金融教育フェスタ
金融教育フェスティバル2010
金融教育セミナー 東京会場
(財)生命保険文化センター
生活情報室 調査役
牛嶋 信治 氏
「生命保険の仕組みと役割」
生命保険と預貯金――その違いを理解して合理的な生活設計を
生命保険文化センターでは、中立公正な立場から「生命保険とは何か」を消費者の皆様にご理解いただく活動をしています。わが国の約9割の世帯で利用されている生命保険は、大勢の人が公平に費用を負担しあい、死亡や病気などで多額の経済負担がかかる「いざ」という時に給付を受ける相互扶助の考え方を基本としています。今日は、生命保険が果たす役割や仕組みについて、預貯金との違いなどを踏まえながら解説します。
預貯金が、教育資金や住宅購入資金などの目標額を貯めるのに対して、生命保険は、入院や死亡、事故などの経済的リスクに備える商品と言えます。例えば、健康な45歳の男性が1,000人いて、1年間に2名が死亡すると仮定してみましょう。それぞれ奥さんも子どももいて、万が一、本人が亡くなった場合に備えて1,000万円必要だとしますと、預貯金ではそれぞれが1,000万円貯めなくてはなりません。それに対して、生命保険では1年間に死亡する確率に基づいて計算します。この場合、1,000人当たり2名ですから、全員から年間2万円集めれば計2,000万円になり、1年間に亡くなった2人の遺族に1,000万円ずつ支払うことができます。これが生命保険の基本的な仕組みで、保険料の2万円は自分が死亡した場合に備える費用、言い換えれば安心・保障を買った費用ということになります。
もしここに「不治の病で1年以内の命」と医師から宣告された2人がいて、その人たちが1,000人の中に入り込んでしまうと、1年間に4人亡くなるかも知れません。そうなると加入者からみて不公平であり、保険会社にとっても保険金の支払いが不足します。一般に契約をする場合に告知義務があるのは、契約者の公平性を保つために必要な制度であることはご理解いただけると思います。
生命保険はこのように死亡に備える保険もあれば、年金のように生きることを条件とした保険や、病気や事故による入院や手術、あるいは要介護状態に備える保険もあり、目的によって種類もさまざまですが、考え方としてはそれぞれの確率を使用して商品が設計されています。従って、預貯金と異なり、生命保険は目的によって種類が異なるのが特徴です。ですから、生命保険にただ入ればいいというものではありません。何のために入るかがはっきりしないと、あまり意味のないものになってしまいます。目的をしっかり持って入ることがとても重要なことです。
皆さんが保障の目的、金額、期間などの保障ニーズを明確にしていただければ、それに適した保険の種類を選択するのは難しいことではありません。保障ニーズの検討に当たっては、自分の生活設計、とくにライフステージの変化、公的保障や企業保障の内容、預貯金の状況などを考慮しながら行うことが大切です。預貯金と生命保険、それぞれの仕組みを理解して、目的に応じて使い分けることが合理的な生活設計につながると思います。
(財)生命保険文化センターとは
人々の生命保険に対する意識や意向を的確に把握し、それに応じた情報を公正な立場から提供することを目的に設立された財団法人です。