個票データを用いた研究成果
マル優制度と家計の資産選択
研究者:関田静香(大阪大学大学院経済学研究科 政策・ビジネス専攻博士後期課程1年)
*カッコ内の所属は、研究成果完成当時
完成時期:平成16年12月
これまで税制が家計の資産選択行動に与える影響については、多くの理論的論文が存在しているが、日本における実証研究は十分とは言い難い。特にマル優制度が日本の家計の資産選択行動に与える影響についての実証分析は少なく、部分的な分析に留まっている。
本稿では1988年「貯蓄に関する世論調査」を用いて、1988年のマル優制度改正が家計の金融資産選択に与える影響を検証している。このデータはマル優制度に関する質問項目を多く含んでおり、このデータを用いてマル優制度の影響を分析したのは本稿が初めてである。1988年のマル優制度改正が、家計の資産選択行動に与えた影響をクロスセクションデータを用いて分析したところ、1988年のマル優制度改正は、9つの金融資産のうち、預貯金、財形、その他の金融資産の保有確率を下げたが、預貯金の場合にのみ予想通りの結果となった。また、需要に関しては、どの金融資産も影響を受けなかったという結果を得た。