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高校生小論文コンクール

「金融と経済の明日」第3回高校生小論文コンクール(平成17年)

考えようよ、日本の経済。

「マネーの発生、クレジット・ローンに至る現在と将来」

秀作

兵庫県 賢明女子学院高等学校 1年 黒田彩加

人間は社会的動物である。そして他の生命が生存と繁殖のみを目的に存在しているのとは違い、人間はそれだけではなく、個人ならびに集団の欲求の実現を目的としている。

社会的動物である人間は当初は原始共産制ともいうべき社会を築いていたと考えられる。血縁関係にある小集団が狩猟、採取を行い、共同で生活をしていたと推察する。

そういう動物的な狩猟、採取社会が数百万年という気が遠くなるほどの期間続いた。やがていくつもの小集団の間で必要なものをお互いに交換するようになった。物々交換であり、ある意味では経済の誕生である。

やがて集団の規模は拡大していき、交換する物量は大きくなっていったと考えられる。物と物を交換するには不都合な状況になった。狩猟、採取の時代が終わると、稲作などを中心とした農耕文化の時代になった。集団はどんどん大きくなり、稲作などで他より多くの収穫を得る者が出てくる。

富の発生である。収穫は食糧として消費され残った分は貯蔵された。また集団のなかでも様々な職業が発生し、物の加工が専門的に行われるようになって生産性が拡大したと考えられる。

やがて余剰の生産物が取引されるときに共通の価値をもつものが物の代わりに使われるようになった。多くは金をはじめとする貴金属だった。

マネーの誕生である。つい最近まで金は正真正銘のマネーであり、各国中央銀行が発行する貨幣と無条件で決まった分量を交換できた。これを金本位体制といい最近までアメリカ合衆国が取り入れていた。

金と交換できる紙幣を兌換紙幣と呼ぶ。稀少金属でありあらゆる個人、集団が価値を認める金の信用力を担保にした制度といえる。

しかしながら経済が発展し、貨幣の流通量が飛躍的に拡大した現在において通貨と金を交換することが現実的に不可能となった。1971年アメリカ合衆国のニクソン大統領はドルと金の交換の停止を発表した。これが変動相場制の始まりであり、現在の為替レートの変動による国際経済の不安定要因の遠因である。

マネーの最初は物の価値を担保にしたものであった。そして貴金属価値、政府の信用力を担保にしたものと、経済の規模が拡大するにつれ発展的に変化していった。

経済には金融がセットと考えたほうがいいと思う。貨幣経済が発達するにしたがい、貨幣の流通量が飛躍的に拡大した。貨幣を必要以上に保有するものと必要な貨幣が不足する者が出てきた。余剰がある者が不足する者に貨幣を貸すようになった。

貸付に際しては返済の時、または期間中に利息の支払いが絶対条件である。これが基本的な金融の仕組みである。金融が発生したことにより経済は飛躍的に発展した。何故なら保有する通貨以上の取引ができるからである。

今回のテーマであるローン、クレジットについて考えてみる。

わが国のクレジットの原型は「伊予の椀舟」といわれている。伊予、つまり愛媛県の漆器職人が船に乗り込み瀬戸内、九州沿岸に漆器を売り歩いた。しかしながら漆器は高級であり、一般の農民にはすぐ手が出ない商品だったので盆暮払いの支払いとなった。商人たちはお客が支払うことができる人間かどうか自分の責任において判断し、商売としたわけである。

この制度のおかげで、一般の農民も高価な耐久消費財である漆器を手に入れることができたのである。ローン、クレジットは将来の収入を担保にし、今必要なもの、欲しいものを。また分割払制度は高級で価値あるもの、高価であるが今すぐ必要なものを庶民が手に入れることのできる画期的な仕組みと考えていいと思う。

今自動車産業が隆盛を極め、経済の牽引役となっているが、自動車ローンという制度がなければ個人が容易に自家用車を手に入れることができたであろうか。住宅ローン、学資ローンなども社会的に必要とされており、社会の平等性を維持するため不可欠なものである。

ローンの制度がなければ庶民は手持ちの資産以上の生活はできず、高額な必要品の購買、教育の機会も失っていた可能性がある。

反面、ローンは将来の収入の確保、増大を見越して貸し付けるため将来の収入増が叶わなかった時、その仕組みは破綻するのは明白である。そこに個人の家計の破綻と貸し付ける側の貸し倒れ引き当ての増大という双方にとって受け入れがたい現実が発生する。

貸し付ける側にとってはビジネスであり、事業ではある程度ヘッジできるリスクではあるが借り入れ側の個人にとっては生活の破壊にもつながる案件である。

ここでクレジットカードについて考えてみる。クレジットカードは日本国内で発行枚数が2億枚を超え、成人では一人当たり2枚以上保有している。クレジットカードの仕組みは民間のクレジットカード会社が申込者個人を審査してクレジットカードを発行し、その決済を加盟店に保障する広義の擬似通貨といえる。貨幣はその決済の結果を国家ならびに中央銀行が保証しているのに対し、クレジットカードは民間の企業が保証しているといえる。

クレジットカードは小売店で物品の購入、サービスの対価として現金同様の決済ができる。クレジット会社は決済の都度、小売店から加盟店手数料を徴収し、それを収益にしている。また小口金融の融資サービス機能を付与し、その金利収入が収益の大きな柱である。クレジットカードは主に書面による簡易な審査で発行される。

クレジットカードはたった一枚のカードで多額の決済が可能で紙幣を持ち歩かなくてすむ携帯性、盗難紛失時に保険で補填される安全性、またポイントサービスをはじめとする特典、支払いが後日になるという時間優位性などにより、その発行枚数は近年、飛躍的な伸びを示した。

そして急激な普及により問題点もあらわにした。一番の問題はその利便性に端を発する多重債務者の増加である。書面のみの無担保で発行されるため、カードホルダーの支払い限度を超えた与信額を付与しがちである。

また、あまりにも単純な決済方法のためカードホルダーは借り入れという感覚が薄く、自己のキャパシティを超えて利用する傾向も見られる。これは直接、個人の家計の破綻につながる。

そもそもクレジットカードは貨幣の代替として誕生したものであり、それ自体に問題はない。その利便性故に、計画性の欠如した個人、または家計の将来的リスクが発生したときに多重債務者が発生する。クレジットカード会社はそれに対応するために多額の貸倒引当て金を積み立てている。

そのコストは遅滞なく支払いを続けている善良なカードホルダーが負担しているといっても過言ではない。要するに長期的な家計の能力以上の購買、借り入れは当事者だけでなく、優良なカード会員の負担につながるものである。

マネーの将来について考えてみる。

マネーは金本位制が崩壊してからますます記号的になった。データと置き換えてもいいと思う。たとえば一万円札がある。それは物質的にはただの印刷された紙である。その価値を政府、中央銀行が保証し、偽造対策を施し、真正と判断された段階で紙ではなくなり、通貨となる。通貨が記号化された段階でクレジットカードも擬似通貨になる。なぜならクレジットカードの決済において基本的に現金は介在せず、直接現金の機能を代替するからだ。

カードホルダーは小売店でカードで支払いをする。そして通信ネットワークによりカード会社はその決済を許可する。加盟店には口座振込みという手段で口座残高に加えられる。後日、支払日にカード会員の口座から口座引落というかたちで該当金額が減算される。そこには現金は介在しない。余談だがクレジットはバランスシートの貸方を語源としている。対極に借方はデビットと呼ばれる。

現在、デビットカードも普及し始めている。デビットカードは支払額を瞬時に口座から引落し、決済するものである。現金を持ち歩くリスクが軽減されるメリットはあるが後払いという時間優位性はない。デビットカードに似たものとして近年電子マネーが普及してきた。

ビットワレットのエディ、JR東日本のスイカがその代表である。チャージ機で現金を電子マネーに補填し、現金と同じように利用できる。クレジットカードのように磁気ストライプにデータを入れるのではなくICチップにデータを入れるためクレジットカードのように偽造カードが出回るリスクは軽減される。

しかしながら現金でチャージし前払いの一種であり、紛失時の保障もないため、今のところ小額の決済にとどまっている。高額の買い物はクレジットカード、小額の買い物は電子マネーと棲み分けられている。

いずれにしても通貨は記号化し、電子化する。通貨の優位点はその匿名性にある。逆説的に言えばその匿名性がマネーロンダリング、アンダーグランド経済、脱税などの違法行為につながる。国家の意思は、これを統制したいと願っているはずである。

また、紙幣の製作、物流コストも天文学的になる可能性がある。パソコン、スキャナー、カラープリンターが普及してきた現在、粗悪な偽造紙幣の模倣は簡単なことである。偽造対策を施せども技術革新とのいたちごっこだろう。マネーはますます記号化し、紙幣とは違ったものになると考えられる。

今、現金に代わる新たなマネーの本格的な移行期の中で、健全な国民経済と家計のために社会と私たちのバランス感覚が問われている。

重大な局面に差し掛かっている今こそ、社会の進むべき道をしっかりと考えなければと思う。何しろ年間の世界中の貿易総額より多いマネーが現物じゃなく記号に換わって為替、株式相場で毎日暴れまわっているのだから。

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