金融教育公開授業
2011年度 金融教育公開授業(全国リレー講座)
東京都金融広報委員会
世田谷区立松原小学校
金融広報中央委員会
東京/世田谷の実施報告
「金融教育公開授業 in 東京(世田谷)(松原小学校)」(9月22日開催)
世田谷区立松原小学校は、東京都金融広報委員会から金銭教育研究校(平成22・23年度)の委嘱を受けて金銭教育に取組んできました。「自ら考え、社会とかかわって生きる子どもの育成」を研究主題として金銭教育の視点を取り入れた授業や教育課程の改善を図ってきました。そして、その集大成として9月22日(木)に金融教育公開授業を開催しました。
▼ 参加者内訳:
1.公開授業
(1) 「お手伝い大作戦~お家の人となかよし~」(1年1組・生活科)
この単元では、家庭生活を振り返り、家の仕事に挑戦する活動を通して、自分の成長や家族の支えなどに気付き、自分の役割を進んで果たそうとすることを学びます。公開授業では、児童たちが夏休み期間で実践した“お手伝い大作戦”をグループ形式で発表し合いました。前半は、児童たちがお手伝いの内容やそのお手伝いを行った理由などについて発表し、その後、ゲストティーチャーとして登場した児童の家族にお手伝いをしてもらった時の感想や、お手伝いが上手にできる秘訣を話してもらいました。
(2) 「みんなでつくろうフェスティバル~1年生となかよし~」(2年2組・生活科)
この単元では、これまで体験した行事や見聞きした行事を参考に、自分たちで行事の企画・準備を工夫して行い、1年生を招待して、みんなでフェスティバルを楽しみます。公開授業では、グループ毎に、フェスティバルでどんな遊びをするか、どんなお店にするか、何を準備しなければならないか、について話し合い発表しました。その中で、児童たちは、1年生が喜ぶ遊びやお店を考えることを通じて相手の立場を考える大切さや、店主としての言葉づかいやマナーを身につけなければならないことに気付きました。
(3) 「買い物探偵団~さぐれ!スーパーマーケットのひみつ~」(3年3組・社会科)
この単元では、スーパーマーケットで販売の仕事をしている人々の様子を調べ、消費者のニーズに応えられるように工夫していることや努力していることを考えます。また、販売の仕事が、人や物によって他の地域と結びついていることを理解します。公開授業では、写真や資料から、スーパーマーケットが消費者の買いたいと思っている商品を把握して仕入れたり、より買いやすい値段となるようにしたり、気持ち良く買い物ができるための店舗づくりをしていることについて調べました。販売に携わる人の工夫や思いを知ることによって、お金の大切さや物を大切にすることを学びました。
(4) 「どうする、ごみ問題!」(4年1組・社会科)
この単元では、ごみの収集・処理について調べ、世田谷区では地域住民の協力を得ながら計画的・組織的にごみ処理をしていることに気付き、それらの取り組みは人々の健康な生活や良好な生活環境の維持に役立っていることを考えます。また、ごみを減らすためには、一人一人のごみを減らす努力が大切であることを学びます。公開授業では、「ごみを減らすために、あなたならどうする」をテーマとして、ごみの有料化・無料化について話し合いました。児童たちは、話し合いの中で、ごみ処理だけでも世田谷区では1人あたり年間1万円を超えるお金がかかることを知り、ごみ処理を自分の問題として捉えて、「もったいない」「物を大切に使う」気持ちを培いました。
(5) 「お金ってなあに?~身近なお小遣いからお金について考える~」(4年2組・総合的な学習の時間)
公開授業では、ゲストティーチャーとして金融広報アドバイザーの吉田淳子氏を招きました。授業の前半では、日頃のおこづかいのもらい方や使い方などについて児童たちで話し合い、発表しました。後半は、吉田氏が、おこづかいを使うときは、1)「欲しいもの」と「必要なもの」に分けること、2)おこづかいは計画的につかうこと、3)足りない時は貯めてから使うこと、4)おこづかい帳をつけること、5)お金の「かしかり」はダメなこと、6)困ったときは、お家の人にすぐに相談すること、について話をしました。
(6) 「これからの日本の車づくり~環境にやさしい車をふやそう~」(5年1組・社会科)
この単元では、自動車生産に従事している人々が、消費者の多様なニーズに応え、安全や環境に配慮しながら様々な努力や工夫をしていることを調べます。また、自動車生産が自分たちの生活を支える重要な役割を果たしていることについても考えます。公開授業では、これからの自動車工業について各自で調べたことを話し合ったところ、ハイブリットカーの生産が増えていること、それが環境に配慮した取り組みであること、エコブームは消費者ニーズにも合致していることがわかりました。これからの自動車工業は、エネルギー問題に配慮した自動車の開発や生産をしていくことを大切にするということを学びました。
(7) 「マイ・ランチョンマットを作ろう」(5年4組・家庭科)
この単元では、材料の布に関心を持ち、購入するために必要な情報を集め、活用することにより、自分にあった物の選び方や買い方を学びます。また、実際にミシンの使い方を学び、製作することを体験します。公開授業では、「手芸店は教材屋や100円ショップに比べて、ランチョンマットに適する綿素材の布の種類が多い」とか、「100円ショップは、価格は安いけど綿素材の布の種類が少ない」など、購入しようとする布の品質や価格など予め調べたことを発表し合い、目的に合った布の選び方や賢い買い方を学びました。
(8) 「新しい時代の幕開け」(6年3組・社会科)
この単元では、黒船の来航、明治維新、文明開化等について、地図・地球儀、年表、図表、人物のエピソードなどの資料を活用して調べ、廃藩置県や四民平等などの諸改革を行い、欧米の文化を取り入れつつ近代化を進めたことを学びます。公開授業では、日本銀行職員をゲストティーチャーに招き、明治政府が目指していた国づくりにかかる費用の調達手段や銀行制度と新しい貨幣制度の確立について説明を受けました。
2.研究実践報告
公開授業の後、研究主題である「自ら考え、社会とかかわって生きる子どもの育成~金銭・金融教育の視点を生かして~」について、2年間の研究実践報告を行いました。
研究実践報告は、(1)研究概要、(2)各学年の実践報告、(3)成果と課題について行われ、(1)研究概要では、社会科および生活科の学習を充実させることが、児童の「自己決定力」や「見通す力」の向上につながり、若手教員を中心に両科目での授業能力の向上にも繋がったと報告がありました。また、(2)各学年の実践報告の後、(3)成果と課題では、児童たちにとって、社会科の授業で、自ら「その地域に自分も行ってみたい」、「自分もその地域にかかわってみたい」など社会への参画意識に繋がる変化が窺われたことや、生活科では、「交流」をテーマにしたことから、児童たち自身が異学年交流に意欲的になったと発表がありました。一方、各教員においても、校内研究を通して、社会科および生活科の授業での重点の置き方、資料や授業材料の工夫、それらに合った指導方法を学ぶことができたことについての報告がありました。
3.講演会
研究実践報告の後、澤井陽介氏から、「金銭・金融教育の視点を取り入れた新しい授業づくり」と題する講演が教育関係者および保護者を対象に行われました。
澤井氏は、講演で、児童たちが学ぶ教育には、金銭・金融教育だけではなく様々な○○教育があるが、共通して言えることは、1)つながりや仕組みを理解できるようにする(関連性の理解)、2)大切さを感じとることができるようにする(価値の受け止め)、3)関心を高め、判断・行動できるようにする(判断力、態度化)の3点がポイントであると話されました。そうした中で、松原小学校では、1)授業の中で地域生活や家庭生活における生産や販売等の活動を取り入れ、2)社会や自然との関わりを知り、社会で生きていくための知識や判断の必要性を認識することや、働くことの大切さを学ばせるように取り組んでいたと紹介しました。また、3)それらを通して、人間の働きや自分たちの生活を支えている事象の発展に関心を持つことや児童自らが工夫・努力して判断し、適切な行動ができるようにすることが重要と説明されました。
4.プログラム
- 13:40~14:25
- 公開授業
(1)「お手伝い大作戦~お家の人となかよし~」(1年1組・生活科)
授業者:世田谷区立松原小学校主任教諭 加藤実香
(2)「みんなでつくろうフェスティバル~1年生となかよし~」(2年2組・生活科)
授業者:世田谷区立松原小学校主任教諭 兒玉栄里子
(3)「買い物探偵団~さぐれ!スーパーマーケットのひみつ~」(3年3組・社会科)
授業者:世田谷区立松原小学校教諭 市川麻衣
(4)「どうする、ごみ問題!」(4年1組・社会科)
授業者:世田谷区立松原小学校主任教諭 浅利真理子
(5)「お金ってなあに?~身近なお小遣いからお金について考える~」(4年2組・学級活動)
講師:金融広報アドバイザー 吉田淳子
(6)「これからの日本の車づくり~環境にやさしい車をふやそう~」(5年1組・社会科)
授業者:世田谷区立松原小学校主任教諭 堀切祐子
(7)「マイ・ランチョンマットを作ろう」(5年4組・家庭科)
授業者:世田谷区立松原小学校教諭 城美沙
(8)「新しい時代の幕開け」(6年3組・社会科)
授業者:世田谷区立松原小学校主任教諭 須藤央 - 14:45~15:30
- 開会挨拶
東京都金融広報委員会事務局長 野崎学
世田谷区教育委員会指導主事 栗林大介
研究実践報告「自ら考え、社会とかかわって生きる子どもの育成~金銭・金融教育の視点を生かして~」 - 15:30~16:30
- 講演「金銭・金融教育の視点を取り入れた新しい授業づくり」
講師:澤井陽介氏 - 16:30~16:35
- 閉会挨拶 世田谷区立松原小学校校長 小林巧