金融教育フェスタ
金融教育フェスティバル2010
教員向けセミナー 実践報告
講師 : 井沼 淳一郎 氏(大阪府立福泉高等学校 教諭)
「高校で本当に必要な学びとは何か -スキルとネットワークの形成をキーワードに授業を変える-」
「働いて、もらって、使う」ことから入る金融教育
学校での授業の模様
2年間金融教育研究校の委嘱を受けて、この春終わったばかりです。委嘱を受けて有難かったのは、研究教育費です。大半は弁護士ら社会人の方を呼んでお話して頂くのに必要な支出に当てました。委嘱を受けた動機は、金融教育についての問題提起です。金融教育はお金の使い方に重点が置かれ過ぎているのではと思い、働いた分だけちゃんともらえているのかに目を向けさせたいと思いました。
うちの学校は全校生徒750名です。卒業までにやめるか、留年していく生徒が少なくありません。いろいろな理由がありますが、ここ2年間では家庭の経済状況の悪化が大変大きくなっています。就職希望の生徒は倍増し、求人票は半減しました。
生徒たちの勉強意欲は決して高くはありません。授業に集中させるためには、「本当に必要や」と思える、「学んで良かった」と思える勉強をさせるしかないだろうと考え、現代社会の授業を教科書通りではなくて、本当に必要なもので精選してつくってみました。前半の中心となったのが「高校生アルバイトのリアル」。本校の3年生の約8割の生徒は、3年間で何らかのアルバイトの経験があります。第三次産業の世界では高校生の労働力はなくてはならない存在になっているのではないでしょうか。
「雇用契約書をもらってみよう」という授業から入りました。もらうだけではなくて読むためには、労働基準法など法律の知識が必要です。時給計算等をしながら契約書や給与明細をどう見ていくかという勉強をした上で契約書をもらいます。そうしたら法律違反がたくさんありました。ある生徒は、バイトの先輩と一緒に店長と話して、最低賃金以下だった給料を変えてもらい、今までの分の差額もちゃんともらえました。この取り組みを通じて、生徒たちは、契約における権利と責任の大切さを実感を持って学んだと思います。
金融教育は、ちゃんと働いて、ちゃんともらって、ちゃんと使う、この3つの学びが大切だと思います。