金融教育公開授業
平成22年度金融教育公開授業(全国リレー講座)
長崎県金融広報委員会
長崎大学教育学部附属中学校
金融広報中央委員会
長崎の実施報告
「金融教育公開授業 in 長崎(長崎大学教育学部附属中学校)」(9月24日、3日開催)
長崎大学教育学部附属中学校は、長崎師範学校附属国民学校の歴史を引継ぎ、昭和22年に開校した伝統ある中学校です。「光と力と望みと」を校訓に、生徒一人ひとりを大切に、尊重・自主・創造の調和の取れた教育を進め、豊かな人間性を備えた逞しい生徒の育成に努めています。
同校は長崎県金融広報委員会より、金融教育研究校(平成21、22年度)の委嘱を受け、金融教育に熱心に取組んでいます。
9月24日(金)に公開授業を実施しました。なお、これに先立つ9月3日(金)に講演会を開催しました。公開授業は、2、3年生の総合的な学習の時間の『学問探究』の講座で授業を行いました。講演会は、2、3年生全員を対象に、いちのせかつみ氏にご講演いただきました。
公開授業と講演会には、新聞社、テレビ局が取材に訪れ、その模様が金融教育研究校の活動の一つとして紹介されました。
▼ 参加者内訳:
<講演会>生徒345名、開催校教員16名、開催校保護者6名、地域の方々3名、合計370名
1.公開授業(9月24日)
「金利って何?」と題して、テレビCM等で日頃目にする機会の多い「金利」について、実例を交えながら授業が行われました。
まず、金利とは何かについて、金融機関等による広告の実例を示しながら説明し、生徒たちは、“日歩や年利”あるいは“単利や複利”といった金利の種類とそれぞれの意味を学びました。
続いて、お金を借りた場合の具体的なケースを想定して、単利と複利では数年後の残高にどれくらいの違いが生じるかを計算してみました。また、返済額を一定とした場合に、単利と複利では返済期間にどれくらいの違いが生じるかについても計算しました。
100万円を年利10%で借りて返済をゼロと仮定した場合、10年後の残高は単利では200万円ですが、複利では約260万円となりました。その後、複利で20%と50%のケースも計算したところ、残高はそれぞれ約620万円、約5,800万円に上りました。こうした結果に、生徒たちからはどよめきの声が上がりました。
また、消費者金融の利用を念頭にケーススタディも実施しました。年利18%で10万円借りた場合、1万円ずつ返済すると返済期間は11か月ですが、50万円借りると、2万円ずつ返済しても返済期間は32か月かかってしまう、ということも、生徒たちは実際の計算を通じて学びました。
こうした計算をした後、生徒たちからは「お金を借りる時は、金利の負担や返済期間を十分に考えなければならないことがよく分かった」との感想が聞かれました。
2.講演会(9月3日)
いちのせかつみ氏をお招きし「世界一おもろい経済学」と題する講演が行われました。
講演の冒頭、いちのせ氏から「欲しいものは何?」との質問が開催校の教員に発せられ、それぞれの欲しいものとそれに対する熱い思いが語られました。「欲しいもの」の中には「若さ」といったお金では買えないものもありましたが、「車」や「家」などの事例をもとに、いちのせ氏は、夢を実現するためのお金の役割をわかりやすく説明されました。また、お金の流れが経済に強く影響を与えている点についても解説されました。
次に、小売業におけるさまざまな工夫についての紹介がありました。日頃、生徒たちが何気なく利用しているコンビニの店舗内の商品陳列に人間の行動特性(左回り)が応用されていることを、店舗の入り口の位置や商品の配置を実例に具体的に説明されました。また、スーパーのチラシには、ある商品の値段が「0円」と大きく表示されながら、小さな文字で「ただし他の商品とあわせ一定金額以上購入の方に限る」との注記がなされているなど、より多くのお客を呼び込み、より多くの品物を買ってもらうよう仕向ける工夫がなされている点を説明されました。こうした事例の紹介を通じて、知恵と工夫を凝らすことの重要性や安易に表面的な表現に踊らされないことの重要性を強調されました。
続いて携帯電話についての話がありました。携帯では、例えば「着メロ」のように音楽をダウンロードすることもできるが、これにはお金がかかることに生徒の注意を向けた後、いちのせ氏は、携帯電話の利用料について説明され、中学から大学卒業までの10年間の利用料金の推計値も示しながら、「料金と用途をよく考えた賢い使い方」を推奨されました。
この後、正規雇用者とフリーターの生涯賃金の大きな格差についての説明がありました。また、プロで活躍している選手の契約金やCM出演料についての説明もありました。いちのせ氏は、職業に対するさまざまな考え方を肯定されつつも、その選択にあたっては「長い視点で考えること」も重要である旨、生徒たちに語りかけました。
結びとして、おとぎ話の「桃太郎」が取り上げられました。この話に出てくる動物たちには特徴がありますが、「犬」は「コミュニケーション能力」を、「猿」は「知識」を、「雉」は「行動力」を、それぞれ表象しているとの解説がありました。そして、桃太郎の鬼退治でこれらの「動物」が果たした役割のように、これから生徒たちが世の中の荒波に向かっていく際にも、「コミュニケーション能力」、「知識」、「行動力」は極めて重要な役割を担うものであり、これらこそがまさに“生きる力”だと力説されました。最後に「あなたの人生の主役はあなた自身だ。それぞれが主役のドラマを自分自身で作って欲しい。そのためにも、10年後の自分をイメージして、今何をやるべきかを真剣に考えて行動して欲しい」との熱いメッセージにより講演は締め括られました。
生徒たちには、講師とのやり取りや愉快な話振りが好評で、「笑っているうちに世の中のさまざまな仕組みや工夫がいつの間にか理解できた」とか「お金は貯めるだけでなく、どんな使い方をするかも重要だと気付いた」との声が聞かれました。また、PTAの方々からは「本日のお話はとても示唆に富んでおり、今後の子供たちの人生の岐路となる内容だった」との声も聞かれました。
3.プログラム
(9月24日)- 14:00~14:50
- 公開授業「金利って何?」
授業者:長崎大学教育学部附属中学校教諭 山本、秋山 - 14:50~14:55
- 生徒代表挨拶
- 14:10~14:15
- 開会挨拶 長崎大学教育学部附属中学校教頭 中島
- 14:15~15:40
- 講演「世界一おもろい経済学」
講師:いちのせかつみ氏 - 15:40~15:45
- 生徒代表 お礼のことば
- 15:45~15:50
- 閉会挨拶 長崎県金融広報委員会事務局長 南井