金融教育公開授業
2017年度 金融教育公開授業
静岡県金融広報委員会
静岡県立浜松湖北高等学校
金融広報中央委員会
静岡の実施報告
「金融教育公開授業 in 浜松(浜松湖北高等学校)」(11月21日開催)
静岡県立浜松湖北高等学校は、開校3年目を迎え、全国的にも珍しい普通科と専門学科(農業科、工業科、商業科)を設置した学校です。「地域の資源や人材を活用し、特色ある教育活動を通して、豊かな教養と確かな勤労観を持った、地域社会の発展に貢献できる人材を育成する」を教育目標として、4学科連携組織「湖北MAGIC*」で様々なプロジェクトに取り組んでいます。
*「MAGIC」はMultiplied-education(連携)by Agricultural(農業),General(普通科),Industrial(工業)and Commercial(商業)の略。
平成28年度より、静岡県金融広報委員会から金融教育研究校の委嘱を受け、金融教育に関する各種の活動を行ってきました。
11月21日(火)に金融教育公開授業を開催し、普通科と専門学科の強みを活かした各種の公開授業と、池谷裕二氏による講演会を行いました。
▼ 参加者内訳:
1.公開授業
(1)「貨幣とは何か、あるいは、どうすれば儲かるのか」(2年生 国語総合)
商業科クラスを対象に、「ホンモノのおカネの作り方」(岩井克人著)や、世界の通貨供給量に関する新聞記事を通して、現代の「おカネ」の問題について考える学習をしました。
(2)「市場経済の仕組み」(1年生 現代社会)
大手コンビニエンスストア4社で、どのような非価格競争が行われているか(価格以外にどのようにして他社との差別化を図っているか)について、グループワークを通して考察しました。消費者が価格以外の要因(たとえばデザイン、味、特典など)も考えながら購買活動を行うことを学びました。
(3)「表とグラフの活用」(3年生 社会と情報・数学)
3年生の特進クラスを対象に、お金を借りる時のために、エクセルを使って金利(単利と複利)を計算し、返済期間によって違いが出ることを学びました。
(4)「環境を破壊する損害はいくら?」(2年生 生物基礎)
「生態系と物質循環」の単元で、ゴミ処理と下水処理が環境を破壊し、莫大な処分費用を要している理由や、今後どうすべきかについて、グループワークで意見を出し合う形で考える学習をしました。
(5)「Which is a better place?」(2年生 コミュニケーション英語Ⅱ)
2年生の特進クラスを対象に、東京や外国で暮らす場合の生活費(食費、住居費、光熱費など)について、グループ毎に情報収集し、都市・国により生活費にどのような違いが出るのかを学びました。
(6)「医療制度その活用」(2年生 保健体育)
国民皆保険制度を他国と比較し、日本の医療費の現状を知ることで、生活設計の重要性を学びました。
(7)「ライフスタイルと収支」(1年生 家庭基礎)
「教育・住宅・老後」が人生の3大費用であることを学び、生活設計で何を重視するのか、計画的な資金の備えをするために何が必要かについて、グループ毎に発表しました。
(8)「野菜の価格」(2年生 野菜)
野菜の価格について、一般的な売り場での価格と、校内販売での価格の違いをグループ毎に発表しました。同じ野菜を扱っているのに価格に違いが出るのはなぜか、「適正価格」はどのようなものかを考え、賢い消費行動についても学びました。
(9)「ものができるまで」(2年生 機械設計)
機械を開発・製造するうえで欠かせない「ボルト」について、製造コスト(材料費、人件費、電気代など)と値段の関係や、売上げと利益の関係について学びました。
(10)「ネットワーク決済の光と影」(2年生 ビジネス情報)
「ビジネス情報」「財務会計」の両面から、クレジットカードのメリットとデメリット、不正使用について学びました。主体的に共同学習に取り組む「知識構成型ジグソー法」を用いて、ネットワーク決済の特徴について考えを深めました。
2.研究発表
当校は、金融教育研究校の委嘱を受け、(1)「自分の人生において、必要となる『お金』のことについて、将来考えられる様々なリスクや消費者問題などの事態に対処する知識や技能を身につけることによって、より良い生活設計を立て、自立する力を養う」、(2)「金融や経済の仕組みを学び、社会に貢献できる態度を身につける」を目標として、金融教育の研究に取り組んできました。
(1)については、各教科において、授業の中で生活設計・家計管理に関すること、消費生活・金融トラブル防止に関する内容を扱い、外部講師による講演も行いました。
(2)については、「湖北MAGIC」の活動を通して、地域の企業とも関わりながら企画立案を行い、商品の販売などを通して、キャリア教育に取り組みました。
発表では、「湖北MAGIC」の活動実績について、文化祭での物品販売体験(原価を抑えて利益が出るように販売価格を計算したことなど)、マグデザインラボの花澤啓太氏による講演(「企画デザインから製造に関するコスト管理」)なども紹介されました。商標登録を予定しているマスコットキャラクター「こほくま」も登場して、キャリア教育などへの取り組みがプロジェクト毎に報告されました。
3.講演会
東京大学薬学部教授の池谷裕二氏から、「誰もが持っている『ココロの盲点』にどう向き合うか~お金に騙されないために~」と題する講演が行われました。
講演では、大脳生理学を専門分野とし海馬の研究をされているご経験から、私たちの脳がいかに数字に騙されやすいか、思い込みで物を見るかについて、わかりやすく説明していただきました。
また、高校生へのメッセージとして、「できる」ようになるためには、論理や言語(主に学校の勉強)だけではなく熱意(好奇心)が大切であることや、「失敗は成功のもと」との諺が持つ重要な意味、学習は目で見るだけでなく手で書いた方が定着することが実証されたことなども説明してくださいました。
これらのお話の随所に、研究成果や多義図形(だまし絵)などを沢山織り込んで、参観者が引き込まれる内容となっていました。
最後に、AI(人工知能)が仕事を奪う世界が来ることにも触れ、将来の夢について、自分のポテンシャルを止めるのではなく、どのような環境にも柔軟に対応できる(順応できる)ことが大切であり、そのためには知識力が必要です、と話を締めくくられました。
参加した生徒からは、「クイズ形式でわかりやすく解説していただけた」、「人の思い込みによる錯覚がよくわかる興味深い内容だった」、「これからの進路を考えるうえで大変参考になった」といった感想が寄せられました。
4.プログラム
- 12:35~13:25
- 公開授業
(1)「貨幣とは何か、あるいは、どうすれば儲かるのか」(2年生 国語総合)
(2)「市場経済の仕組み」(1年生 現代社会)
(3)「表とグラフの活用」(3年生 社会と情報・数学)
(4)「環境を破壊する損害はいくら?」(2年生 生物基礎)
(5)「Which is a better place?」(2年生 コミュニケーション英語Ⅱ)
(6)「医療制度その活用」(2年生 保健体育)
(7)「ライフスタイルと収支」(1年生 家庭基礎)
(8)「野菜の価格」(2年生 野菜)
(9)「ものができるまで」(2年生 機械設計)
(10)「ネットワーク決済の光と影」(2年生 ビジネス情報) - 13:40~13:45
- 開会挨拶
静岡県金融広報委員会会長 小髙新吾 - 13:45~14:00
- 研究発表
4学科連携組織「湖北MAGIC」の活動実践の発表 - 14:00~14:10
- 指導講評
静岡県教育委員会 高校教育課 指導第2班 教育主幹 花崎昌史 - 14:10~14:15
- 校長挨拶
静岡県立浜松湖北高等学校長 武田知己 - 14:30~15:50
- 講演「誰もが持っている『ココロの盲点』にどう向き合うか~お金に騙されないために~」
講師:池谷裕二氏