金融教育フェスタ
金融教育フェスティバル2010
教員向けセミナー 実践報告<1>
講師 : 塚本 保夫 氏(米子松蔭高等学校 教諭)
「平成20年・21年の金融教育研究校としての活動
~活きた金融教育を目指して・地域と共に~」
地域に発信した授業内容
当校は商業科をもつ学校なので、元々、小切手や約束手形づくりなどの金融教育をしてきました。平成20・21年度には、金融教育研究校として活動しました。米子市では近年、若年層の自己破産が問題化していたので、本校加盟の「まちづくり連絡会」(米子市、商工会連合会、米子信用金庫など)と協力して研究校としての活動に取り組みました。特徴は、授業内容を地域に情報発信したことです。
21年度の金融教育は、30人を対象に24時間実施。目標は「金融や信用のしくみと地域経済、進路について学習しよう」です。校外の諸機関と連携して授業を進める、という「地域連携型、体験重視」の授業にこだわり、活きた最新の知識が生徒へじかに届くように配慮しました。
第1単元「現代の金融トラブルに学ぶ」に始まり、第2単元の「地域と経済について」では、なるべく生徒を校外に連れ出しました。第3単元は「お金の運用」で株式・債券投資などを、第4単元は「進路」について勉強し、第5単元で「まとめ」をしました。外部の先生には「生徒にまず考えさせ、発言させて」とお願いしました。
全体としてはまとまりのある授業ができたのではと思っています。生徒も、授業自体については全員が「大変良かった」と答えてくれました。成果は、いろいろな専門家の方に教えていただいたので「実学としての知識が身についた」、自分たちで考えさせ、自分たちの言葉でしゃべらせることを第一に考えたので、「企画力、発表力がついた」、などです。
企画から実施までの時間が少し短く、計画自体の詰めが甘くなったこと、職業選択と結びつける部分が少なかったこと、生徒に考えさせる時間が少なかったこと、などが反省点です。
参加機関、個人の協力者から、「こんな授業があったら参加したかった」などとご好評をいただきました。一方、21年度については「詰め込み過ぎで目標がぼやけていなかったか」とのご指摘もありました。
今後は、「特別授業」という形で、アントレプレナーシップ(起業家精神)を含む金融教育を実施する予定です。
教員向けセミナー 実践報告<2>
講師 : 今岡 正治 氏(島根県奥出雲町立仁多中学校 教諭)
「地域の特色を生かした金融教育への試み
~多教科・多領域での授業実践から~」
知識・心情・体験の相互リンク
金融教育研究校の委嘱を受けて2年目です。受けた際、改まった特別なことをするのはやめると決めました。「今までの研究の方向性の中に、金融教育を取り入れたい」との思いがありました。
「わかる、楽しい、生徒主体」の授業の構想への転換、を重点目標とし、知識・理解を高めていこうとしています。その下に、金融教育の目標を置いています。3本柱は、1)行事を通して勤労意欲を育て、意義を考えさせる、2)金融にかかわる社会のしくみについて理解し、グループ活動やロールプレイなどを通して定着を図る、3)他者への感謝やものを大切にする心を育み、それらを表現し、実践できるようにさせる、です。
プログラムの一つは、地元企業と一緒に実践した特産ブルーベリーの加工、値付け、PR、販売です。企業の方から、もうけがなくては駄目だということ、適正な利益と適正な配分などについて話を聞きました。売るために、ジャムなどにすることで値段を上げました。購買意欲を高めるためのチラシを作り、スーパーで売りました。
「総合的な学習の時間」の中で、「就職するまでいくらかかるだろう」というのを調べさせました。結果を見て、「大人になるまでにこんなにお金がかかると知って驚いた。親に感謝しなくちゃいけない。一生懸命勉強しないといけないなと思った」と言った子が多いことがわかりました。
道徳では、金融広報中央委員会の「おかねの作文コンクール」の特選作品「祖母の通知表」の後半の一部を空白にし、作者の思いを考えさせ、自分の思いを記入させるオリジナル教材を作りました。いつもは質素なおばあちゃんが、「必要な時には、お金をぽんと使いなさい!」と言う場面で、「活きたお金」という言葉が出てきます。その意味などについて子供たちが考え、自身を振り返る時間になったのではないかと思っています。
金融教育で感じたのは、知識と心情と体験が相互にリンクしなければいけないということです。今後、教材開発につなげたいと考えています。