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第3回「金融に関する消費者教育セミナー」(京都)

講演「学校教育における金融に関する消費者教育」

「生きる力」を育む教育と金融に関する消費者教育1

吉冨芳正

そこで、1番目の話ですけれども、生きる力を育てる教育を重視しようということで学習指導要領を改訂しまして、小・中学校は14年度から全面実施、高校は15年度から学年進行で実施をお願いしているところです。


そこでは、なぜ今までのようなやり方ではだめだと言っているのか。「生きる力」というものを打ち出しましてから、経済的な状況の変化等もあって、学力問題について盛んに議論されるようになりました。文部省は揺れたり方針転換しているのではないかとも言われました。しかし、根底にある考え方は変わりませんので、それを申し上げたいと思います。

そこで、わが国の学校教育を振り返ると、戦後、大変困難な時代から教育の機会均等と教育水準の維持向上を目指して、私どもの先輩達は大変な努力をされてきたわけです。だいたい昭和30年代前半には今の教育制度の大筋ができて、ほぼ定着を見るようになりました。

その後、経済が高度な発展を遂げていく中で、私たちの生活も豊かになりました。教育についてみると、例えば高校への進学率が大きく伸びていくというふうになりましたし、教育の中身も系統的な学習として整理されて、次に新しい概念も取り入れられて、教育内容の現代化ということが言われたわけです。

しかしながら、昭和50年代になってくると、子どもたちの様子の中にも校内暴力とかいじめとか非行の問題が表に出てくるようになりました。また、学校教育でも受験競争や落ちこぼれといった問題が言われるようになりました。新幹線授業とか、七五三とか、そういう言葉も出てきたわけです。

学校教育はこのままではだめなんじゃないかと、学校教育の自由化論とか、外国でもイリッチという人が言いました脱学校化の社会といった論が紹介されたりしました。そうして、学校教育の見直しの機運が高まったわけです。つまり、戦後一生懸命やってきたけれども行き詰まってきた。それはなぜかということを考える必要が出てきたのです。

その後、臨教審等が走り始めて、今日に至る教育改革の大きな流れが出てきました。臨教審では個性重視とか生涯学習社会への移行とか、そして、時代や社会の変化への適切な対応ということが言われました。

いま「生きる力」の育成を重視しようと言っていますけれども、これは平成8年の教育課程審議会の答申から言われ始めまして、その後、平成10年の教育課程審議会の答申、ここで教育課程の基準の改善の中身が提言されて、12年の同じ審議会の答申で評価についての転換の答申をいただいています。これらの資料は文部科学省のホームページの中にありますので、おひまなときにはたどっていただくと変遷がわかってよろしいかと思います。

そういうことで、「生きる力」の育成を重視しようと言っているのですけれども、それは追いつけ追い越せということでやってきて豊かな社会を実現して、その後、いわゆるバブル経済が崩壊して、先のことがいよいよ読みにくくなった、見えなくなった。国際的には大競争時代と言われまして、その中でどうやって生きていくかということが課題になっているわけです。

そして、何より子どもたちの状況を踏まえて考えることが大切です。子どもたちの状況というのは、不登校や問題行動の中にあるということもそうですし、例えば学力の問題にしても次のようなことがあります。

ある高等学校の入試担当の先生から聞いたのですけれども、これは点数を採らせる問題だと思って、「2-8」という問題を入試で出したのだそうです。これならみんな正解して点数を採ってくれるだろうと思ったのだそうですが、案に相違して非常によくなかったそうです。そして、来年はどうするかという会議で、「2-8」に棒を1本縦に足して「2+8」にしたらよかろう。これなら点数が採れるだろうと、みんなで「アハハ」と笑ったんだそうですが、問題は笑い事ではないわけです。

小学校で6年間、中学校で3年間、算数、数学を学んできて、負の数の計算は中学校の内容ですが、それでもできない。そういう子どもたちは9年間、どういう思いで算数の授業、数学の授業を受けてきたのでしょうか。やはり学校教育に責任があるのではないでしょうか。そういうことを厳しく見直さなければいけない。

基本的な知識や技能をしっかり教えようと思って、先生方が一生懸命努力して下さったのだけれども、なかなか難しい現状に来ている。知識の剥落化ということが言われまして、私もそうですけれども、試験が終われば全部忘れてしまうわけです。大学生に大学入試の問題をやらせてみるとガクッと点数が落ちてしまうわけですね。そういう状況にある。

知識や技能は大切です。これは変わるところではないのですけれども、それをどういうふうに自分のものとして、自分の生活、生き方、考え方に使っていけるかというところが大事でしょうという議論をしているわけです。

しかし、昨今の学力問題で、例えば知識と思考力はどちらが大事なのかといった話になりがちです。私どもは、知識や技能とともに、自分で考える力とか判断する力とか表現する力も、みんな基礎・基本であり、一緒に身につけさせたいと思っているわけですけれども、知識を軽視するのかと言われるわけです。

いや、そんなことはない。知識を自分のものにするために考えながら学んでいくことが大事ではないかと言ってきています。この先、それをどう実現するかといった議論を私どもはしたいと思っているわけです。

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