金融教育公開授業
平成22年度金融教育公開授業(全国リレー講座)
山梨県金融広報委員会
上野原市立棡原小学校
金融広報中央委員会
山梨の実施報告
「金融教育公開授業 in 山梨(棡原小学校)」(11月13日開催)
山梨県上野原市立棡原小学校は、上野原市から車で15分ほど離れた山間部に位置しております。豊かな自然に恵まれた中で、全校児童26名が縦割り班活動を中心に、協力しながら学校生活を送っています。
同校では、平成21・22年度に山梨県金融広報委員会から金銭教育研究校の委嘱を受け、「社会を生き抜く力をもった児童の育成をめざして~勤労を尊ぶ学習を通して、人・もの・お金を大切にする心を育てる~」をテーマとして研究に取り組んでいます。11月13日(土)には、同校教諭による低学年と6年生の公開授業や研究発表、外部講師による講演が開催されました。
▼ 参加者内訳:
1.公開授業
(1) 「ゆずっこフェスティバルをしよう」(低学年・生活科)
子どもたちが、身の回りの素材を利用して作った「ゲームやさん」に、父母や地域の人たちを招待し、模擬紙幣を使ったお金をやりとりをしました。お店では、子どもたちが自ら店員となり、お客さん役の父母や地域の人たちとかかわる中で、「お客さんに喜んでもらうにはどうしたらいいか」など相手の立場に立って考えることの大切さや、そこで生じたお金のやりとりや売上の計算などのお金の管理について学びました。お客さんを楽しませながらお金を得ることの難しさをみんなで体験しました。
(2) 「働くことについて考えよう」(6年生・総合的な学習)
授業は、子どもたちが、仕事に対し関心を持ち、働くことの意義について考えること、将来自分が何をすべきか考え、目標に向かって努力する態度を育てることを目的としていました。「世の中にはどんな職業があるのか」、「仕事への思いにはどんなものがあるか」など、仕事について家族や身近な人から聞いた話と子どもたちが地域イベントへ出店した時の体験を結びつけ、「将来自分がどんな職業に就きたいか」、「自分が希望する職業に就くためには何が必要か」などについて自分の考えを発表しました。
2.研究発表
公開授業の後、「社会を生き抜く力をもった児童の育成をめざして~勤労を尊ぶ学習を通して、人・もの・お金を大切にする心を育てる~」をテーマとして取り組んだ具体的な実践例が発表されました。
昨年までの発達段階(低・中・高学年)に応じた金銭教育の研究から、1.お金の価値に関する実感の薄さ、2.勤労体験の少なさ、3.消費者としての経験の少なさという児童の実態が明らかとなりました。今年度は、金銭教育に関わる活動を、児童にとって身近な問題として捉えられるよう、体験的な活動につなげることとし、「棡原のよいところを知らせよう」をテーマに、全校児童によりお店を出して売る活動を二度にわたり実践しました。出店では、小規模校である同校の縦割り班活動を生かし、実際に商品を作って売る活動を通して、働く体験をすること、自分たちが働いたことで得られるお金の価値を実感すること、勤労の尊さを学ぶ学習から自分に関わる人や、身の回りのものとの関わり方を考えることを学びました。また、出店についての感想が児童から発表され、働くことで得るお金の大切さを振り返る良い機会になりました。
今後は、子どもたちが、出店により得たお金をどのように使うか話し合いをしていくが、働いたお金を実際に使うことで、お金とものの価値を改めて見つめ直すことにしたいと述べられました。
3.講演会
研究発表の後、陣内恭子氏から、「こころを育てるお金のはなし~親子でおこづかいゲームをやってみよう~」と題する講演が行われました。
講演の中では、12月のカレンダーを使い、全校児童と保護者が「おこづかいゲーム」を行いました。児童は、1週間、1か月の時間の感覚を理解しながら、必要なものやほしいものを自ら決めて買い物を行うという、こづかいのやりくりを疑似体験しました。
ゲームでは、さいころの出た目の数だけカレンダーを進み、「こづかいをもらう日」、「買い物やお手伝いをする日」などの日付ごとに書かれた指示に従いながら、買い物を行いました。買い物では、絶対に買わなければならない「必要なものカード」と買うか買わないかを自分で決める「ほしいものカード」が区別してあり、その中から自分の判断で買い物を行っていきました。限られたおこづかいから、「今買う」、「後で買う」、「買わない」を子どもたち自身に考えさせる大変貴重な体験となりました。また、お金の動きについて、こづかい帳へ記録することで、お金の管理の仕方についても学びました。
同校の児童は、周辺にお店がほとんどないため、保護者と一緒に車で買い物に行き、お金は保護者が支払うという環境にあります。これまで自分でお金を使う経験の少ない児童にとっては、「おこづかいゲーム」を体験することは、お金をもらうことに感謝すること、お金を大切に使うこと、買い物は自分で考え決めること等に気付く機会となりました。こづかい帳への記録についても、多くの児童が、これから一人でこづかい帳がつけられると答えるほど大変有意義なものになりました。
また、児童に対しては、買いたいものが買えない場合もあるが、その場合には、普段から計画性を持って買い物をするなど、親子でしっかり考える習慣をつけておくことが大切であると話されました。
一方、保護者に対しては、学校で出来ないお金の教育があると話されました。それは、家庭におけるお金の配分についてです。家族構成などにより、いつ、誰に、いくら使うかという配分が各家庭で異なるため、バランスのとれた配分について、子どもたちとお金の話を交えながら家庭で是非話し合ってほしいと話されました。
更に、研究授業で体験したように、家庭においても子どもの意思を反映させながら、買い物を体験させることにより、実践的で正しい金銭感覚が身につくと話されました。金銭管理の能力を養うためには、こづかい制が有効であると強調し、子どもたちが必要なもの、ほしいものを自分で考えて計画的に買うこと、それを繰り返すことで効果を上げられること、その際、保護者は、子供を信じて見守ることが大切であり、しっかりと行動ができた場合は、ちゃんと褒めることが必要であること、金銭教育は、生活教育すなわち家庭で十分身につけさせることができるものであると話されました。
最後に、賢い消費者になるためには、買い物の後でそれぞれのお金の使い方を振り返り、その反省を生かして「本当にほしいものかどうか」を考えながらお金を使うようにしてくださいと締めくくられました。
4.プログラム
- 8:50~9:35
- 公開授業
(1)「ゆずっこフェスティバルをしよう」(低学年・生活科)
授業者:上野原市立棡原小学校教諭 山口美佐子、鈴木利基
(2)「働くことについて考えよう」(6年生・総合的な学習)
授業者:上野原市立棡原小学校教諭 渡辺香織 - 9:50~10:30
- 研究発表 「社会を生き抜く力をもった児童の育成をめざして~勤労を尊ぶ学習を通して、人・もの・お金を大切にする心を育てる~」
発表者:上野原市立棡原小学校教諭 石松香代子 - 10:30~10:45
- 開会挨拶 上野原市立棡原小学校校長 三枝泰子
主催者挨拶 山梨県金融広報委員会事務局長 大島和男 - 10:50~12:00
- 講演「こころを育てるお金のはなし~親子でおこづかいゲームをやってみよう~」
講師:陣内恭子氏 - 12:00~12:10
- 閉会挨拶 上野原市立棡原小学校教頭 石井基晴