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先生のための金融教育セミナー

2019年度 先生のための金融教育セミナー(8月・東京)

【高等学校向け】

3.分科会(金融教育の事例紹介とワークショップ)

高等学校分科会2

進行・コメント
上越教育大学大学院 小高 さほみ 教授
実践発表およびワークショップ(1)

「『シゴト』をつくる!?」(3年 家庭科)
北海道札幌東陵高等学校 野尻 千裕 教諭/佐藤 豊記 教諭

実践発表

本校では、1年次に「家庭基礎」を全員履修し、2年次以降は、食生活分野に特化した「フードデザイン」などの選択科目を用意しています。「フードデザイン」では、日常生活を食生活、食文化の視点からデザインすることを目標として、その知識や技術を習得し将来の職業観を養いながら、仕事とはどのようなものなのかを学習します。今日は、3年次で行った「フードデザイン」の授業を発表させていただきます。

この科目では、「外部講師招聘事業」として、毎年外部から講師を派遣していただき、「『シゴト』をつくる!?」をテーマに、ワークショップに取り組んでいます。まずは「自分の好きなことを仕事にできるか」を考え、次に、「それを仕事にするとしたら?」というアプローチに入ります。今回は、金融教育研究校の委嘱を受けたこともあり、金融教育を深めるためにも公民科(政治経済担当)の佐藤教諭に授業に参加してもらい、起業についての取り組みも行いました。

佐藤教諭の授業では、まず公民科の視点で、企業は利益を上げるだけでなく、社会的責任がともなうことを、また、政治経済の視点から、「株式の発行」、「ステイクホルダー」と「シェアホルダー」を解説していただき、株主・従業員・消費者などの企業の利害関係者全体のことや、その中でどうバランスを取っていくことが企業にとって大事であるかについても話していただきました。

2018年度の公開授業は、生徒を3つのグループに分けて行い、「若者向けアプリ制作会社」、「家事代行業」、「スポーツ代行業」のアイデアが出ました。金融教育の目的をよりクローズアップしていたのが「スポーツ代行業」で、スポーツの知識や技術がほしい人・団体に、人を派遣するというものです。アルバイトの平均賃金や社会人の学歴別初任給などから、Aランクの元プロ野球選手からEランクの素人まで、それぞれ利用料(儲け)を導き出していました。

今回の成果として、他教科との連携を通じて生徒から「家庭科と公民科で習うことの結びつきがわかった」という感想がありました。どの分野でも金融や経済はとても大事な視点だと思いますので、またいろいろな取り組みをしていきたいと思います。

ワークショップ

「『シゴト』をつくる!?」をテーマに、グループワークとプレゼンテーションを行っていただきました。各自が「自分が好きなこと・やりたいこと」を整理した上で、グループとして1つのテーマに絞りアイデアシートをまとめていただきました。アイデアシートの内容は、仕事の内容や企画の名称、ビジネスモデル、成功させるための作戦や必要なもの、どれくらい儲かるか、です。

参加者からは、「薬膳料理が食べられる猫カフェ」、「地域を活性化するトライアル・カフェ」、「インバウンドに目を向けた古民家を活用した日本食の調理体験」、「全国の廃校を、レストランや通販の倉庫などで有効活用するマッチングサービス」といったアイデアが出され充実したワークショップとなりました。

コメント

小高さほみ先生より、次のようなコメントがありました。

野尻先生、佐藤先生のご発表は、金融教育の特徴の一つである教科間の連携をあらためて提起してくださいました。金融教育を軸とした教科横断的な学習は、現代的な問題を考え、課題を解決していくための意義ある学習だと思います。例えば、子どもたちは家庭科と公民科とを分けて考えているかもしれませんが、家庭科は生活事象全般を対象とし、生活経験と他教科での学習経験をつなげて理解を深めることのできる教科です。金融教育を軸にした授業実践で様々な学習経験を「つなげる」ことで、断片化していた子どもたちの知識が結びつき、見方・考え方が広がると思います。

ワークショップでは先生方が課題解決に熱中し、和気あいあいと良い表情をされていましたが、新たな知識を構築する活動が楽しく、意味ある学習であることを実感されたのではないかと思います。また、今日のご提案には、そのまま授業で実践したいと思うアイデアがたくさんありました。金融教育を軸にしながら、これからの子どもたちが向き合う課題の解決策を一緒に考えて、社会をつくっていく。そのスタートに立たせてくれた、分かりやすくて楽しいワークショップだったと思います。

高等学校分科会2の模様①

実践発表およびワークショップ(2)

「自主性を育む金融教育〜オリジナルブランド商品の販売実習を通して〜」(1年 家庭科)
福岡県立東鷹高等学校 阿部 功一 教諭/井上 泰博 常勤講師

実践発表

本校はかつて炭鉱の町として栄えた福岡県田川市にあり、普通科と総合生活科があります。90周年を迎えた平成28年に、「がんばっ東鷹!」をキャッチフレーズに、「りっぱな社会人を育てる」を目標に掲げました。今日は、平成29年度に総合生活科1年生で行った取り組みをご紹介します。

まず、本校の金融教育の主題を設定するために1年生全員にアンケートを行いました。その結果、「雇用形態など、働くことについての知識不足」「貯蓄や資産運用に関する知識不足」が、課題として見えてきました。また、地域的に教育格差があり、厳しい家計状況にある生徒がいることもわかりました。このままでは、生徒たちが将来、金融リテラシー不足から貧困に陥るリスクがあると考え、テーマを「社会生活の場で自主的に意思決定する力を養う金融教育」とし、目的を達成するために、「比較する」、「選択する」、「自分の意見を持つ」という3つのキーワードを掲げました。そしてそれを念頭に、「生活に対応した商品・サービスの提供」を実践しました。

本校には、オリジナルブランド商品として、「東養スープ」、「唐養飴」、「田川めし」があり、例年、道の駅や毎年11月に行われる「炭鉱節まつり」で、総合生活科の生徒たちが販売実習を行っています。平成29年は、「炭鉱節まつりで過去最高の売上を達成すること」を目標に、「販売目標個数」と「態度目標」を設定しました。「販売目標個数」については、過去3年間の「販売人数・天気・販売個数」から販売結果を振り返り、今回の販売人数と天気から目標個数を設定しました。「態度目標」についても、過去3年間の販売実習の記録を振り返り、「笑顔の接客が大切」、「お金の計算は正確に行う」といった立ち振る舞いや挨拶、身だしなみ、言葉遣いなどの目標を設定しました。生徒たちの頑張りの甲斐あって、「唐養飴」は目標を達成することができました。

今回の販売実習を通して、生徒たちは意識的に挨拶するようになったり授業中の言葉遣いに気をつけるようになったりと、普段の自分の在り方を見直し、結果的に自主性の向上に繋がりました。今後の課題としては、生徒が主体となって販売戦略を練り、販売実習に臨めるようにしたいと考えています。そして、販売実習では成功したものの常設店では販売が難航している「唐養飴」のパッケージデザインの変更を1年生の授業で検討しているところです。

ワークショップ

グループに分かれ、オリジナル商品「唐養飴」の売上を今より上げるためのコンセプト作りをしていただきました。コンセプトの5つの要素のうち、ブランド名は「福岡県立東鷹高等学校」、商品名は「唐養飴」とし、キャッチコピー、セールスコピー、デザイン案のアイデアを出し合いました。

参加者からは、魅力的なキャッチコピーの案がいくつも出されたほか、「包装をとうがらしの形にする」、「炭鉱の町の石炭をイメージして、かち割りのキャンディにしたら面白いのではないか」といった案が出されました。「声を出して販売することに苦手意識があったり、上手く売れなくて落ち込んだりする生徒は?」という質問に、阿部先生からは「1年生のときに難しいなと感じた生徒も2年生では苦手なことを克服していることがある。そうした生徒の姿からも実践の効果を感じている」との回答がありました。

コメント

小高さほみ先生より、次のようなコメントがありました。

興味深い実践のご発表と楽しいワークショップでした。金融広報中央委員会発行の『金融教育プログラム』に、「金融教育の意義」として、「学校教育が子どもたちに培って欲しいと期待している能力として『自立する力』と『社会とかかわる力』を挙げることができる」と書かれています。今回のご発表は、特に社会とかかわる力に重点を置いたものだったのかなと思います。

また、今回の実践は、同じく『金融教育プログラム』に「金融教育の目標」として掲げられている「キャリア教育に関する分野」の中の「生きる意欲と活力」、「社会への感謝と貢献」とも密接な関係がありました。

ひとつの考え方として、21世紀の子どもたちにとって大切な能力に「キー・コンピテンシー(主要能力)」があります。OECDのデセコプロジェクトによると、コンピテンシーは、「単なる知識ではなく、技術や態度を含む複合的な力であり、さまざまな社会的リソースを活用して複雑な要求(課題)に対応することができる力」です。このキー・コンピテンシーには3つのカテゴリー(個人と社会との相互関係、自己と他者との相互関係、個人の自律性と主体性)があり、その枠組みの中心にあるのは「個人が深く考え、行動することの必要性」です。今回の「態度目標」はまさにここに当てはまるものだと思いました。

高等学校分科会2の模様②

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