金融教育フェスタ
金融教育フェスティバル2011
暮らしに役立つ講演会
講師 : 坂東 眞理子 氏(昭和女子大学 学長)
品格ある生き方のための家庭経済学
本日は品格ある人生を生きるためには、私たちはどのような心構えで生きるべきなのかと言うことをお話したいと思います。私たちはゆるやかなインフレの高度経済成長期の時代を生きてきました。ところが、この20年間はほとんど物の値段が上がりません。高級なサービスを利用すれば別ですが、普通の生活をするにはさほどお金がかからなくなっています。
一方で、東京以外では、誰も住まなくなった住宅や耕作放棄地が増えています。また、ワーキングプアも増えています。20代男性に非正社員が増えているのです。勤務先の大学で、40代の女性のための再チャレンジ講座を開いていますが、この講座の参加者と接し、人生設計の長さをまず変えなければならないと実感しています。80代、90代までをどう生きるかを考えておかなければいけません。
私は、たとえ借金してでも人生を楽しもうという考え方には賛成できません。サブプライムローンの問題などを見ると、金融機関にとっては貸さないのがかえって親切なのではないかと思います。
まず働く力、収入を得る力を持つということが人生の基本だと思います。会社の正社員に採用されるのは難しくなっていますが、だからこそ、本当に論理的な思考が出来る力、真の教養を在学中にしっかりと身に付けなければならないと思います。
共働きなのか片働きなのかで世帯生涯年収が大幅に異なります。これからは、女性も生涯働くという前提で、男性も女性も働き方を工夫し、家計の責任と家事・育児を分担することが大切ではないかと思います。
現在、待機児童以上に深刻なのが待機老人です。特別養護老人ホームに入れない老人が40万人と言われますが、潜在的な希望者まで含めると300万人から400万人という状況です。こうしたことを踏まえると、安定的に住める家と、誰か世話をしてくれる人を確保することが老後の最終段階では一番重要なのではないかと思います。その上で、自分はどういう生き方をしたいのかという目標を改めて問い直し、自分を奮い立たせることが大切だと思います。
きちんとした食生活、生活習慣、毎日体を動かすことによって心身の健康を維持し、年齢とともに磨かれる洞察力や判断力を生かして豊かな人生を生きたいものです。そして、人から愛されるとか大事にされることばかり気にするのではなく、自分が誰かを尊敬する、好きになる、応援する、世話をすることを大切にして主体的に生きることが大切だと思います。自分の良いところ、他人に役に立つところ、他の人が感心してくれるところを磨いて役に立つようにして提供することが肝心です。働きかける努力を続けることが自分の幸せにつながると思います。
そして、お金については、欲望に振り回されないことが大切です。自分に必要な物やサービスを買うだけでなく、感謝や応援する気持ちをお金で表すことをずっと続けていかなければいけないと思っています。
ユダヤ賢母の教えという本を翻訳するなど、ユダヤ系の人たちと接する機会を持ちました。そこからお伝えしたいことは、物事は必ず変わるということ、そして、常識を疑えという教えです。是非そうした心構えを持っていって頂きたいと思います。
物事を判断する力、色々と細かい手続きを面倒くさがらないこと、基本的な常識を身に付けているということ、それらが学校教育を通じて身に付けなければならない力なのではないかと考えています。
プロフィール
富山県生まれ。
1969年東京大学卒業、総理府入省。
青少年対策本部、婦人問題担当室、老人対策室、内閣総理大臣官房参事官、統計局消費統計課長などを経て男女共同参画室長。
1995年~1998年
埼玉県副知事
1998年~2000年
ブリスベン総領事。
2001年~2003年
内閣府男女共同参画局長。
2004年4月~
昭和女子大学大学院教授、
女性文化研究所長 現在に至る
2005年~2007年3月
昭和女子大学副学長
2007年4月~
昭和女子大学学長 現在に至る
「図説 世界の中の日本の暮らし」
「新 家族の時代」「米国きゃりあうーまん事情」「副知事日記」
「女性の品格」「親の品格」「女性の幸福(仕事編)」
「日本の女性政策」「錆びない生き方」「英語以前に身に付けたいこと」など著書多数。