金融教育公開授業
平成21年度金融教育公開授業(全国リレー講座)
東京都金融広報委員会
玉川学園中学部
金融広報中央委員会
東京(町田)の実施報告
「金融教育公開授業 in 東京(町田)(玉川学園中学部)」(10月26日開催)
玉川学園中学部は、東京都金融広報委員会より金融教育研究校(20~21年度)の委嘱を受け、「金融システム全体構造の理解」を研究テーマに実践に取り組んできました。
東京都内では6回目となる公開授業が10月26日(月)に、9年生(中学3年生に相当)社会科で行われました。当日は、「生きるヒントと未来への希望~明るい未来をみんなで創る~」をテーマに藤沢久美氏を講師に迎えて講演会を開催しました。その後、「『見えないもの』をみる~リスク!発見と解決」をテーマに、2クラスで公開授業を行いました。
当日は新聞社の取材もありました。
▼ 参加者内訳:
1.講演会
金融広報中央委員会の小林会長が、「皆さんが安心して健全な経済生活を営むためには、若いうちからおかねの果たしている役割やおかねと付き合う時に注意しておかなければならないこと、さらには、働くことの意味など、金融や経済についての基礎的な知識や判断力を身につけることが必要で欠かせないものとなっています」と挨拶を行い、続いて「生きるヒントと未来への希望~明るい未来をみんなで創る」をテーマに、藤沢久美氏による講演が行われました。
講演では、まず、「世界のこどもたちの希望」と題し、藤沢氏が開発途上国の飢餓問題に取り組むNPO活動のメンバーとして訪れた、中国やヨルダン、ルワンダなどの国の子どもたちの暮らしが紹介されました。訪れた国の子どもたちが、屋根のない学校で鉛筆もなく、電気や水道などもない中、「もっと勉強したい」といい、「勉強をして仕事を得て、お金を得たい」、「ここには自由がないので、勉強することで仕事につき、お金で『自由』を手にしたい」、「稼いだお金で親(や家族)に○○を買ってあげたい」と話していて、「貧しいが勉強をして実現する将来の夢を持っているので、みんな目をキラキラと輝かせていた」と、藤沢氏は話されました。
次に、生徒に対して「お金がいくらあったらいいか?」、「お金では買えないものは?」の問い掛けがあり、人の命や友人、家族などは、失ってしまったら二度と戻ってこないとても大切なものであることに生徒の意識を促しました。また、お金の役割について「ハンバーガーを買ったら、そのお金はどこへ行くのか?」を例に、買った時に払ったお金が、材料を輸入している国へ支払われたり、材料を作る人の給料になったりするなど、お金は、そのものだけに支払われて終わるのではなく、「世界につながっている」こと、特に、お金を使う際に、例えば、環境に配慮している企業の商品を選ぶだけで環境問題に多少貢献できるともいえ、そのときのお金の使い方が「どれだけ多くの人の役に立つのかを考えるだけで、世の中を良くすることができる」と説明されました。
最後に、働く(お金を稼ぐ)ことや仕事をテーマに、例えば、銀行はお金を安全に保管したい人とお金が必要な人をつなぐ役割があり、その他の会社や職業を考えてみても「困った人と困った人をつなぐ」のが仕事であり、職業を選択することで「世界をつなぐ」ことを考えようと呼びかけ、「未来は何も決まっていない、未来を創るのは私たち一人ひとりです」と締めくくられました。
講演について、生徒からは「自分たちがなにげなく物を買うために払っているお金が、世界につながっていることに驚いた」、「お金では買えないものをまず第一に考え、それからお金で買えるものを考えてみようと思った」、「ひとりひとりの行動が世界につながり未来を変えていけることにびっくりした」などの感想がありました。
2.公開授業
(1) 「リスクとは何か、今後50年間の人生を考える」(社会科)
自分の未来を書き込む「未来のタイムライン」の手法を使い、自分の未来を考えることを通して現状を振り返り、今後起こりうる社会のリスクを重ね合わせることによって「リスク」の性質を理解し、「リスクとは何か」と、自分の人生におけるリスクを考え、その特徴を理解する授業を行いました。
まず、誕生から現在15歳までの人生を生徒がそれぞれ振り返り、「自分の人生に影響を与えたこれまでの出来事」を記入しました。その後、自分のこれからの50年間(65歳まで)に起こるであろう個人的な出来事(大学入学、結婚、就職、結婚など)と、「国内外のこれから50年間に起こるであろう社会的な出来事」も考えます。次に、設定されたリスク(怪我をして働けない、家を建てる、日本大好況など)を自分の描いた未来に重ね合わせ、人生設計や資産への影響(例えば、結婚が遅れる、など)を考えて、発表しました。
生徒達は、人生には様々なリスクがあり、これらと自分たちの人生は関連が深く、特にマイナスのリスクを軽減するために備えるのが保険であり、リスクに備えるために資産(お金)形成の方法を考えることは重要であることを学びました。
(2) 「金融に関わる身の回りのリスクを考える」(社会科)
まず、どのような金融機関があり、どのように利用されているかをそれまでの授業で勉強したことを思い出しながら整理しました。利息、例えば、貸付け金利、預金金利、単利、複利などについて確認後、金融機関から100万円を借金してお金を増やす方法を考えてみることとしました。
まず、「借入」については、お金を借りようとしている人に対し、貸出をするかどうか考えます。親友や有名人の奥さん、ギャンブル好きのおじさんなどにお金を貸すか貸さないかを理由も含めてグループで話し合い、発表しました。その後、ゲストとして参加している銀行員から貸出審査のポイントを学びました。市中銀行から借金した場合や消費者金融から借金した場合の金利や担保の必要性など両者の違いについて説明を受けました。
その後、投資のしかたと投資方法による違いを考えてみました。投資方法としては、株式、為替取引、債券があること、投資対象によってどのような結果が見込まれるかを予想し、借金のリスクと投資のリスクについて考えを巡らせました。
生徒達は、消費者として社会生活の中で起こりうるリスクを理解し、どのようにつきあっていくか、どのようにリスクを回避すれば良いかを考えることを通じて、直接金融と間接金融の違いや金融の役割を再確認できたようです。
3.プログラム
- 8:30~8:35
- 開会挨拶 金融広報中央委員会 会長 小林信介
- 8:35~9:25
- 講演「生きるヒントと未来への希望~明るい未来をみんなで創る」
講師:藤沢久美氏 - 9:25~9:30
- 開催校挨拶 玉川学園高学年 教育部長 髙島建造
- 9:45~10:35
- 公開授業
(1)「リスクとは何か、今後50年間の人生を考える」(9年生<中学3年生相当>・社会科)
(2)「金融に関わる身の回りのリスクを考える」(9年生<中学3年生相当>・社会科)