高校生小論文コンクール
「金融と経済の明日」第1回高校生小論文コンクール(平成15年)
この夏、金融と経済の明日について考えてみませんか?
「私の将来の夢の実現…そのための生活プランとお金について」
特選
北海道 旭川明成高等学校 3年 後藤 有紗
現在、高校生でアルバイトをしている人は非常に多い。アルバイトを始める理由としては人によって様々なものが挙げられる。それはいま遊ぶためであったり、将来のためであったり、家計を助けるためという理由もあるだろう。今現在、私自身もアルバイトをしているが、理由を挙げるなら全部が当てはまるといえる。
自分で使うお金は自分で稼ぎたい。そう思い、私がアルバイトを始めたのは高校2年の夏頃であった。毎月親がくれた小遣いをもう貰わないことにした。ただ、やはり生活面での出費や学校での出費は親から出してもらっているのが現状である。
つまり、私が考えていた“自分で遣うお金”というのは、趣味や遊びという狭い範囲内でのお金でしかないのだ。私が生活している上で、金銭面の9割は親が養ってくれている。それは、高校生という分際の今はまだどうしようもないのかもしれない。
しかし、私は高校卒業後、本当の意味での自立を目指して、就職しようと考えている。一時期進学も考えていたが、もうこれ以上学費の面で親に負担はかけられないと思った結果である。そこで、半年前からアルバイトで得たお金の貯金を試み、自立の際の資金に充てたいと考えている。
ただ、自立、自立といっても、一体どうなれば本当の自立なのか、正直なところ今の私にはわからないことも多い。しかし、一つだけ言えることは、今私が少しずつ実行に移している経済的な自立を本物のものとするためには、それを支える精神的な自立なくして、その達成は成し得ないのではないかということである。
たとえば、私が親から貰っていた小遣いを今まで無駄に使い込んでいたのは、精神的な自立の必要性に気づいていなかったからだ。お金そのもののありがたみを身に染みて感じてなどいなかった自分を情けなく思い、同時に親に対する申し訳なさも今は感じている。また、アルバイトもせずに親にお金をせびっては遊びほうけている友人を見ると腹が立つ。
やはり、経済的自立を目指すためには、親からの精神的な自立をしなければならない。
こう考えると、社会に出て、給料を貰い、その給料で生活するというのは本当に大変なことだと思う。それに加えて結婚し、子供を育てて・・・
私は将来、どのような経済状況の中で生活を送ることになるのだろうか。私の将来の生活プランを描くにあたり、何を重視していけばよいのだろう。
最近こんな言葉を耳にした。「一に教育、二に教育」。経済復興の策として、フランスが掲げた国の目標である。
教育と経済- - -今までこの二つを結びつけて考えたことはなかった。確かにどの分野でもそうであるが、その基本は人間である。そして、その人間を育てるのが教育という分野だ。経済でも政治でもそれらを作り出したのは人間であって、その人間がまたその様々な分野の担い手となっていくのである。
さらに、そうした分野の一つ一つを良くするのも悪くするのも人間である。さらにまた、今現在世界的経済不況といわれており、その状況を打開するのも人間以外にないのである。
フランスが経済回復の為に力を入れたのは、経済の分野でもなく、政治の分野でもなかった。遠回りに感じるかもしれないが、表面的に経済的・政治的に策をめぐらすよりも、その根本をみつめ直そうとして教育という分野に注目したのだと思う。つまりフランスは、基本に返り、それをみつめ直すことでこの不況を乗り切ろうと考えたのかもしれない。
日本においても、小泉首相が『米百俵』の故事を引用していたことがあった。
戊辰戦争に敗れた長岡藩の窮状に、三根山藩が見舞いとして米百俵を送った。長岡藩の小林虎三郎は、「当座をしのぐために使ったのでは数日でなくなってしまう」と米の分配を要求する人々を説得し、米を売った金を町民や農民の子も通える国漢学校の建設に充てたという。まさにフランスの国策に酷似している話である。
やはり、明日を良くしようとするのに教育というものは欠かせはしないのだ。しかも日本の場合、それが数百年前にすでに施行されていたのだ。これぞ今の日本に求められる考え方である。
私自身の話に戻るが、自分の将来の生活プランを考える場合に、どうしてもはずして考えられないのは、やはり自分を取り巻く経済状況である。当然それは良い状態にあることに越したことはない。そしてそれを良い状態へとするためには、教育というものが最重要視される。
つまり、良い生活プランを考え、良い将来にするためには、一生懸命勉強しなければならないということなのだ。
そして、私の将来を決める就職活動が始まった。今掲げた考えを踏まえ、私が選んだのは銀行の仕事である。直接経済問題に直面できるというのは、今の私にとっては利点だと思う。現在、こんな経済状況の中にある日本だからこそ経済に携わる仕事を是非してみたいのだ。
まだ未熟そのものの経済に対する知識と、これからの日本経済のあり方を勉強していきたい私には、まさに打って付けの環境ではないか。私一人に日本を変える力は到底無くとも、自分の将来の為にも地に足をつけ学んでみたいのだ。学ぶことこそ、私の目指す精神的自立に繋がっていくのである。
経済と直に向き合う仕事に就くことで、私の将来はより良く変わっていけると考えている。理想論ばかり描かず現実問題として正面からとらえ、ひとつずつ学んでいくことから精神的な自立が成せるのだと思うからこそ、銀行という職場で働きたいという意思が生まれたのである。
私の生活プランは、経済問題を考えるだけでなく、経験することから始まるのだ。その準備運動として、できる限りの教育を、残り少ない高校生活の中でしっかりと受けていこうではないか。