ディスクロージャー誌の見方・銀行編
かしこく読むためのマメ知識
9.ディスクロージャーを巡る最近の動き
(1)金融商品に対する時価会計の導入
貸借対照表はある一定時点の財産の状況を示すものです。これまで有価証券などの金融商品は、原則として「取得原価(それを取得した時の価格)」で貸借対照表に計上していました。
しかし、価格変動の激しい資産、たとえば10年前に購入した株式が当時の価格のままで貸借対照表に表示されていたとすると、現在の資産の状態を適正に表しているとはいえません。
このため、平成12年度から、決算時点の資産の状況を適正に表すために「金融商品会計」という制度が導入されることになりました。金融商品会計では、有価証券などの金融商品の貸借対照表への計上価額を基本的に「時価」に切り替え、同時に、評価差額(取得原価と時価との差額)を損益計算書や貸借対照表に反映させる「時価会計」を適用しています。
この金融商品会計の導入により、いわゆる「持ち合い株式」などについては、毎期毎に時価で貸借対照表に計上したうえ、評価差額を貸借対照表の純資産の部に計上することになったため(全部資本直入法の場合)、例えば持ち合い株式の当期末の時価が帳簿価額よりも下落している場合には、純資産の部の金額は、評価損(当期末の時価と帳簿価額の差額)の60%(注)相当額減少するということになりました。
注:税効果会計による(法定実効税率は40%と仮定)。
また、平成13年度からは、保有している有価証券の時価等が著しく(50%以上)下落し、かつ回復の可能性があるとは認められない場合には、その帳簿上の「取得原価」を決算時点の時価等に強制的に切下げ、切下げた分の額を損益計算書で損失として処理するという有価証券の「減損処理」が行われることになりました。
こうした金融商品会計の導入により、株式等の有価証券の価格の動向が、銀行の資産や収益の状況に影響を与えることになりました。
(2)四半期情報開示への取り組み
金融商品取引法により、四半期情報開示が法定化され、平成20年度から、具体的には有価証券報告書提出会社のうち上場企業等については、四半期毎に連結財務諸表などの企業集団に関する情報を開示することが義務づけられています。なお、銀行は、特定事業会社として、第2四半期報告書では中間(連結)財務諸表を開示することとされています。