金融教育フェスタ
金融教育フェスティバル2010
金融教育セミナー 東京会場
(社)不動産証券化協会
主席研究員
森野 祥一 氏
「Jリートの基礎」
利益の90%以上の高分配が魅力、その一方で元本割れや金融不安リスクも
資金運用としての不動産投資には、従来の実物不動産投資と、約20年前から日本で普及し始めた証券化不動産投資があります。J-REIT(ジャパン・リアル・エステイト・インベストメント・トラスト=Jリート)は2000年の投資信託法改正により可能となった、日本の不動産を主な運用対象とする投資信託のこと。狭義では、証券取引所に上場されている投資法人出資証券をいいます。投資家から集めた資金を複数の不動産に投資し、その賃貸収入や売却収入を得て、投資家に分配・配当を行う形態の金融商品です。
リートの場合、不動産投資法人という一種の会社が、投資家から集めた資金などでオフィスビルなど複数の不動産を購入し、テナントに貸し出して、そこで得られる賃貸料などから管理運営費・金利・減価償却などを差し引いた純利益を分配金として投資家に支払います。この不動産投資法人はペーパーカンパニーで、設立母体(親会社)である不動産会社、商社などの子会社にあたる資産運用会社が投資法人から委託を受けて実際の運営をします。これは、親会社や運用会社の支配権が投資法人の資産に及ばないようにし、万一の連鎖倒産を防ぐために、実際の物件を保有する投資法人と運用会社とを分離した仕組みなのです。
不動産投資法人は現在36社あり、保有資産の評価額合計は7.5兆円です。資産運用会社の方針に基づき、投資家の出資金と金融機関からの借入金で、オフィスビルやショッピングセンターなど収益性のある物件に投資します。不動産証券化商品は、ローリスク・ローリターンの国債等と、ハイリスク・ハイリターンの株式等の中間にあると位置付けられます。
リートの大きな魅力は、法人税がかからないことによる分配金の多さで、Jリート平均の利回りは現在5%台を示しています。毎期の利益の90%超を投資家に配当する等すれば分配金の損金算入ができるという二重課税回避の仕組みがJリートには導入されています。実際には99%あるいは100%配当していますから、利益のほとんど全額が分配されています。また、不動産のプロが多数の物件に分散投資しているため、賃料が安定し高稼働率も維持することが出来て、比較的安定した配当が期待されます。通常の不動産購入では多額の資金が必要になりますが、Jリートでは比較的少ない資金で始められる点も魅力となっています。
一方、元本割れや分配金の変動リスク、借り換え不安、災害発生、制度変更等によるリスクの可能性もあります。これからJリートを買おうとされる方は、各社の特性指標と金融・景気判断が重要になるかなと思っています。
(社)不動産証券化協会とは
不動産証券化協会は、Jリートをはじめとする不動産証券化商品の社会的信用確保と投資家保護を活動の目的として設立された社団法人です。