金融教育公開授業
2016年度 金融教育公開授業
三重県金融広報委員会
伊賀市立新居小学校
金融広報中央委員会
三重の実施報告
「金融教育公開授業 in 三重(伊賀)(新居小学校)」(10月7日開催)
伊賀市立新居小学校は、伊賀市の北部に位置し、明治9年の創立から今年で141年になる伝統ある学校です。児童数は152名、全校で9学級(うち3学級は特別支援学級)の小学校です。
三重県金融広報委員会から平成28・29年度の金融教育研究校の委嘱を受け、「聴き合い、学び合い、仲間とともに高まり合う子ども」を研究主題とし、「人やもの、お金を大切にする子ども」の育成をめざしてきました。お金は、算数科の「数と計算」「数量関係」と深くかかわること、日常生活と切り離せないことから、特に算数科で金融教育とのかかわりを意識した実践を積み重ねたほか、総合的な学習や道徳などの授業の中でも実践を行ってきました。
10月7日(金)に金融教育公開授業を開催し、研究概要報告、全学年を対象とする公開授業、住田裕子氏の講演会を行いました。講演会の後、研究協議も実施しました。
▼ 参加者内訳:
1.研究概要報告
2年間の研究について、次のような報告がありました。
新居小学校では、「『学習したことが生活に活かせた』と実感させることで、主体的に学ぼうとする態度を培うことができる」と考え、算数科の授業を窓口として、次の3つのことを重点として金融教育に取り組んできました。
第一に、課題解決への意欲をもつこと。そのため、課題を生活に結びついたものとし、課題の提示の仕方も工夫してきました。第二に、課題解決に向けた互いの考えを共有すること。そのため、考えの根拠を説明させる問い返しを行ってきました。第三は、学習内容を自らの言葉で「再現」すること。そのため、課題解決で用いられた算数的な考えを活かして、新たな課題を解いてみることを行ってきました。
2年間の成果は4つです。第一に、生活に結びついた課題としたことで、子どもたちの学習意欲を引き出すことができました。第二に、お金に置き換えて考えさせたことで、数や計算の仕組みが理解しやすくなりました。第三に、経験に基づいて考えさせたことで、発展させた課題でも、その内容を活かして解くことができるようになりました。第四に、学習したことを学校生活や家庭生活で活かそうとする意識が見られるようになりました。
2.公開授業
(1)「はじめてのおつかい」
1年生は、11円から18円までのお金を持って「おつかい」に出かけ、2つの品物を買ってお金を使い切る、という活動を行いました。繰り上がりのあるたし算を正しく計算することや、持っていく金額によって買える品物に違いがあることがわかることをねらいとしました。全員が2つの品物の代金を正しく計算し、お金を使うことができました。
(2)「夢の300円」
2年生は、お店で300円までで3種類の品物を買う疑似体験を行いました。たし算やひき算の筆算の学習です。お店には7種類のお菓子があり、どの種類の品物を選べば300円で買えるかを一人ひとりが考えました。その後、300円で買えるお菓子の組み合わせを発表し、最後に自分が買ったお菓子の合計金額を求めました。
(3)「計算の相性」
3年生は、「鉛筆5本とキャップ5こを買います。何円払いますか」との課題に取り組みました。鉛筆の代金とキャップの代金をそれぞれ求めてから合計する方法と、鉛筆(72円)とキャップ(28円)を組み合わせて100円にしてから計算する方法を比べました。72×5+28×5=(72+28)×5であることを理解し、見方によって計算がしやすくなることに気づき、身近な買い物の場面でも活かせるようになることをねらいとしました。
(4)「割引の損得~どちらを選ぶ?~」
4年生は、いつもは画用紙1枚を同じ12円で売っている2つの店が、今日はA店は代金から10円引き、B店は6枚目からは10円にしてくれる場合、「どのような場合にどちらの店の方が安く買えるか」を計算して求めてみました。日常の買い物場面にも活かすことができるようになることをねらいとしました。
(5)「今日の夕食は焼き肉!!」
5年生は、重さ(正味量)と価格が異なる3種類の牛肉の中で、「どの牛肉が一番安いか」を考えました。一人ひとりが同じ重さ(100gなど)にした場合の値段を比べるなどして考えを発表しました。“単位量あたりの大きさ(価格)”の考え方が、身近な生活に活かせることに気づきました。
(6)「かしこい選択」
6年生は、15人のおこづかいの額を書いたカードを見ながら、「800円のおこづかいは、高いのか、安いのか」を考えました。15人の平均額(900円)という1つの観点だけから判断するのではなく、一番高い子の金額(3000円)を除いた平均額を出してみたり(750円)、15人の金額を数直線上に表してみたりして(15人の真ん中は700円。500円の子が最も多い)、「本当にそうなのか」を考え、自分の意見と根拠を発表しました。
(7)「店をひらこう」
たんぽぽ学級では、これまでリサイクルの学習として廃油で石けんを作ったり、牛乳パックから紙すきをしてハガキを作ったりしてきました。公開授業では、お店を開き、石鹸やハガキを販売する活動を行いました。ブースに分かれて、お客さんに廃油石けんづくりや紙すきの仕方を説明するなどコミュニケーションをとりながら接客し、販売しました。レジでも、お客さんが出したお金を見て、表や暗算でおつりを計算して正しく渡せるようにしました。最後に、今日の活動についてできたことや今後がんばりたいことを振り返り、楽しかったことなど感想を述べ合いました。
3.講演会
公開授業の後、住田裕子氏から「社会で活躍するために~子どもたちへのメッセージ~」と題する講演が行われました。
講演の前半は、5・6年生の子どもたちに対して、「ルールはみんなが楽しく生きるためにある。相手の気持ちがわかる大人になってほしい。失敗を経験して、よい大人になってほしい」というメッセージを、具体例を挙げてわかりやすく解説しながら伝えてくださいました。
講義の後半では、参観者や保護者、地域の方に対して、振り込め詐欺等に遭わないようにするための方法について、具体的な事例を挙げながらわかりやすく説明してくださいました。
受講者からは、「金融教育は、社会のルールを守り、みんなが楽しく生きるために必要な教育であると強く思いました」、「お金のこと、インターネットのこと、世の中の仕組みなど、子どもがいろいろと興味関心をもつ頃なので、このようにしっかり教えてもらえる場が必要だと思いました」といった感想が寄せられました。
4.研究協議
講演会の後、低学年、中学年とたんぽぽ、高学年に分かれて、公開授業をもとにした研究協議を行いました。課題の提示の仕方、算数的活動と図や表を結びつけることの大切さ、学習の確かめなどについて、実際の授業での子どもの姿や指導者の発問などの具体例を挙げながら、活発な議論が行われました。参加者からは、「児童が生き生きと活動していたのが印象的でした。思考する時間が楽しい時間になっているのが、授業として好感がもてました」「子どもたちの学び合う姿に感心しました」といった感想が寄せられました。
5.プログラム
- 12:45~13:05
- 開会行事
開会挨拶
三重県金融広報委員会事務局長 田間文朗
研究概要報告
「聴き合い、学び合い、仲間とともに高まり合う子ども~人やもの、お金を大切にする子ども~」
発表者:伊賀市立新居小学校教諭 - 13:15~14:00
- 公開授業
(1)「はじめてのおつかい」(1年生 算数科)
(2)「夢の300円」(2年生 算数科)
(3)「計算の相性」(3年生 算数科)
(4)「割引の損得~どちらを選ぶ?~」(4年生 算数科)
(5)「今日の夕食は焼き肉!!」(5年生 算数科)
(6)「かしこい選択」(6年生 算数科)
(7)「店をひらこう」(たんぽぽ学級 生活単元学習) - 14:10~15:50
- 講演「社会で活躍するために~子どもたちへのメッセージ~」
講師:住田裕子氏 - 16:00~17:00
- 研究協議
低学年、中学年・たんぽぽ、高学年別研究協議 - 17:00~17:05
- 閉会挨拶
伊賀市立新居小学校校長 濱田嘉昭