金融教育フェスタ
金融教育フェスティバル2011
金融教育セミナー 東京会場
東京証券取引所グループ
CSR推進部課長 東証アカデミー講師
倉成 秀 氏
株式会社と証券市場 その仕組みと機能
国民経済は、企業、家計、政府から構成され、企業は商品やサービスを消費者等に提供します。企業が事業を行う主たる目的は利益を上げ企業価値を高めることですが、昨今は社会的責任も注目されています。企業が活動し、成長するためには、資金が必要です。
企業が資金を調達する方法の一つとして銀行借入があります。預金が原資になりますが、銀行が融資をするかどうかを判断するという間接金融です。一方、投資家自身が企業にお金を出すかどうか決めるのが直接金融で、債券(社債)や株式による方法があります。借入や社債で得た資金は期限内に返済する必要がありますが、株式発行で得た資金は返済する必要がありません。借入や社債には定まった利子を払う必要がありますが、株式の配当は業績や経営方針により柔軟に決めることができます。
株式(=出資の細分化)を通じて個々の投資金額を小さくできます。株主は有限責任で、会社が倒産しても出資額を超える責任を負うことはありません。このため、株式会社は広く資金を募り、大規模な資金調達ができます。証券市場には発行市場と流通市場があり、投資者は流通市場(証券取引所)で株式を売却(換金)できるからこそ、発行市場も成り立ちます。
株主は、企業が稼いだ利益から配当や値上がり益を享受できます。株主優待もあります。一方、株式には価格下落のリスクがあり、会社が倒産すれば無価値になります。収益性が高い金融商品は安全性や流動性が低く、安全性や流動性が高い商品は収益性が低くなります。株式を預金と比べると、総じて収益性は優れますが、安全性や流動性(換金性)は劣ります。すなわち、リターンを追求するとリスクが高くなり、リスクを抑えるとローリターンになります。株式はハイリスク・ハイリターンの商品です。なお、株式の投資信託もあり、少額での分散投資が可能になっています。また、取引所で売買される上場投資信託(ETF)もあります。
株価は会社の収益力や成長性を反映して形成されますが、会社自体の要因と市場全体の要因(景気、金利、為替ほか)が影響します。近年は、海外投資家の比率が高まっていること、海外での企業の活動が広がっていることなどから、海外市場の影響を受けやすくなっています。企業は上場によって資金調達力、信用力・知名度などが向上しますが、その一方で、株式買占めの可能性が高まるといったことも起こります。上場企業や私ども証券取引所は、より多くの投資家に株主となってもらうため、様々な施策に取り組んでいます。
東京証券取引所グループとは
(株)東京証券取引所グループは、高い信頼性と利便性を備えた健全な証券市場の構築とともに、公正・中立な市場開設者の立場を活かして、金融経済教育活動を行うなど金融リテラシーの向上にも取り組んでいます。