個票データを用いた研究成果
借入れ制約と消費行動
研究者:若林緑(大阪府立大学経済学部)、チャールズ・ユウジ・ホリオカ(大阪大学社会経済研究所)
*カッコ内の所属は、研究成果完成当時
完成時期:平成16年12月
本論文では、貯蓄広報中央委員会「貯蓄と消費に関する世論調査 平成6年」を用いて、どのような人々が借入れ制約に直面しているのか、人々の消費行動は、借入れ制約に直面するか否かによって異なるのか、所得の変化と消費の変化の関係は借入れ制約によって説明できるのかについて分析を行う。
本論文では、ローン審査に不満がある世帯や金融資産の月収に占める割合が2倍未満の世帯は、クレジット会社や貸金業者からの借入金(特にフリーローン)残高が高く、他にも借入れ制約に直面する世帯の特徴を多く示した。一方、クレジットカードを利用していない世帯は、借入れ制約に直面する世帯の特徴をそれほど示さなかったが、クレジット会社や貸金業者からの借入金残高が低いのに対し、親戚・知人からの借入金残高が高いことがわかった。さらに、これらの世帯の所得の変化が消費の変化に影響を与えるかどうかについて分析を行ったところ、ローン審査に不満を持つ世帯とクレジットカードを保有しない世帯の所得の変化は消費の変化に影響を与えていることがわかり、それ以外の世帯では所得の変化は消費の変化に影響を与えないという結果を得た。このことから、借入れ制約に直面する世帯と直面しない世帯の消費行動が異なり、人々の消費行動は借入れ制約によってある程度説明可能であるということが言える。