金融教育公開授業
2011年度 金融教育公開授業(全国リレー講座)
山梨県金融広報委員会
昭和町立常永小学校
金融広報中央委員会
山梨の実施報告
「金融教育公開授業 in 山梨(常永小学校)」(11月11日開催)
昭和町立常永小学校は、平成14年に開校した新しい学校です。「あ」かるく、「な」かよく、「た」のしい学校、「あなた」の学校をスローガンに子どもたち一人ひとりの個性を尊重した教育を行っています。
同校では、平成22・23年度に山梨県金融広報委員会から金銭教育研究校の委嘱を受け、「『確かな学力』を身に付けた子どもの育成~ものやお金の大切さ、人との関わりの大切さ、勤労を尊ぶ考え方を身に付ける金銭教育を通して~」をテーマとして研究に取り組んでいます。
11月11日(金)に、同校教諭による全学年の公開授業や研究発表を行いました。その後、金融機関勤務を経て地元で農業法人を起業・経営している田中進氏による講演会を開催し、5・6年生の児童、保護者および教育関係者が参加しました。
▼ 参加者内訳:
1.公開授業
当日行われた授業のうち、一部を紹介します。
(1)「見直そう わたしたちの買い物」(3年生・社会科)
事前のアンケートで、クラスの児童の約6割がお小遣いをもらい、約2割が欲しいものを余り我慢できずに購入していること等が分かっています。こうした実態を踏まえ、本単元は、売り方の工夫を探る意欲付け、消費生活を通した他地域との関わり等への気付き、上手な買い物(値段や品質、安全や環境面の配慮、計画性など)ができる意識の引き上げ、をねらいとして設定しました。スーパーマーケットで見学したことをもとに、公開授業では、子どもたちが飲み物の購入時に気をつけたことを発表し合い、注意すると良いポイントを整理しました。級友の発表から気付いた点は、次回以降の自分の買い物について考え、適切に行おうとする力の習得・向上に繋げていけそうです。
(2)「自分にできること」(4年生・道徳)
物がすぐそこにある「便利な生活」に慣れてしまっている子どもたちには、ややもするとこの便利な生活が当たり前のものになっています。そこで、子どもたちが「物の大切さ・お金の大切さ」についてしっかりと考える力を持ち、高めていくことを目標とし、ゴミ問題を題材としました。公開授業では、以前に清掃センターで見学したことを思い出しながら、子どもたちがゴミ処理の実態や落し物をみて感じること・考えたことを積極的に発表し合い、自分たちにできることを考えてみました。こうした中で3R(リデュース、リユース、リサイクル)のほか、「物を大切に使う」ことがゴミ削減に役立つという意識を深めていきました。
2.研究発表
公開授業の後、「『確かな学力』を身に付けた子どもの育成~ものやお金の大切さ、人との関わりの大切さ、勤労を尊ぶ考え方を身に付ける金銭教育を通して~」をテーマに、平成22年度から取組んだ“常永小いきかたプラン”活動の概要が発表されました。
同小学校では、金銭教育の究極の目標を「社会のために自立的に生きる力を育む」ことと位置付け、「お金やものを大切にする」だけでなく、「人との関わりを大切にする」、「勤労を尊ぶ考え方を身に付ける」ことを研究の狙いとし、ゴールは子どもたちに「感謝と自立を育む」ことと掲げました。そして、全13学級が様々な社会見学のほか、リサイクル活動、子どもたちも弁当作りに参加する「弁当の日」の実施、縦割り班(異年齢集団)での校内清掃やあいさつ運動、人を元気にする“ふんわり言葉”を大切にする集会等の具体的な取組み事例を発表しました。こうした取組みを通じ、子どもたちは「お金やものの大切さ」等の意識を高めながら、同校がゴールとした「感謝と自立」の心を深められたとの報告がありました。
3.講演会
研究発表の後、田中進氏による講演を「働く楽しさを伝えたい~自立した大人になるために」と題して、同小学校校長によるインタビュー形式で行いました。
まず、「夢や目標は、どうすれば達成できますか?」との質問に対して、田中氏は「『心の底から夢中になる』をひとつのキーワードに取り組んでいます。世の中で一流と言われる方々がそうであるように心から大好きなことに思い切り夢中になることは重要なことと考えていて、そうした仕事に出逢えたことに感謝しながら毎日、取組んでいます」と答えられました。また、「夢中になるとはどういうことなのか?」といった更なる質問には、「一緒に働く仲間は、大人になってから本当に自分のやりたいことに気付き、たくさんの障害を乗り越えて全国から集まってきて、農業をしているわけです。毎日、会社が始まる1時間前の朝5時から自主的に勉強しているのも珍しいことではありません。なぜなら、目の前の畑に行ったら、『葉が黄色くなってきたな』、『どうしてこうなったんだろう?』、『こんな時、どうしたらいいのだろう』など、色々なことに気づき、そしてもっと美味しい野菜を作ってたくさんの人たちに喜んでもらいたくて、夢中になって勉強しているためです。皆さんにもいろいろな夢があると思いますが、本当に大変なことを乗り越えてやり抜きたいのか、実現できるまで努力できるのかどうか、そこが『単なる願望』と『心の底からやりたいこと』の違いになるのではないかと感じています」と述べられました。
そして「子どもたちに、やって欲しいことはありますか?」との問いかけに、「社員には、『やろうと決めたことをとことんやり抜き、突き抜けてほしい』と言っています。なぜなら、そんな経験をした人は、必ず何か自分が心から燃え上がるようなものに出逢った時に、本当に大きな成果に繋げられるほどに夢中になれる力をつけていると思うからです。また、何かをやり抜くうえでは、その人の根っこにある心がどれだけ強い想いで支えられているかが本当に大事だと感じています。きっと、こうした点は、子どもたちにも同じだろうと思います」と話され、最後にアメリカの著述家ウィリアム・A・ウォードの言葉「凡庸な教師は指示をする。良い教師は説明をする。優れた教師は範となる。偉大な教師は内なる心に火をつける」という言葉を紹介され、話を締めくくりました。
4.プログラム
- 13:20~14:05
- 公開授業
(1)「あるひのきょうしつ」(1年1組・道徳)
(2)「あきとともだち」(1年2組・生活)
(3)「いっしょがいいね」(2年1組・生活)
(4)「かかりのしごとはいい気もち」(2年2組・道徳)
(5)「ぼくのたからもの」(3年1組・道徳)
(6)「見直そう わたしたちの買い物」(3年2組・社会)
(7)「健康なくらしとまちづくり ごみはどこへ」(4年1組・社会)
(8)「自分にできること」(4年2組・道徳)
(9)「工業生産を支える人々~工業の今と未来~」(5年1組・社会)
(10)「つるぎのまい」(5年2組・道徳)
(11)「未来への架け橋~世界に目を向けよう~」(6年1組・総合)
(12)「平和な大地を目指して」(6年2組・道徳)
(13)「わたしのおみせ」(なかよし・生活総合)
授業者:昭和町立常永小学校教諭 福田聖子、古屋聖子、横森仁美、藤巻ます美、平賀宗次、越水千尋、志村まみ、森澤りえ、飯田真純、雨宮宏幸、青木英明、時田和彦、片田摩須子 - 14:30~14:45
- 開会挨拶
昭和町立常永小学校校長 太田學
昭和町教育委員会教育委員長 清水正夫
山梨県金融広報委員会事務局長 谷原章文 - 14:45~15:00
- 研究発表「『確かな学力』を身に付けた子どもの育成~ものやお金の大切さ、人との関わりの大切さ、勤労を尊ぶ考え方を身に付ける金銭教育を通して~」
発表者:昭和町立常永小学校教諭 時田和彦
指導講評 山梨県教育庁義務教育課指導主事 小田切武 - 15:00~16:00
- 講演「働く楽しさを伝えたい~自立した大人になるために」
講師:田中進氏 - 16:00~16:10
- 閉会挨拶 昭和町立常永小学校教頭 中田慶一