金融教育公開授業
2014年度 金融教育公開授業
福岡県金融広報委員会
福岡市立香陵小学校
金融広報中央委員会
福岡/福岡市の実施報告
「金融教育公開授業 in 福岡(香陵小学校)」(9月25日開催)
福岡市立香陵小学校は、玄界灘を望む豊かな自然の中、長年の研究テーマである「コミュニケーション能力の育成をめざした聴き合い活動やポートフォリオ評価活動」に継続して取り組み、「学校」、「家庭」、「地域」が一体となった教育を行っています。
平成26年度の金銭教育研究校として金銭教育に取り組み、9月25日(木)に全学年を対象とする金融教育公開授業を開催し、担当教諭による研究発表、ダニエル・カール氏による講演会も行いました。
▼ 参加者内訳:
1.公開授業
(1)「みんなの にこにこ だいさくせん」
1年生は、自分や家族が「にこにこするとき」をテーマとして、まず、今まで実践してきたお手伝いについて、工夫したところ(作戦)、難しかったところを聴き合いました。続いて、ともだちにアドバイスしたり、アドバイスを受けたりしながら、お手伝いのさらなるレベルアップ(名付けて「にこにこ大作戦」)について考えてみました。これらを通じて、自分と家族のかかわりに気付き、感謝の心をもって家族のために働くことの意義を学びました。
(2)「かいものゲームをしよう」
2年1組は、「おつかいメモ」を読んで、お買い物コーナーで品物を選ぶ授業でした。100円以内で目的に合わせて必要な品物を選択し、その過程や結果を算数の式(足し算や引き算)で表しました。「おつかいメモ」に、最終的な金額を求めるための計算方法を記入したほか、選んだもの2つを( )を使って、用途別、買った場所別に示しました。子どもたちは自力での解決に向けて聴き合い、自分の考えを確かめたり、深めたりしながら、めあての達成に向けて活動しました。こうした活動を通じて、これからの生活場面で目的に合わせて選ぶ力を養いました。
(3)「えんぴつは何さい」
2年2組は、資料「えんぴつはなんさい」を使った授業でした。主人公が電動鉛筆削りで面白がって削っていた鉛筆が木として育って自分の手元に来るまでに71年間もかかっていることを知り、鉛筆の価値に気付いたことに共感しました。次に、身の回りにあるものの使い方や、ものに関する体験や思いを聴き合い、ものへの感謝の気持ちをもつこと、最後まで使い切ることの大切さを学びました。
(4)「くらしをささえる町で働く人々」
3年生は、スーパーマーケットで働く人々の工夫(①安く売る工夫、②新鮮で安全な商品を売る工夫、③買い物しやすい工夫、④買い物以外の工夫)について聴き合いました。自分たちの手に届く商品が生産・流通・販売などたくさんの人々の努力によって手元に届いていることを知り、買い物をする際には値段のほかにも鮮度や安全性等を考える必要性があることを学びました。また、お店の人の思いや努力を知ることで、ものを大切にしようとする気持ちを養いました。
(5)「エコエコ大作戦」
4年生は、4月から総合的な学習の時間を使って環境にも家計にも優しい「エコエコ大作戦」に取り組み、そのまとめとして段ボールコンポストで家庭の生ゴミから堆肥を作りました。夏休み中にも大事に作ってきた堆肥を10月の「香陵まつり」で販売し、自分たちの力でお金を得る活動に取り組みました。
1組では、堆肥を種や苗とセットにしてどのくらいの値段で販売するかについて、クラス全体で聴き合いました。そして、売る側、買う側の立場によって値段が変わる中、何を大切に値段をつけるかを考えました。これらを通じて、お金の価値に気付き、お金を大切にする気持ちを養いました。
2組は、全ての商品を売るためにどんな工夫をしているのかについて、クラス全体で聴き合いました。そして、買う人の希望を考え、その希望を叶えるための工夫を考えました。これらを通じて、働くことの大変さと喜びを知るとともに、労働の対価としてもらうお金の大切さを学びました。
(6)「じょうずに使おう 物やお金」
5年1組は、自主学習で使うノートを数種類の中から選び、選んだ理由を聴き合いました。「自学で使う」という目的は一つでも、ノートを選ぶ理由は値段やデザイン、環境に優しいなどの様々な観点があることを知りました。価格だけを重視せず、目的や自分の好みに合ったものを計画的に買う方法を身に付けることで、物やお金を大切に使うことを学びました。
5年2組は、「大人生活シミュレーションゲーム」を行いました。いま思い描いている自分の大人生活にかかる費用を計算し、また、実際の平均的な収入について学びました。両者に大きなずれが生じたため、今の金銭感覚では大人になって生活していけないことに気付きました。収入には限りがあり、欲しいものは本当に必要かどうかをよく考えて、予算内で計画的にお金を使うことが大切であることを学びました。
(7)「チャレンジ修学旅行」
6年生は、普段のおこづかいの使い方を振り返りながら、修学旅行でのおこづかいの使い方について聴き合いました。自分の分だけでなく家族や周囲の人へのお土産を買うなど予算内で計画的に使おうとしている人がいること、家族の支えで修学旅行に行けることなどに気付きました。家族や周囲の人への感謝の気持ちを感じるとともに、修学旅行時のおこづかいの使い方を見直し、予算内で計画的にかつ人のためにも使うことを学びました。
(8)「3Rマネー大作戦!」
おひさま農園㈱として自分たちで作った野菜を売り、売り上げたお金から材料代等にかかったお金を差し引いて全体の利益を計算しました。その後、全体の利益を人数で分けて一人分の利益を知り、そのお金で文具を買う計画を立てました。まとめでは、今までの仕事で頑張ったことや大変だったことにも触れ、働くことの大変さやその対価としてもらうお金の価値の重さを理解し、買ったものを大切に使うことを学びました。
2.研究発表
平成26年度金銭教育研究校の委嘱を受け、研究主題を「人やもの、お金を大切にする子どもを育成する金融教育の実践~考えを深めるための聴き合い活動とポートフォリオ評価活動の工夫を通して~」として、各学年積極的に金融教育の研究に取り組んできた、と発表されました。豊かで情報技術が発達した時代だからこそ、お金の価値を実感させ人やものお金を大切にする学習を行うことは、「生きる力」を育てる上で重要であると考えた、とのことです。
金融教育の4つの分野から、1.生活設計力、2.健全な金銭感覚、3.働く意義の3点を柱として、以前からの学校のテーマであるコミュニケーション能力の育成のための「聴き合い活動」と「ポートフォリオ評価活動の工夫」を盛り込んだ独自の金融教育カリキュラムを作成し、各学年の教科等、総合的な学習の時間の中で系統的に指導を行ったことが報告されました。
3.講演会
公開授業と研究発表の後、ダニエル・カール氏から、「金融教育を考える~日米の生活経験を通して~」と題する講演が行われました。ダニエル氏は、6歳の時からお父さんと契約を結び “chore”(家事)を手伝うことでおこづかい(収入)を得るようになったと話されました。アメリカではおこづかいは労働の対価としてもらうことが普通で、クレジットカードの使い方やローンの組み方なども親から教えてもらい小さなときから金銭感覚を養っている、と語られました。一方、日本では「お金」の話はタブー視され、家庭でも学校でも教えないまま社会に巣立った若者がトラブルに遭っていると話し、生きていく上で必要な「お金」の話を家庭や学校で沢山話して子ども達を巣立たせて欲しい、と締めくくられました。
講演に参加された方は、山形弁でユーモアを交えた講演に笑顔を見せながら、日米の教育の違いに深くうなずいていました。また、「日米の家庭、学校での金銭教育の大きな違いを、ダニエル氏の実体験を通じ、とてもおもしろくリアルに知ることができました」、「家でも教えていかなければならないと思いました」といった感想が寄せられました。
4.プログラム
- 13:50~14:35
- 公開授業
(1)「みんなの にこにこ だいさくせん」(1年生 生活科)
(2)「かいものゲームをしよう」(2年1組 算数科)
(3)「えんぴつは何さい」(2年2組 道徳)
(4)「くらしをささえる町で働く人々」(3年生 社会科)
(5)「エコエコ大作戦」(4年生 総合的な学習の時間)
(6)「じょうずに使おう 物やお金」(5年生 家庭科)
(7)「チャレンジ修学旅行」(6年生 総合的な学習の時間)
(8)「3Rマネー大作戦!」(おひさま学級 生活単元学習) - 14:50~15:05
- 主催者挨拶
福岡市立香陵小学校校長 安松広子 - 研究発表
「人やもの、お金を大切にする子どもを育成する金融教育の実践」
発表者:福岡市立香陵小学校研究主任 前島容子 - 15:05~16:25
- 講演「金融教育を考える~日米の生活経験を通して~」
講師:ダニエル・カール氏 - 16:25~16:30
- 閉会挨拶
福岡県金融広報委員会事務局長 髙山浩之