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高校生小論文コンクール

「金融と経済の明日」第2回高校生小論文コンクール(平成16年)

キミのホンネで日本経済を変えてみないか?

「未来の高齢社会に向けて」

特選・全国公民科社会科教育研究会会長賞

京都府 京都教育大学附属高等学校 1年  丸山 綾子

日本で高齢化問題が取りざたされるようになって久しい。高齢者人口は増加の一途をたどっており、その速さは世界でも抜きん出ている。そして高齢化が、老人の介護や扶養の問題、医療費や年金負担、住宅や生活環境、雇用問題など、社会生活の各分野において、大きな影響を与えている。これらのことは周知の事実であると言えるだろう。

そんな中で、私が気にかかっていることは、昨今の社会全体における、老人に対する意識だ。先に述べたような現状を改善するために、さまざまな取り組みがなされているのは知っている。

しかし、根底には、老人が増えたことをあまり良く思わない風潮から、老人を社会的弱者であり、若者に負担をかけさせる厄介な存在とみている姿勢が少なからずあるように、生活の中で感じるのは気のせいでは無いと思う。

私は今まで、このような考え方に共感が出来ないできた。なぜなら私が思い描く老人のイメージは、「弱者」とは大きく違うからだ。そしてそのイメージが作られたのには、私の祖母が大きく影響していると思われる。

去年亡くなった祖母は、本当にいつも堂々として見えた。自己をしっかり持っていて、弱気になることなどなく、自らの能力を生かして、老いてなお、精力的に活動していた。私にとっては、一緒にいると安心できて、大好きな自慢の祖母だった。彼女からは、それまでの人生で培ってきた人としての重みを感じられていたと思う。

そんな人が最も身近な「老人」だったから、私にとっての老人とは、長い人生で色々な経験を積んできた大先輩で、畏敬の対象とされるべき人なのだ。弱くて、保護されているといった印象はあまりなじみが無い。

もちろん身内の一人の老人だけで、全ての老人を判断できはしない。しかし私がここで言いたいのは、同じ社会を作る人々の中で、より年を取っているということは、それだけで何らかの価値を生むに違いないということ。

時間をかけて初めて本当に理解できることはきっとたくさんある。だから、例え衰えた面があっても、どの老人にも尊敬しえる所があるのではないか、老人福祉においてそれを忘れないことが大切ではないかと思う。

ここまで考えて、私は現在の老人福祉を批判する前にその実態をよく知らないと気付いた。そこでいくつか資料をあたり、調べてみた中で興味深かったことを次に挙げる。

まず行政の取り組みについて見ると、老人福祉法やゴールドプランでその枠組を決められた高齢者への福祉が行われている。その内容は在宅福祉と施設福祉に大きく分けられる。また要介護者に適用される公的介護保険は、施行されてしばらく経つ。またもちろん、老齢年金の給付による生活の救済が行われている。以上が大まかなサービス体系と言える。

この年金だが、現在70代以上が受け取る額は低い水準にとどまっており、今後の高齢者の受給額は標準で一人11万程度だそうだ。

では次に、実際に老人がどんな生活を送っているか平均してみると、まず、老人の生活環境については、世帯構造や家族関係の変化で、家族だけに補助を頼むという形態が崩れてきているようだ。よって、外部からの手助けが一層必要となるだろう。

また、実際の生活ぶりでは、二つのことが気になった。

一つは、ここ40年ほどの間に、65歳以上の労働力率は男女ともかなり低下しているのに対し、自己評価による自らの健康度は健康だと答える割合が9割ほどであること。

二つめは、多くの老人が日常生活のかなりの時間を、テレビ・雑誌など娯楽に費やしていて、社会奉仕を行っているのは全体の5パーセント以下と非常に少ない反面、地域社会への参加については半数以上が意欲を見せるということだ。

以上のことから私は、政府などの機関により、さまざまな老人福祉活動が行われているが、それは必ずしも老人がいきいきと暮らせる社会づくりに十分でなく、老いに対して不安やマイナスイメージを抱かせる要素が解決されていない側面もあると考えた。

そこで、どのようにそうした現状と向き合い、これからの高齢社会を設計するかについて具体案を私なりに提示しようと思う。

先に述べたように、老人は若年者にとって尊敬すべき対象だ。そして私は、老人特有の英知、洞察力、深い精神性、そうしたものは、もっと社会に反映され生かされてしかるべきだと思う。だから老人福祉においては、個人を尊重し、ポジティブな生き方ができる様に手助けする姿勢が必要になってくる。

この手助けには二つの要素がある。一つは、老人の弱さを支え、介護するということ、どれ程年の功といっても、老いることはもちろん多くの衰えと共にある。職業を失うことでの喪失感、記憶能力の低下、精神的な不安が身体的故障になりやすいこと、感覚に対して反応が遅くなることなど、老いる過程では数々の不安材料が現れる。

ここで私達のすべきは、一緒に不安と向き合い、その解決や対処を考え、老人が快適な生活を送るための補助をすることだ。また、老人の置かれる環境を、不安を打ち明けやすく理解ある状態にすることや、老人を無能と見なして強圧的にならず、寝たきりの方や痴呆の方などに対しても、個人の人格を尊重した対処を心がけることも、その際大切なことだ。

二つめの要素は、老人が実際に活躍できる場所を多く提供し、社会に老人の活動を浸透させることだ。調べる中で、老人には、ややもすれば無為な時間を過ごし、社会参加の意欲はあるがなかなか実行できていない傾向も見受けられた。

老人がもっと人生を楽しみやすいように、例えば高齢者雇用の推進、老々介護の導入を積極的に行う、若い世代や地域との交流を深める機会をどんどん設けるといったことが考えられる。

今述べたどちらにおいても、欠かせないのは地域ぐるみの協力だ。老人がその家族やデイサービス施設のみの交流でなく、地域のさまざまな人達と触れ合い、自分の言葉を語り伝えられる時、老人としての誇り、人生の終盤を充実して送る喜びが得られるのではないかと期待する。

こうした社会を作るには、私達一人一人が親しみと尊敬をもって老人に向き合うことがもちろん必要だ。政府が行うべきは、その意識付けを率先して行っていくことだ。

充実した福祉を目指すため、高福祉、高負担の社会になっていくだろう。税制を見直し、適切な税金を適切に使われるようにすることも求められる。

「老人が経済崩壊を招く」といった声も聞かれる。果たして本当にそうだろうか。老人への見方を変え、老人がより輝けるよう力を尽くせば、老人だけでなく、私たちにとっても住みよい高齢社会が誕生してくれるはずだと、私は願っている。

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