や保険、介護保険などの制度については十分な情報を得ることができないまま、将来への漠然たる不安感を抱いているケースが多い。さらに、多重債務からの救済のスキームや金融商品取引にまつわる悪質商法への対処方法についても、必要な知識が身に付いていれば深刻な事態を未然に回避しえたであろうケースも頻繁に見受けられるのが実情である。

この点について、第1回「金融に関する消費者アンケート」(平成13年)でも、「株式・債券といった証券投資」、「外貨預金等の外貨建て商品の為替リスク等、投資に伴う各種リスク」、「預金保険制度や金融商品販売法といった利用者や消費者を保護する仕組」、「金融商品」について「ほとんど知識がないと思う」という回答が過半数に上った。また、別の質問では、「分散投資(ポートフォリオ)」、「確定拠出年金(日本版401k)」について「聞いたことがない」との回答が50%を上回り、「金融商品販売法」についても「聞いたことがない」(44.7%)、「聞いたことはあるが、内容は知らない」(41.3%)との回答がいずれも4割を上回った。

また、「団体・有識者アンケート」でも、消費者の金融に関する知識、理解の程度に関して、「あまりないと思う」とする回答が69.0%と、7割近くに達した。

ロ.教育の体制

わが国では、消費者教育機関、金融業界の団体等が金融に関する消費者教育に取り組んでおり、また、当委員会も都道府県金融広報委員会および貯蓄生活設計推進員(後者は平成14年度より金融広報アドバイザーまたは金融学習グループリーダーに改称予定)等とのネットワークを生かして活動を展開している。しかしながら現時点では、金融に関する消費者教育に取り組む様々な関係機関・団体の個々の活動が、消費者に十分浸透しておらず、また、提供する情報等の内容も消費者のニーズや知識レベルに必ずしも十分適合したものとなっていないと考えられるなど、整合的・体系的に行われているとは言い難い状況にある。学校教育の現場でも、金融に関して消費者として必要な知識を身に付け、理解を深めるための本格的な学習の機会が設けられるケースは少ないように思われる。

第1回「金融に関する消費者アンケート」(平成13年)でも、「現在、さまざまな団体や企業が提供している金融に関する情報について、あなたはどのような感想をお持ちですか」という質問に対し、「あまり目にしたことはない」とする回答が最も多く(38.6%)、「どちらかと言うと、内容が難しく、分かりにくい」(29.3%)、「金融機関に都合の良いことが多く書かれている感じがする」(27.3%)といった回答がこれに続いた。また、学校における金融に関する消費者教育(以下、学校における金融教育)についても、小・中・高等学校時代を通じて「ほとんど受けていないと思う」とする回答が圧倒的に多く(68.5%)、学校における金融教育を受けた記憶がある人に対する問いでは、「ほとんど役立っていない」という回答が過半数を占めた(56.3%)。なお、本アンケートの結果については、平成元年版学習指導要領ではじめて消費者教育が明示的に取り上げられたとの事情にも留意する必要があるものと思われる。

以下では、社会教育、学校教育、家庭教育の実態をより詳しくみてみたい。

(イ)社会教育(行政機関、民間団体等による教育、別紙4参照)

わが国では、当委員会のほか金融業界団体(全国銀行協会、日本証券業協会、投資信託協会等)、業界の広報センター(証券広報センター、生命保険文化センター等)、消費者教育団体(消費者教育支援センター等)をはじめとする数多くの民間団体の他、消費者行政機関(国民生活センター、各地の消費生活センター等)が金融に関する消費者教育に取り組んでいる。活動内容は、刊行物(パンフレット、冊子)・ビデオの作成・配付、講師派遣、教員セミナー、作文コンクール、通信講座、インターネットを通じた情報提供、苦情相談等、多岐に亘る。しかしながら、現時点では、消費者から、こうした活動を通じて提供されている情報に対し、(1)見聞きしたことがない、(2)入手しても分かりにくい、(3)自分の業界の利害を反映しているような気がするというアンケート回答が寄せられているのも事実である(下記別紙1参照)。

(ロ)学校教育

わが国の学校教育の基本的な枠組みを規定する学習指導要領の内容をみると、小学校では「生活」、「社会」、「家庭」、「道徳」、「総合的な学習の時間」、「特別活動」、中学校では「社会科(公民的分野)」、「技術・家庭(家庭分野)」、「道徳」、「総合的な学習の時間」、「特別活動」、高等学校では、「公民(現代社会/政治・経済)」、「家庭」、「総合的な学習の時間」、「特別活動」で、金融に関して消費者として必要な知識を身に付け、理解を深める機会を設けることができるようになっている(該当箇所は下記別紙5参照)。しかしながら、具体的にどのような授業を行うのかという点については、学習指導要領およびこれを基準として学校長が定める各校の教育課程の下で、各学校または担当教師に委ねられており、現実に金融に関して消費者として必要な知識を身に付け、理解を深めるための学習が行われるケースは少ないように思われる。こうした状況は、たとえば、消費者の権利・義務や消費者としての工夫に関する箇所で金融商品・サービスを取り上げることが明確に示されていないことなどによるものと考えることもできる。

当委員会が全都道府県において委嘱(各都道府県1~2校ずつ)している金銭教育研究校では、2年間の研究委嘱期間に亘り、健全な金銭観や基礎的な金融経済知識等を子どもたちに教える「金銭教育」を授業等のなかで実践・研究しているが、これらは限定された事例であるものと思われる。

What's 金銭教育?

(別紙5)学習指導要領における金融に関する消費者教育関連箇所(PDF 50KB)

(ハ)家庭教育

健全な金銭観や生活に密着した金融関連知識、あるいは生活設計の考え方については、本来ある程度は家庭教育で身に付けることが望ましいと考えることもできる。しかしながら、これまで学校教育においてこうした内容の学習機会が少なかったことや、時代の変化が激しいことから、家庭内で教育に当たるべき親の側にも、十分な知識や理解があるとは言い難いのが実情である。

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