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高校生小論文コンクール

「金融と経済の明日」第2回高校生小論文コンクール(平成16年)

キミのホンネで日本経済を変えてみないか?

「私の考える介護保険―その現状と解決策―」

特選

熊本県 八代白百合学園高等学校 3年 加藤 美鈴

今、私たちは、高齢化という、今すぐ対応に迫られる課題に直面している。高齢化が進むと、どのような状況に陥るのか。

まず、高齢者が増加するということは、それだけ介護をする人が必要になるということだ。現状からいうと、介護する人のほとんどが女性であり、その中でも一番多いのは、嫁が介護をするケースである。

高齢者は、年齢を重ねるにつれて、全体の能力も低下するため、どうしても手を取るようになる。その上、人間を相手にしているから、介護には休みがなく、もちろん、無償である。どんなに頑張っても誰からも評価されず、「やって当たり前」という感じなのだ。

このような状況下であるから、「介護離婚」が年々増加してきているのは、言うまでもない。夫は妻にとって、介護の一番の理解者であるべきなのに、妻任せであることが多い。やはり、夫も積極的に介護に参加すべきなのである。

また、高齢者に多数見られる病気に、痴呆症がある。痴呆症は、脳に障害が生じるため、物忘れが激しいという特徴がある。これを、大きく分けると、アルツハイマー型痴呆と脳血管性痴呆に分類される。

アルツハイマー型痴呆の原因は不明で、脳全体が萎縮してしまう病気だ。一方、脳血管性痴呆の場合、脳の血管が詰まる脳梗塞になったり、脳出血になることで、痴呆症が発症する。まず、脳梗塞を予防するためには、塩分を摂取し過ぎず、栄養をしっかり取ることである。そして、ストレスをためないようにし、適度な運動を心掛けなければならない。

何も、痴呆症になるのは、本人や家族の責任ではない。自分ではどうしようもないことなのだ。これからは痴呆症になることを恐れるのではなく、「痴呆症になっても安心」といえる社会に変えていくことが重要なのではないだろうか。

とはいっても、高齢者が痴呆症にかかると、介護する者にとって相当ハードであり、当然、365日休みなし、24時間付き添われなければならないケースも出てくる。このような状況が続くと、精神的にまいって共倒れにもなりかねない。そこから生じてしまうのが、虐待である。

虐待には、身体的虐待と心理的虐待があり、前者は身体に暴力を加えて身体を傷つけ、後者は言葉の暴力で心を傷つけてしまうことだ。

このように、家族という特定の人だけに負担が大きかった介護を、相互扶助の精神で、社会全体で見ようと導入されたのが「介護保険」である。「介護保険」という制度が導入されたおかげで、利用する人々は増加の一途をたどることになった。

しかし、この制度にも運用する中で様々な課題が浮上してきた。まず第一に、「介護保険」自体が、それぞれの地方自治体独自で運営するものだということだ。そのため、介護サービスの給付水準と、住民が負担する保険料の水準が自治体ごとに異なる。

大都市は、介護保険料を負担する人も多く、黒字傾向である。その反面、小さな市町村は人口も少ないし、負担者も少ない。その上、高齢化が進み、保険利用者も多く、赤字傾向なのである。このように、介護の財源を確保するのに、自治体によってかなり温度差があるのだ。

当然、財源確保の難しい自治体は保険料を引き上げざるをえない。すると、自己負担が大幅にアップするわけだから、低所得者にとってはかなりの負担増である。そして、必要なサービスさえも受けられなくなるという事態も生じるのである。

だから、サービスが受けられず、老人ホームを退去させられてしまう高齢者も、少なくない。行き場を失った高齢者を「介護保険難民」と呼ぶという。だから、歳入の少ない地方の市町村では、介護サービスの計画を立てても、計画通りのサービスを提供できないし、利用者の方もサービスを利用できない。

同じ国でありながら、一方ではサービスを受けられ、一方ではサービスを受けたくても受けられない。自治体でサービスと保険料に格差があるということが問題なのではないだろうか。このような問題が浮上してきている以上、抜本的対策を講じなければならない。やはり、介護保険は必要な人全てが、介護サービスを、権利として利用できるものにしていかなければならないのだ。

そこで、現状での問題点を踏まえて、介護保険は来年、制度全般が見直されることになった。この一環として、介護サービス価格(介護報酬)を市町村が独自に決定できる仕組みの導入を検討する予定である。この仕組みが導入されれば、地域の実情に見合うサービスを提供でき、保険給付の膨張にも歯止めがかけられる。

ここでは、特別養護老人ホームなどの「施設」と訪問介護などの「在宅」に二分していたサービスを、近隣の高齢者が通う通所介護の「地域密着型」と、複数の市町村に事業者の活動がまたがる「広域型」に再編するというものだ。

「地域密着型」は、国がサービスの上限価格だけを設定し、市町村がその範囲内で自由に価格を決められるようにする。これで、入浴介護やリハビリなどのサービスを手掛ける事業者を、地域のニーズに応じて、迅速に指定できるようになる。

また、厚生労働省も、グループホームの設置を、市区町村がコントロールできるよう権限を移す方針を固めた。この新しい制度は、2006年度からの実施予定である。

だが、こういう取り組みがなされる一方で、当初私がよいと考えた保険制度は、サービスの料金の一部を利用者が負担することもなく、全て保険料と税金で賄うというものだった。現在の保険料は3分の1は65歳以上の人が、3分の2は40歳から64歳までの人が負担している。

そこで、20歳以上の人全員が保険料を払うようにしたら、負担も少なくてすむ。保険料をなるべく安くし、効率的なサービスを多くできるようにするのだ。

そして、今のサービスは老化や病気が原因で、介護が必要になった時だけしか受けられない。例えば、交通事故や事故などで身体に障害が生じた場合、保険制度を受けるのは不可能なのだ。

ちなみに、ドイツでは20歳以上の人全員が保険料を払い、対象者は全年齢に及ぶ。これで、あるダウン症の少年も、介護保険からサービスを受けられるようになったという。このように、日本でもドイツのように介護保険を、もっと柔軟に広範囲の人を対象にできたら、どんなによいだろう。

中には、障害者とは、はっきりと区別した方がよいという意見もあるが、病気によって障害が出る場合もあるので、線引きをするのが難しい。それに、日本は中国のように人口が多いわけでもないし、これからは人口減も予想されている。

だから、保険料と税金だけで賄うにしても限度があるだろう。かといって、財源を確保するために、今以上に消費税を上げるにしても、少子高齢化が進む現代では、高齢者は余生のことを考え、積極的に物を消費するという行動は取りにくい。

つまり、所得税はもちろんのこと、消費税でも給付負担に見合う公費が確保できるとは言えないのである。できるだけ安い保険料で、全ての人が納得できる介護体制にするためには、どうすればよいのだろうか。

要は、支出をなるだけ出さないようにしながら、できるだけ安い保険料で多くの人が納得できる介護体制を確保することである。いくら、よいサービスを提供しても、制度が維持できなくてはなんにもならない。

そこで、改めて私が考えたのは、公的な福祉制度のすき間を埋める地域社会の何らかの活動である。お互いを支えながら、困った時に助け合えるグループのような関係(相互扶助団体)を作っていくのである。

言うなれば、シルバー人材センターのような組織の、介護部門を特化したものだ。これは、退職した人や、時間に余裕があって、社会貢献をしたい人にお手伝いを頂くわけである。

このような助け合いの活動をする人たちには無償ではなく、幾らかの手当てを出すことが望ましい。ボランティアや善意ばかりに頼っていては活動は継続しない。だから、何よりもお金を支払うことが前提である。しかし、それは全部というわけでなく、その一部は自分が介護が必要になった時にサービスでもらえるという仕組みにするのである。そうすることで、給付費を安く抑えることも可能になる。

また、同様に給付費を抑えるためには、なるだけ寝たきりの高齢者を増やさないような取り組みが必要である。

リハビリをしながら、軽度の要介護認定者が少しでも状況が改善し、再び自立した状態に戻れるようにすることが大切なのだ。これは、施設利用者数が介護保険利用者数の4分の1なのに、給付額が半分以上を占め、施設利用者が多い程、給付額が増える現状を見てのものである。

少しでも費用を抑えるためには、今以上に施設サービスより、在宅サービスの方の割合を増やしていかなければならないのだ。

ひどい痴呆症や重い障害による寝たきりでない限り、施設に入所しなくてもいいように、介護予防的なサービスも同時に考えていかなければならない対策の一つではないだろうか。ただ、在宅介護を増やし、これまで以上に在宅福祉を充実させていくには、介護をする家族にもかなりの責任と負担が生じる。

やはり、家族も周囲と協力しながら、介護をする心構えと自覚をより明確に持つことが必要だろう。

2000年、介護保険が施行されて、様々な問題が指摘されてきた。なかなか解決が困難な問題もあるが、これからは家族・行政・ボランティアなどが連携をとり、地域社会で支えるコミュニティケアにするにはどうすればよいか、介護保険を存続させるにはどうしたらよいか、私達一人ひとりが考えていかなければならないだろう。

そうすることが、何より、よりよい日本社会を形成していくことにつながるからである。

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