やさしいデリバティブ
2 先物取引
2-2 先物取引のヘッジ利用
リスクヘッジとは将来の不確定要素の排除です。先物取引は、まず、こうしたヘッジを実現するため、すなわち、前の例のいくらになるか分からない将来の価格を確定し、心配の種をできるだけ小さくするために活用されます。サキコさんの取引もこれに当たります。
先物取引を用いたヘッジ方法
先物取引を用いたヘッジには、買いヘッジと売りヘッジがあります。
買いヘッジ
将来、商品を購入する予定があるけれども、価格が値上がりする恐れがある場合、先物取引で現時点において価格を決めて買う約束をします。このように、先物取引で買う値段をあらかじめ確定し、その商品の値上がりリスクをヘッジすることが、買いヘッジです。その商品の市場価格が、予期したとおり購入時点で値上がりしていたとしても、先物取引によって約束した価格で購入できます。
売りヘッジ
将来、商品を売却する予定があるけれども、価格が値下がりする恐れがある場合、あるいは、市場価格の下落とともに現在保有している資産の価値が目減りしてしまう恐れがある場合、先物取引で現時点において価格を決めて売る約束をして、値下がりのリスクをヘッジします。これが売りヘッジです。
ヘッジとはあくまでも、将来の不確実性を排除しようとする行為です。値上がりを心配して買いヘッジをしておいたけれど当初の心配とは逆に、価格が下落することだってあります。
その場合でも、価格や取引の採算をあらかじめ確定したという点に着目すれば、ヘッジは有効に働いたと考えられます。
また、これらの取引の多くのように、あらかじめ決められた決済日(満期日(*1)、限月(*2)または受渡し決済日(*3))に約束した価格で対象である原資産の授受を行う決済方法を「受渡し決済(*3)」といいます。
*1 満期/受け渡し決済期日がいつであるかを示す言葉です。満期までの間に反対売買をすれば、取引は終了するので、受け渡しをしません。逆に、受け渡し決済を望まないならば満期までの間に反対売買をしなければなりません。
*2 限月(げんげつ)/満期と同じ意味で、いつ売買するかを意味する言葉です。取引所で行われる先物取引では、上場商品ごと、さらにいつ受け渡しを行うかという限月(決済期日)ごとに取引を区分しています。
*3 受渡し決済と差額決済/約束の日に実際に対象商品と代金の受け渡しを行う決済方法が「受け渡し決済」です。先物取引では、受け渡しを伴わずに、当初行った取引の反対の取引(反対売買)を行って決済することもできます。この場合、買値と売値の差額の受け渡しによって決済することになります。この方法の決済を「差額決済(差金決済)」と呼びます。