金融教育公開授業
2017年度 金融教育公開授業
愛知県金融広報委員会
愛知県立一宮商業高等学校
金融広報中央委員会
愛知/一宮市の実施報告
「金融教育公開授業 in 一宮(一宮商業高等学校)」(11月22日開催)
愛知県立一宮商業高等学校は、昭和13年に愛知県一宮商業学校として創立され、創立80周年を迎える県内屈指の歴史ある単独商業高校です。
学科は、国際ビジネス科、経理科、情報処理科の3つがあり、1年次には共通した教科・科目を履修し、2年次からは生徒の進路希望、興味・関心および適性等を踏まえつつ、生徒は各学科に分かれます。また、生徒は資格取得に精力的で、こうした生徒の取り組みを積極的にサポートするための教育の充実を図っています。地域の活動に積極的に参加し、近隣の大学とも連携するなど、地域に根ざした商業教育を行っています。
平成28年度に愛知県金融広報委員会から金融教育研究校の委嘱を受けました。本年度は2年間の集大成として、11月22日(水)に金融教育公開授業を開催し、公開授業と生徒研究発表、研究報告、弁護士の住田裕子氏による講演会を行いました。
▼ 参加者内訳:
1.公開授業
(1)「資金調達」
1年3、5組は、「資金調達」と題して、共同出資による株式会社を立ち上げ事業を行うゲームによって、直接金融による資金調達を疑似体験しました。その後、各グループ内で、資金調達における間接金融と直接金融の機能等を比較しその違いや特徴などを整理のうえ、グループ毎に発表を行いました。こうした取り組みを通して、会社はどのように資金を調達し、経済活動を行っているのか、理解を深めました。
(2)「資金繰りの計算」
2年5組は、「資金繰りの計算」と題して、自分の理想とする将来の生活設計が現実的であるかどうかを、資金繰りの計算を通して考える授業を行いました。具体的には、人生において最も大きな買い物である住宅購入を題材とし、資金繰りの計算で用いる財務関数を駆使して住宅ローンの返済計画を作成しました。ここで作成したいくつかの返済計画を比較することにより、自ら立てた返済計画が現実的であるかどうかを各自で検証しました。
(3)「財務諸表の活用」
3年3、4組は、「財務諸表の活用」と題して、これまでグループに分かれて財務諸表を活用しながら企業の価値を評価し、株価が割高か割安か判断してきました。本時は、これまでの取り組みの中で投資することに決めた企業について、なぜ投資すると決めたのか、判断材料等を交えてグループ毎に発表しました。各グループのプレゼンテーションの評価も行いました。
(4)「POP広告の作成および株式会社の資金を集めるための事業計画」
3年5、6組は、グループ毎に、自ら考案した商品の良さを消費者に伝えるためのPOP広告を制作しました。また、そのPOPを用いて、自分たちが立ち上げた株式会社に投資を呼び込むためのプレゼンテーションを行いました。さらに、プレゼンテーションを判断材料にしながら、各自が投資したい企業を判断しました。このようにして、資金調達に際して投資家や消費者にどのようにアピールすればよいのかについて学びました。
2.生徒研究発表
(1)「高校生の身近な税金について」
国際ビジネス科企業経済研究班は、「高校生の身近な税金について」を研究テーマとし、税金について詳しく知るため、一宮税務署でインターンシップを行いました。法人の所得税や個人の医療費控除額を算出し、自分たちの生活が様々な税務と関わっていることを実感しました。また、税金の徴収および還付においてどのようなルールがあるのかなどについて学びました。最後に、消費増税に関するSWOT分析を行った上で、消費税率を10%に引き上げることの賛否について活発な議論を行いました。
(2)「高校生の作ったお金の本」
経理科セールスデザイン班は、「高校生の作ったお金の本」を研究テーマに、生徒が地元でお金に関する調査を行い、そこでわかったことを一冊の本に取りまとめました。この本の内容について、以下のとおり紹介しました。
まず、一宮市内の会社社長にお金の使い方や考え方についてインタビューを行いました。その内容を「一宮の社長に聞いてみた」と題して紹介しています。
また、「お得情報」として、次の2つのテーマを取り上げ、調査結果を発表しています。1つ目は、国内ハンバーガーチェーン4社の各店舗で同じ内容のハンバーガーセットを複数回買って計測した商品の大きさ、重さ等の比較分析結果です。各店の特徴やおすすめポイントも整理し、消費者にお得な情報を提供しています。
2つ目は、大規模小売店の地元店舗2店の店長に対し、どうしたらお得に商品を購入できるか等についてそれぞれインタビューを行いました。その内容を紹介しています。
さらに、「一宮の人達に聞いてみた」として、地元の若者・主婦・高齢者別に、貯蓄状況や子どもの人数と収入状況の関係、老後への意識と備え、年金だけで生活が出来るかといった観点からアンケート調査を実施しました。この調査を通して回答者から多くのアドバイスをいただきました、特に若い頃から貯蓄を行うことの大切さを学べました、と発表しました。
3.研究報告
平成28年度に金融教育研究校の委嘱を受け、金融リテラシーを身に付けることをテーマに研究を進めてきました。
1年目はライフプランの作成など人生設計について考えることを学習し、2年目は税金など社会人として必要な知識を習得しました。こうした取り組みを通じて、金融について様々な知識を身に付けることの重要性を再認識しました、との報告がありました。
最後に、「本校の2年間について」として、観光プロモーション講座の生徒が制作した映像と音楽を使いながら、この2年間の研究の振り返りが行われました。
4.講演会
研究報告の後、弁護士の住田裕子氏から、「男女共同参画社会とキャリアアップについて」と題する講演が行われました。
冒頭、人口減少による労働者不足が既に始まっているが、「男性は仕事、女性は家庭を守るべき」といった固定的な性別役割分担の意識は、昨年漸く「反対」派が「賛成」派を上回ったところです、と話を始められました。
続いて、日本は世界の中でも特に「女性は家庭を守るべき」という考えが根強いものの、これまでの世代と異なり、人口減少のため女性も働かなければ労働者不足は解消されません、と訴えられました。また、正規・非正規社員の別、出産休暇の有無による女性の生涯年収の格差に触れ、働くことは大変ですが働き続けることが大切です、と話されました。
最後に、社会に出て大切なのは、学力ではなく、人間力です、と結ばれました。
生徒からは、「働くことの重要さと、仕事と家事の両立について考えさせられた」、「社会がこの先どうなっていくのか興味が湧いた」など、たくさんの感想が寄せられました。
5.プログラム
- 10:00~10:30
- 開会式
主催者挨拶
愛知県金融広報委員会 常任委員 平松哉人
愛知県立一宮商業高等学校 校長 小川芳範 - 10:50~11:40
- 公開授業
(1)「資産調達」(1年3・5組 ビジネス基礎)
(2)「資金繰りの計算」(2年5組 ビジネス情報)
(3)「財務諸表の活用」(3年3・4組 財務会計Ⅱ)
(4)「POP広告の作成および株式会社の資金を集めるための事業計画」(3年5・6組 広告と販売促進) - 12:50~13:30
- 生徒研究発表
(1)「高校生の身近な税金について」
(2)「高校生の作ったお金の本」 - 13:30~13:45
- 研究報告
発表者:愛知県立一宮商業高等学校 商業科統括主任 岡崎千賀子 - 13:45~14:20
- 質疑応答
- 14:20~14:25
- 指導助言
愛知県教育委員会高等学校教育課 指導主事 渡部純次 - 14:25~15:35
- 講演「男女共同参画社会とキャリアアップについて」
講師:住田裕子氏 - 15:35~15:45
- 閉会式
閉会挨拶
愛知県立一宮商業高等学校 校長 小川芳範