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先生のための金融教育セミナー

2019年度 先生のための金融教育セミナー(8月・東京)

【高等学校向け】

3.分科会(金融教育の事例紹介とワークショップ)

高等学校分科会1

進行・コメント
教職員支援機構 次世代教育推進センター 大杉 昭英 センター長
実践発表およびワークショップ(1)

「人生100年時代をどのように生きるのか、主体的なキャリアデザインの描き方~『LIFE SHIFT』を題材とした金融経済教育の実践~」
(3年 公民科)
東京都立国際高等学校 小松 純 教諭

実践発表

本校は海外帰国生徒や外国人生徒が全体の3割を占める高校です。「人生100年時代」と言われるようになっていますので、その原典である『LIFE SHIFT』(リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット著)を題材として、高校3年生の公民科において金融教育の実践を行いました。キャリア教育の観点も入れています。

この実践は3時間で行いました。1時限目は「人生が100年になったらどんなことが想定されるのか?」がテーマです。現在の「教育→仕事→引退」の3ステージが人生100年時代に変わることに伴いどのような課題が生じるか、自分ならどうするかを考えて発表しました。

2時限目は、『LIFE SHIFT』では人生を「マルチステージ」と捉えていることを紹介し、100年を生き抜くためには何が大切なのかを考えました。その際、日本型の雇用慣行や働き方が足かせにならないか考えてみました。海外の働き方の例を紹介し、生徒にも適宜発表してもらいました。

3時限目には、日本型の働き方と海外の働き方のどちらが自分にとって良いか、生徒にそれぞれ選んでもらいました。そのうえで、どちらの場合でもセーフティーネットとして社会保障が必要であることに気づいてもらいました。また、マルチステージにおいて個人の働き方が多様化することに対して、社会として、また個人としてどう対応すべきかを考えました。最後に、「人生のシナリオを描こう!」とのテーマで、人生の転機となる年齢を2つ設定し、仕事・家族・その他(社会)の観点から、どのようなシナリオを描けるか記載してもらいました。

生徒は全体を通して積極的に取り組みました。実践後の感想文からも、この実践が生徒の興味・関心に響き、キャリアデザインを主体的に描くことに結びついたことが伺われます。

ワークショップ

ワークショップでは2つのテーマを扱いました。まず、「人生のシナリオを描こう!」とのテーマで、生徒が行った「人生の転機となる年齢を2つ設定し、仕事・家族・社会の観点から、どのようなシナリオを描けるか記載してみましょう!」とのワークを、参加者の先生方に実践していただきました。その際、自分自身にあてはめてワークシートに記載するのではなく、「生徒がどのように回答するかを予想する」との条件で記載していただきました。グループ別に作業した結果を発表したあと、小松先生が国際高校の生徒の回答を紹介されました。

次に、「マルチステージでの生き方」とのテーマで、マルチステージにおいて個人の働き方が多様になる中で、「社会として」、また「個人として」、どのような対応が必要になるかを考えました。グループ内で意見を伝え合い、優先順位をつけて整理しました。各グループの代表が発表を行った後、小松先生が国際高校の生徒の回答を紹介されました。

参加者からは、「100歳をリアルに想像するのは難しい」、「予想ではなく願望に近いものになる」、「人間関係を大切にしながら、スキルを磨いていくのが理想」、「他のグループの発表や高校生の実際の回答を聞くことで、自分では気づかなかった視点がいろいろあることがわかり新鮮だった」といった感想が聞かれました。

本実践事例は、第15回金融教育に関する小論文・実践報告コンクール(2018年)優秀賞作品として当ホームページに掲載されています。

第15回金融教育に関する小論文・実践報告コンクール(2018年)

コメント

大杉先生から、次のようなコメントがありました。

小松先生の授業は、「個人から社会へ」という流れがよく工夫されています。

まず「人生のシナリオを描こう」ということで、生徒に「個人」として自分の人生をどう生きるかを考えてもらいます。次に「マルチステージでの生き方」として、個人の働き方が今後一層多様化する(マルチステージ)ことに伴いどのような対応が必要になるか生徒に今後の課題を書き出してもらいます。その際には、「個人として」必要なことにとどまらず、「社会として」必要なことも書き出してもらっています。

個人として自分の人生のシナリオを描くのは、「個別」の世界です。意欲ある生徒が「自分の老後に必要な資金は3,600万円」と算出してきた、と小松先生から紹介がありましたが、「自分は1,000万円で十分」という生徒もいるかもしれません。個々人は多様ですので、そこは「個別」の世界です。「自分の幸福追求のための自己決定の世界」といえます。

そこで、さらに「社会として必要なこと」まで考えてもらうと、たとえば子育て、年金、介護といった課題が取り上げられることとなります。これらについてどうすれば「公正さ」を保つことができるかを考えることになり、社会のしくみを考えることに結びつきます。それにより生徒の成長を促すことができます。すばらしい授業の流れだと思います。

高等学校分科会1の模様①

実践発表およびワークショップ(2)

「金融の種類や特徴を学ぶ」(1年 公民科)
山梨県立上野原高等学校 山下 亮 教諭

実践発表

高校1年生の公民科で、「金融の種類や特徴を学ぶ」と題して、金融の役割を理解してもらうための授業を2時間で行いました。目標としたことは、「金融を通して、世の中を住みやすくすることができるのだ!」ということを、「実感をもって」生徒に理解してもらうことです。

このスライドは上野原駅からみた風景です。「駅前が再開発される」と聞いて生徒は楽しみにしていたのですが、実際にはラーメン店とホームセンターが建っただけで、生徒はがっかりしました。そこで、駅前の再開発をしてもらうために金融の力が使えないかを生徒に考えてもらいました。具体的には、駅前を再開発してもらうとしたら、「女子高生社長Sさん」と「上野原市長Eさん」のどちらに頼みたいか、銀行の立場で融資するとしたらどちらに融資したいか、投資家の立場で投資するとしたらどちらに投資したいかを考えてもらいました。これにより、融資(間接金融)に比べ、投資(直接金融)は自分たちの意思を反映しやすいことを理解しました。

生徒からは、「株式を買うことで、自分の意思を企業に伝え、地域や社会を良くすることに貢献できることがわかった」といった感想が聞かれました。

ワークショップ

ワークショップでは、まず、参加した先生方に「金融の役割」を題材としたアクティブ・ラーニング型の授業を考えていただきました。授業のねらいや目的を決めたうえで、アクティブ・ラーニングの手法(ロールプレイ、ゲーム、ディベートほか)を選び、実際の授業の指導案を考えていただきました。

次に、上野原高校での実践を追体験していただきました。生徒の立場になって、女子高生社長と上野原市長のどちらに銀行として融資したいか、投資家として投資したいかを考え、直接金融と間接金融の違い、株式投資の有効な活用方法について考えていただきました。

コメント

大杉先生から、次のようなコメントがありました。

山下先生の授業目標は、間接金融と直接金融について生徒に「実感をともなって理解してもらいたい」という点にあり、実践報告では、まず「2例のうち、どちらを支援したいか?」という「感情面」が重視されています。一方、個人が預金したり、株式を買ったりすることは、個人が利益を追求する合理的な経済活動でもあります。こうした活動は、今回の授業の前に行われた授業ですでに学んでいます。このように、今回の授業は単元レベルで感情面、合理性の面から捉える必要があります。

また、生徒が「分かる」ということは、3つの側面から整理できます。「より多くの知識を持つ」、「理論で捉える」、「納得する」です。「知識」が増えることはやはり有用です。さらに、「理論」というサーチライトを照らすことによって私たちは対象を捉え、解釈することができます。その上で、「納得する」ことも大変に重要です。山下先生が「実感をともなって理解してもらいたい」とおっしゃっているのはこのことです。そのためには今回のようなアクティブ・ラーニングが効果的です。金融広報中央委員会の『金融教育プログラム』でも、「納得してもらう」ことに役立てていただけるように、「重要な概念」を整理したうえで、体験型の実践事例を多数掲載しています。

高等学校分科会1の模様②

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