金融教育フェスタ
金融教育フェスティバル2010
暮らしに役立つ講演会
講師 : 細野 真宏 氏 (Hosono’s Super School代表)
「経済のニュースの読み解き方がわかる話」
「数学的思考力」でニュースに接すると経済が見えてくる!
日本の高齢化率は、1990年の段階では先進国中最下位でしたが2010年には1位です。つまり、わずかこの20年間に、これまでの歴史上で前例の無いスピードで高齢化が進んでいったのです。経済協力開発機構(OECD)内の比較では、日本は高齢者が世界一多いのに、社会保障費を含む国の支出総額は(対GDP比で)最下位に近く、公務員の人件費すら一番少ないという状況です。ただ、国の借金はダントツのワースト1なので、財政支出を切り詰めることは必要ですが、すでに日本は「小さすぎる政府」である現状を知っていれば、「事業仕分け」であまり無駄を見つけられなかったのは当たり前だったわけです。一方で、国の収入についても、税金と(医療や年金などの)保険料を合わせた国民負担率(対GDP比)は、韓国、米国に次いで低い方から3番目です。つまり、一般的なイメージとは逆で、日本はすでに「ものすごく小さな政府」になっていて、「自分のことは自分でやろう」という「自己責任型社会」になっているのです。
一時期、報じられていた年金破綻は、簡単には起こり得ません。日本の年金制度は、他の先進国と同様に現役世代が引退世代を支える「仕送り方式」がとられていて、年金のベースとなる国民年金の半分は税金から支払われる仕組みにもなっているからです。また、かつての「現役世代が多かった時代」に保険料を蓄えてきた「年金積立金」もあります。少子高齢化が進むと現役の負担が際限なく上がっていくように思われがちですが、こうした仕組みによって、実は現役の保険料は2017年で上昇がストップするよう上限が決められているのです。
高齢化が進む日本では、社会保障にもっとお金が回る仕組みを作らないと安心して生活できません。25年度の国の負担は、06年度比で介護2.6倍、医療1.7倍、年金1.4倍になると予測されています。今の社会保障の水準を維持するためには、25年までに消費税を最低でも10%(年金に1%、医療・介護に4%)にする必要があるとのシミュレーションが、私も参加した社会保障国民会議で出ました。そして、消費税の使途については、政権交代前の09年3月に、消費税の全税収を年金、医療、介護の社会保障給付、少子化対策費用に充てるとした「改正所得税法」が成立しています。つまり、消費税はすでに「目的税化」されていて、今後はすべて私たちの社会保障だけに充てられるので、「負担」ばかりに目を向けるのではなく、「負担」と「給付」の両面から冷静に判断することが重要になります。例えば消費税を1%上げることで、医療費の自己負担を65歳以上の人は1割に、現役世代は2割で済ませることも可能になるわけです。
私は、一つひとつの事柄を順を追って考え続ける論理的思考と、情報の本質を見抜く思考力を併せて「数学的思考力」と呼んでいます。この数学的思考力を意識してニュースに接するようにしていけば、ニュースの分かり方が飛躍的に変わってきて、経済について深く見えるようになってくると思います。
プロフィール
新潟県出身。大学在学中に予備校の教壇に立ち、大学受験用の『数学が本当によくわかるシリーズ」を出版し200万部を超える大ベストセラーとなる。『経済のニュースがよくわかる本』は経済本で「日本初」の「ミリオンセラー」を記録。「分かりにくい」とされる経済や資産運用に関することを段階を追って体系的に分かりやすく解説している。総理直轄の「社会保障国民会議」にて金融・経済教育の深刻さを委員として認識し書き上げた『「未納が増えると年金が破綻する」って誰が言った?~世界一わかりやすい経済の本~』は、Amazon.co.jp2009年新書部門年間ベストセラー1位を記録。最新刊は、経済と政治の両面から解説した『最新の経済と政治のニュースが世界一わかる本!』。