「おかねの作文コンクール」
第36回「おかねの作文」コンクール(中学生)(平成15年)
ものやおかねについて考えてみよう!!
「働くことの意味 仕事の中で…」
特選・日本PTA全国協議会会長賞
栃木県 小山第二中学校 3年 管野 和奈
皆さんは、お金がどの様につくられているのか本当に分かっていますか。きっと、ほとんどの子供は知らないでしょう。
私は、子供も一度は働いてみるべきだと思います。
私達子供は、親が毎日必死に働いたお金で食べさせてもらっています。しかし、私達はそのお金を次々と欲しがり、自分の欲を満たしています。だから、私達子供は、お金の大切さを知りません。それをつくるのに親がどれだけ苦労しているのか分からないのです。私も初めはそうでした。しかし、それではいけないのだと気付いた時がありました。それは、私が小学生の時でした。
私は小学五年生の夏、一日500円の約束で、父が勤めていた運送会社の手伝いをしました。そのとき、私は母に言われました。
「手伝いといっても、お金をもらうんだからこれは遊びじゃないんだよ」
と。私は、「うん。分かってるよ」
と、大きな声で返しましたが、実際、今考えてみると、あの時の私には、その言葉の重みを分かっていなかったと思います。
私はその日から、毎日頑張って働きました。帰ってきてもらうお金は、なんだかいつも普通にもらっているお小遣いとは、違った感じがしました。集まるお金を見るとうれしくなっていました。
しかし、そんな私は、五日ぐらいたつと、朝は早く、夜は遅く、仕事はただトラックに乗って配達するだけの単純な作業にあきてきていました。そのせいか、私は、自分の気持ちにも乱れがでてきていたのでした。
それから、事件は起こりました。それは、あるお店の商品を配達している時でした。その商品の箱は、とても大きく、荷台で積み重ねると、私の身長などこしてしまうほどでした。
私と父は、それをお店に運ぼうとしました。しかし、縄で結んであるわけでもない、積み重なっている箱は、グラグラとゆれ、今にも落ちそうでした。
「和奈、きちんとおさえて!」
と、父に怒鳴られた時、私は「きちんとやってるもん」と怒りが込み上げてきました。
その時でした。ガラガラ、と積み重なっていた箱が落ちてきました。その瞬間、父は怒った顔で私を見ました。しかし、何も言わず、また、箱を積み上げ、お店の方に行きました。
私は、「自分は悪くない」と心の中で思っていました。私に反省という文字はなかったのです。
お店に行くと、父はお店の人に頭を下げ、一生懸命謝っていました。その姿を見ていると、私は何か心に突きささる様な感じがしました。
その後、全ての配達を終え、父と私は家に帰りました。
車の中で、何か言われた様な気がしましたが、耳に入らず、私はとうとう謝ることが出来ませんでした。
家に着き、私はその日の出来事を母に話しました。すると母は、
「和奈は明日から、仕事に行かなくていいよ」
と、私に言いました。私は、「どうして?」
と、怒った口ぶりで、母に訊きました。すると、母は冷静な顔で言いました。
「和奈、はじめにも言ったでしょう? 仕事は責任あるものなの。みんな、そうやってお金をもらっているの。和奈の今日やった事は、会社の信用を無くしたの」
私は、その時はじめて、あの時の言葉の意味を知りました。
仕事とは、人と人との信頼によって、成り立っているもので、その信頼をこわさない様に私達は、それぞれの仕事を責任を持って、やらなくてはいけないんだ。それが出来て、はじめてお金がもらえるのだと、私は働く事の大切さを少し学んだような気がしました。
その時やっと、事の重大さに気付き、私は、父に謝ることが出来ました。
あれから私は、親からもらったお金に感謝をし、無理な使い方をしないよう、気をつけています。私は、あの時の失敗が、今につながったのだと思っています。
お金は、簡単に手に入るものではありません。それは、親が毎日汗水流し、厳しい仕事にたえ、つくられているのです。
今、あなたの手元にあるお金を見て下さい。輝いていませんか。父や母の愛情を感じませんか。
だから、私は、子供も一度は働いてみるべきだと思いました。それは、お金の大切さを知る早道だと思うからです。