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おかねのシンポジウム2004

『地元発信。元気な未来はみんなでつくる』

パネルディスカッション

地域の文化を生かした活性化の取り組み

藤田 互いに助け合うという話に至りましたけれども、ここで、兵庫県加美町(かみちょう)における取り組みをVTRでご覧下さい。

資料VTR(4)

兵庫県加美町「むら芝居」による地域活性化の取り組み
・わが町の防災を地域に密着して支えるのが消防団だが、兵庫県加美町の消防団が村芝居を復活させ大人気を博し、地域の活性化に一役買っている。
・平成14年からは「むら芝居保存会」を設立し、劇団の全国ネットワークづくりにも取り組んでいる。
・むら芝居だけでなく、地元の米で作った地酒「かみ芝居」・「お涙頂戴」の開発や、2番茶を活用した紅茶の開発など、新たな取り組みにも挑戦している。

藤田 河合さん、この村芝居、文化といっていいですか。

河合 まさにこれが文化ですよ。芝居も文化ですが、芝居だけでなく、生きること全体が関わっていますよね。そして、特産品の「お涙頂戴」もあって、完璧じゃないですか。

芸術もすごいですが、お酒を飲むのもそうだし、仕事もそうだし、火消しだけど元気の火付けもやっている。生きている姿全体が文化だと思います。そして全部に力が沸いてくる。力というのは出し惜しみすると却って疲れることが多いですよ。

パネルディスカッションの風景


藤田 大平さん、子どもの教育にも地域の力が必要だというお話でしたが、この地域っていうのは、特に都会では力が発揮しにくいということがあると思うのですが。

大平 どうしてもマンション、特にワンルームマンションなんかが増えますと、転居が激しくて、そういうところで期待するのは大変難しいんです。ただ、最近、ファミリー型のマンションなんかができるときに、地域の町内会には是非とも入って頂きたいとお願いしたりしています。

数年前まではなかなか難しかったんですけれども、幸か不幸か、最近治安がものすごく悪くなっていますので、防犯の意味でも大変良いからということで入って頂いています。

それまでどうして嫌かといったら、地域の活動を押し付けられるというのが嫌だという人が多かったんですよ。だからそうではなくて、押し付けられるのは嫌な人が多いかもしれないけれども、ボランティア活動とか自分のできる範囲でしたいという人も多いんですよね。

そういう方には自分が好きなときに好きな形で地域活動に入って頂けるシステムを作っている区もあって、そうやって広がっていけばどんどん交流ができるようになると思っています。時代と共に参加の仕方も違ってきますから、それに合わせる必要があると思います。

藤田 福井さん、地域が押しなべて活気を失って力を落としているとなりますと、三位一体といわれていますが、地方財政にも深刻な問題でないかと思います。

福井 今の三位一体が本筋を歩んでいるかは後ほど大平さんから伺いたい点なんですけれども、私は、都会に対して地域という使い方は本来違うのではないか、都会の中にも地域はあるのではないかと思っています。

先ほどのお芝居など見ていても、いきなり値段つけられないですよね。経済的価値という観点よりは、やっている人、それから地域の人にとって価値があるんですね。経済的価値というのは、不特定多数の人たちの評価が一致する、地域の中か外かを問わず、評価が一致する、っていうことです。だからお金が当てはめられるということなのです。

一方、値段がつけようがない、しかしやっている本人と周辺の人はものすごくいい、というのは明らかに文化的価値ですよね。これがずっと広がりを持って、あのお芝居が全国版になり、海外に行っても通用するっていうことになると、文化的価値と経済的価値がだんだん重ね合わせになってくるということだと思います。

世の中の価値創造の出発点というのは、いきなり金銭的価値とか経済的価値ではないのですよね。大量生産もある段階まで行ってしまうと、何でも経済的価値で割り切れるっていう風に思ってしまっていたのですが、出発点は常に文化的価値から始まる。それは田舎だけかと言いますと、そうではないと思います。

都会の中でも田舎の方でもそういったことから始まる。そして今、はじまりだから、高度成長時代の経済的なパワーの余韻が残っている都会に比べると、田舎が遅れているという感じになっていますけれども、本当の力は、万遍なく出始めているんじゃないかと私は思っています。

今、経済力格差みたいなものを著しく対照的に見せているのは、構造改革の過程でかつての公共事業のような地方に所得を大きく分配するようなメカニズムを意識的に壊しているという面が現象として強く出ている一方で、まだ、文化的価値から出発する新しい価値創造っていうのが萌芽的段階にあるという面が僕は強いんじゃないかなと思います。

しかし三位一体改革の政策の方向性が合っていれば加速度的に良くなるはずなので、それは大平さんどうなんですか。

大平 そもそも三位一体改革がなぜ議論されるかという根本的なことがあります。地域というのはそれぞれ特色がありまして、一つ一つ違う訳ですから、地域に応じたことができるための、それも含めて税源委譲ということだったと思うんですね。

ところが最近これだけ不況になりまして、国全体としてお金がない。お金がない部分を、地方に対するしわ寄せと言ったら言葉が悪いかもしれませんけれども、そういうことが何か中心になっている気がしてなりません。

本来的な意義をもう一度見直して、地域に応じたことができるように、いわゆる住民自治ですね、それが本来あるべき姿ですから、そちらに戻って頂きたいと思います。

藤田 河合さん、頷いていらっしゃいましたが、今、国と地方の間で財源配分を巡って行われていること、地域の力をスポイルするのではないかという心配をおっしゃいました。

河合 そうですね。慌ててやってしまうと、理念だけが先行しますからね。そうすると、今おっしゃったように、地域の自由を尊重するのではなしに、地域にしわ寄せを持っていくと言う、悪い方が先行してしまう。そこを十分考える必要があります。

そうすると、地域を尊重しているように見えますけれども、大変むつかしい問題を、ほいお前やれ、と言われているのと似たようなことがありますからね。ここのところをよほど慎重に考えないといけないと思っていますけれども。

藤田 堀田さん、地域をいきいきさせるために、地方と国との間での財政の配分見直し、税源の配分見直しなど、これについて何かお感じになっていることはありますか。

堀田 地域、あるいは、地方を信じることです。どれだけ財源を譲り権限を譲るかという議論になると、必ず、国の方では「そんなものを譲ったら不公平になる」とか「住民が困る」とか、「基準が落ちる」とかそういう反対意見が出てくる。これはもう、権限が減る官僚をはじめ、政治家とか、いろんな人が言いますよね。

だけど本当にそうなのか、地域に任せてみたら、すごく良いサービスを提供するところがどんどん出てくる。これは介護保険が証明していますよね。差があったって良いんです。良い方の自治体に合わせようとみんな頑張るわけですから。

その差をなくして、低いところで揃えてしまうのは最悪ですよね。信じて任せてみれば、必ずその地域の知恵が出てくる。そして任せなきゃ、いつまで経っても進歩なんてしないと思います。

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