金融教育フェスタ
金融教育フェスティバル in the Galaxy
6F 大人の宇宙おかね教室 知るぽると金融教育セミナー
景気の見方
講師:日本銀行
情報サービス局 企画役 福原 敏恭 氏
「金は天下の回り物」というように、お金の動きと経済や景気の動きは密接に関連しています。そこで、ここでは「景気はなぜ変動するのだろうか」、「景気の現状を正しく理解するためのポイントとは何か」といった問題について、お話ししてみたいと思います。
景気とは、最も単純にいえば、「人々の営み」であり、また、国語辞書を引くと、「売買や取引などに表れる経済活動の状況」と説明されています。ここでいう「経済活動」とは、「人間の生活に必要な財貨、サービスを生産・分配・消費する活動、また、それを通じて形成される社会関係」のことです。
このように景気とは、一国における人々の経済活動そのものであり、これを一つの数字で示すことには難しい面もありますが、現在最も一般的に使われている指標は、国内総生産(GDP)です。名目GDPとは、(1)財・サービスの生産、(2)企業の従業員の給与所得等の発生・分配、(3)家計・企業等の支出行動、という経済活動の循環の規模を金額で示したものです。ちなみに、日本の2007年度の名目GDPは515兆円で、国民一人当たりの生産額に換算すると年間403万円となります。また、「経済成長率」という言葉を耳にすることがあると思いますが、これは、実質GDPの変化率のことです。「実質GDP」とは、名目GDPから物価変動の影響を除去した経済指標です。
このほか、景気の動向を知るためには、海外でも「タンカン」で通ずる、日本銀行の短期経済観測調査(短観)が便利です。とくに、1万社に及ぶ調査先企業が業況全般について判断した回答結果をもとに、「業況が良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を差し引いた「業況判断DI」は、景気の動きを良く追っていると定評があります。
次に、景気の動向を見る際のチェックポイントですが、それにはまず、経済活動を担っている主役が、企業と家計であることを念頭におく必要があります。また、今日のようなグローバル化の時代では、企業活動は輸出動向に影響されやすいため、海外経済の動向も重要です。このことを踏まえ、皆様が経済指標をみたり、景気の話を読んだりする際には、次に掲げる三つのチェックポイントを活用してみたら如何でしょうか。すなわち、(1)海外経済は順調か、(2)企業等が余分な設備・人員・借金を抱えていないか、(3)企業の収益や家計の所得は増えているか、の三点です。
先行きの日本経済を展望すると、人口減少・高齢化の進展に伴う生産年齢人口(15~64歳の人口)の減少など経済成長にとって厳しい条件も存在します。しかし、そうした状況においても、景気を支えるのは、国民一人一人の「元気」と「勇気」と「やる気」であることを忘れてはいけません。今こそ失敗を恐れず、新しいことに挑戦し続けていく努力が求められているのではないでしょうか。