金融教育フェスタ
金融教育フェスティバル2009
教員向けセミナー 実践報告<1>
吉田 博利氏 (長崎県立中五島高等学校 教諭)
「学校ぐるみ・島ぐるみの金融教育~研究指定と模擬株式会社の取組み」
島外の銀行本店見学や外部講師による公開授業などで、学校・地域・生徒が成長
本校は昭和40年(1965年)に長崎県立上五島高等学校の分校として設立され、同48年に中五島高等学校として独立しました。現在は、生徒数約180人、1学年に商業科、普通科の各1クラスがあります。
本校が金融教育研究校の委嘱を受けたのは、夏休みの課題とした「金融と経済の明日」小論文コンクールで、ある生徒が日本銀行総裁賞をいただいたのがきっかけです。研究校の委嘱を受け、私が担当になり、前年度から学校の中で模擬株式会社を運営していた商業科の助けを借りながら研究活動に取り組み始めました。前年度まで研究校の委嘱を受けていた長崎県立佐世保西高校にも資料を送っていただき参考にしました。
まず1年目ですが、日銀長崎支店長をはじめとする外部講師の方に講演をお願いするとともに、市中銀行本店の見学や模擬株式会社、公開授業などに取り組みました。日銀長崎支店長の講演は全校生徒が聞くとともに、地域の方にも開放しました。また、生徒にとって島外に出るのはワクワクすることで、佐世保市内にある親和銀行本店の見学は貴重な経験となりました。
模擬株式会社は実社会で通用する能力を育てるという目的で商業科の教諭がスタートさせた授業で、4月に創立総会を開き、3学期の1月に決算を行います。総会では生徒たちが事業計画を説明し、教員や生徒が出資して株主になり、12月のクリスマス商戦時に地元の商店街の空き店舗を借りて店をオープンし、地元の人に商品を買ってもらいました。
この模擬株式会社の株主総会を公開授業で行うに当たり、地元の多くの人に見ていただきたいと考え、本日の講演会の講師でもある住田裕子先生をお招きし、新聞の折り込み広告や島内放送でも宣伝し、町のホールが満席になるほどの大盛況となりました。
2年目は外部の講師によるキャリア教育や日銀長崎支店、長崎市内にある十八銀行本店の見学、公開授業などを行いました。公開授業では生徒が発表するとともに、ダニエル・カールさん(翻訳家、タレント、山形弁研究家)に来ていただくなど、積極的に取り組み、地域の方からは「このような授業を受ける機会を子どもに与えて下さり、ありがたい」と評価していただきました。
その翌年も金融教育実践校の委嘱を受け、講演会の開催や、模擬株式会社の取り組みを継続して行いました。この3年間の取り組みで、長崎県で初めてとなる金融知識普及功績者としての団体表彰も受けました。金融教育を通して学校も地域も生徒も成長でき、教員の一体感も得られたと思っています。
教員向けセミナー 実践報告<2>
高橋 幸信氏 (佐賀県唐津市立大良小学校 教頭)
「くふうしよう!かしこい生活」
普段の授業に金銭・金融教育の視点を入れ、勤労の尊さも学ぶ
平成18年度に佐賀県玄海町にある仮屋小学校に赴任した直後、校長先生から全教職員に向けて「金銭教育研究校の委嘱を受けたのでこれを校内研究で行います」と話がありました。先生方の中には「国語の読解力が低いので、それを校内研究にと思っていたのに、なぜ…」との思いもあったようですが、私は「一事が万事、金銭教育で頑張れば、国語や算数の学力向上にもつながる」と先生方に話し、まず児童を取り巻く環境、実態の把握から始めました。
具体的には10項目のアンケートを実施した結果、落とし物があっても一生懸命に探さない、持ち物に名前を書かない、家庭で決まったお金をもらわないで、必要な時に買ってもらうといった実態が浮かび上がってきました。これらのことと合わせて、見通しを立て計画的にお金を使おうとする態度や、小遣い帳をつける習慣などが不足していることもわかりました。
そこで、外部から講師の先生をお呼びして、研究テーマと目標を考え、従来からある校内研究のテーマに加えて、「まわりの人、物を大切にする」をサブテーマにしました。目標については3つの視点から設けることとし、「勤労の尊さ」を全校の目標にする一方、あと2つの目標は1~6年生の発達段階に合わせて作り、実践していきました。
具体的なカリキュラムは、佐賀県金融広報委員会の金融広報アドバイザーの方の協力のもと、各学年とも普段の授業に金銭・金融教育の視点を入れていくというスタンスで作りました。金銭教育は家庭で行う部分もありますので、学校便りや学級便りで保護者に向けて広報するとともに、保護者を招いての講演会も行いました。
一例として5年生の実践を紹介しますと、5年生には家庭科に「くふうしよう!かしこい生活」という単元がありますので、ここに金銭教育の視点を入れ、「お金を計画的に使うことの大切さを理解する」を目標にして授業を行いました。授業では、お小遣いゲームや小遣い帳をつけるシミュレーションを1時間行った後、実際に家庭で1カ月1,500円のお小遣いをもらって、小遣い帳をきちんとつけ、それを授業に持ってきて、振り返りを行いました。1,500円は、1度にもらう、3回に分けて500円ずつもらう、5回に分けて300円ずつもらう、の3つの中から選ばせました。授業の後には、無駄遣いをしない、本当に必要なものだけ買う、先のことを考えて使うなど、短い言葉ですが、子どもたちの実感のこもった声が聞かれました。
このほか1、2年生は芋を栽培して料理をし、バザーで売り、物がお金に変わる過程を勉強したり、仮屋湾の鯛の養殖場を見学して、自分のお父さんも寒い中で働いていることを感じさせるなど、学校を挙げて金銭教育に取り組みました。課題としては、各家庭の事情がそれぞれ違いますので、ここをどう克服して授業をしていくかが、教師の力量の問われるところかと思います。