個票データを用いた研究成果
金融不安・低金利と通貨需要「家計の金融資産に関する世論調査」を用いた分析
研究者:塩路悦朗(横浜国立大学)、藤木裕(日本銀行金融研究所)
*カッコ内の所属は、研究成果完成当時
完成時期:平成17年6月
本稿では、2001-03年の「家計の金融資産に関する世論調査」個票データを用いて、家計の資産需要に関する分析を行った。本稿では、まず、資産需要の「組み合わせの選択」(ある金融商品を保有するか、しないか)と「金額の選択」(ある金融商品を保有する場合、どのくらい保有するか)の両面を分析する。次に、個々の家計の資産需要に関する分析結果を用いて、経済的条件の変化が個々の家計の資産需要に及ぼす影響を試算し、これを集計して、マクロ経済に与えるインパクトを分析する。主な分析結果は以下のとおり。
(1)「組み合わせの選択」の変動を考慮に入れることは定量的に重要である。時には、この要因による資産需要の変動が「金額の選択」における変動を圧倒することすらある。
(2)低金利に対する反応として、あるいは貯蓄の安全性を高めるための対応策として家計の流動性に対する需要が高まったときには、現金以外の各種資産に対する需要も変動する。そして、どの資産がどのように反応するかは、現金需要の増加が低金利に対する反応なのか、それとも貯蓄の安全性を高めるための対応策なのかによって異なる。
(3)金融教育の充実は家計の資産選択行動を大きく変化させる可能性を持っている。我々の分析結果によれば、金融に関する知識が増すにつれて家計はリスクのある資産や流動性の低い資産に対する需要を高める傾向を持つ。よって、金融教育のいっそうの充実は、より多くの家計のより広範囲な金融市場への参加を促す役割を果たしうる。
分析の詳細は日本銀行金融研究所ホームページから入手できます。
日本銀行金融研究所 https://www.imes.boj.or.jp/
「家計の金融資産に関する世論調査」を用いた分析(PDF 790KB)(日本銀行金融研究所へリンク)